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田舎の食堂 [2008年05月31日(土)]
福山雅治のオールナイトニッポン!魂ラジをききながらの更新です
・・・ってうきゃー!地震情報のせいで福山さんの声が聞こえない


GW、十和田湖の帰り県南にある田舎町 田子町の小さな食堂でお昼にしました。
以前、おじいちゃんが食べに行ってご飯が偉く美味しかったそうな
親子3人で営んでいるそのお店は デザインは普遍的だし接客レベルは中の下くらい
私達が到着した時点ではそんなに混んではいなかった
しかも、注文してから飯が来るまで50分くらいかかった(本当
他のお客様もラーメン一つで大分待たされていた
しかし、家族で来て雑談をして待つ客も、一人で新聞を見る客も、三重から来たと思われるチョイ悪で昼間から酒を要求してくる集団も誰一人として文句は言わなかった
別に景色がいいわけでもなければ、面白いテレビ番組が放送されていたわけでもない
帰省2日目であり最終日である私にはとても不思議な状況だった

私達に飯がやってくるころには満員御礼で、席がなくあきらめて帰った人も2,3人出るほどだった
そんな中食べたのはこちら天ぷら定食

衣がふわっとしていてとても美味しかった。
海老もちゃんと実があったしw何よりたらっぽが美味しかった。
あ、たらっぽて何?という質問は却下で(オイ)共通語で何というか知らないわ
おじいちゃんが言っていたとおり、ご飯も美味しかった
同じ郡のお米とは思えない美味しさだったw

天汁がしょっぱいことを除けばとても素晴らしい定食だわね
食器もちゃんと考えあったし、漬物も食べやすかった
待ち時間を忘れてしまうくらいの味だった。

っていうか、どがつく田舎の場合 待ち時間なんてどうでもいいのかも
美味しいご飯が食べられればそれでいい みたいな。
むしろ、そんな極端に美味しくなくても許されるかもしれない。
なんかせっかちでイライラしている人が馬鹿馬鹿しく見えるくらい のんびりしているのが当たり前 現代の日本には合わないと思う。それでも 田舎のほうが好きだなぁ


老後は田舎でゆっくりしたい という気持ちがこの歳でわかります(笑


今日は仙台店最後(?)の出勤でした。同時に今朝同期がまた1人辞めました。
寂しい1日でしたね〜。入社から約2ヶ月たったというのに慣れたのは通勤路だけです。
寝不足の生活リズムも、明らかに栄養が偏っている食生活も、肝心のお仕事も全然慣れていません。
むしろ慣れたくないのが本音ですが そんなこと言えるわけありませんしね

そんな中 仙台店を追い出された気分でいざ名古屋へ出張です。
出張という名の実務研修=修行です。名古屋はとても忙しく練習時間なんてないし、先輩にきく時間すらないそうです。仙台でさえ動けない私がんなとこいって動けるわけないだろ
私の教育に困り果てて 盥回しにされている気がしてしまうのはなぜでしょうね〜
田舎をでて仙台の水道水で腹を壊すこと3ヶ月・・・や、水道水はもちろんだしコープのミネラル入り水ですら慣れるのにけっこうかかりました。名古屋の水が怖くて仕方ありません。
ロンドンの水は多少平気だったのですが さて―


昨晩お惣菜で野菜かきあげを購入しました。ご飯の上にかきあげをのせ天汁をかけるだけでかきあげ丼になります。簡単すぎます。そして美味しいです。お弁当にもピッタリです。
天ぷらっていいなぁ
23:55 | この記事のURL
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風唄 『Strong&Strange8』 [2008年05月30日(金)]
風唄 本編の前のおまけストーリー『Strong&Strange』です。
下のタイトルをクリックして読みにいってくださいね

『Strong&Strange1』
『Strong&Strange2』
『Strong&Strange3』
『Strong&Strange4』
『Strong&Strange5』
『Strong&Strange6』
『Strong&Strange7』


↓『Strong&Strange』エピローグ


戦いの後の休息は、柔らかな風が肌に心地よい。

「…で。さっきのあれ、どうしたんだ?」
「さっきのって?あれとかこれとかの言い始めって、老化ボケの始まりなんだってよ〜。ノンちゃんヤバくない!?」
「…………」

 思考回路はどうなっているのだろうか。

「あれ?図星ぃ〜?」
「どうしようもない事を思い付くのにかけては、君は素晴らしい才能をもっているよな…」
「ありがと!」
「……………どういたしまして」
「んで?なんだっけ?」

 そのくせ瞳は真っ直ぐだ。ジノは時々、その光がうらやましいとすら、思う。

「あぁ、あの制服だ。給仕の独特な衣装、どこで手に入れたんだ?」
「メイドさんね!可愛かったでしょ!!」

 笑顔は最上級だった。



「むきむきした」

 ジノのため息は、これからまた増えそうだった。
00:28 | この記事のURL
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風唄 『Strong&Strange7』 [2008年05月30日(金)]
「いーっていーって、お礼はいらないよん!ノンちゃんじゃ巻けない位置だし、困ったときはお互い様っしょ〜」

 まぁ、いいか。
 ハイテンションで手を振るライチは、全く以て全快のようだった。格好が悪くても、自分で片手のみで巻くよりは幾らかマシなのだろうと、思うようにした。

 手当ての為に膝立ちをしていたライチの太ももに目が行った。そこには、痛々しい赤い筋が一本、ぱっくりと口をあけている。
 肌を掠めた銃弾は、切り傷のようにライチの皮膚を切り裂いた。それについての反応はないが、却って反応がないことが問題なような気がしてジノは言った。

「君こそ大丈夫なのか?」

 ジノはその傷を指で示した。

「なぁに?」

 ライチもつられてそこを見た。

「あっきゃーー!!痛い!痛いよう!」

 気づいてなかったのか…?
 ライチは恐ろしく勘が鋭い分、どこかおかしなところで恐ろしく鈍い所がある。平均すると丁度良いのかもしれない。

「それの手当てが済んだら撤収だ。そろそろ家の者がやってくるかもしれない」

 新たに出現させた包帯に悪戦苦闘しつつ、ライチが答えた。

「このおじさんどする?」
「放っておけ」

 怒りにまかせ、一度懲らしめて詫びでもいれさせようかと思ったが、敵が戦闘不能となった今、何だかどうでもよくなってしまった。

 相棒が包帯を絡ませているのを見かねたジノが右手を差し出し、負傷した左手を庇って添える程度に使い、器用にライチに白い包帯を巻いた。その手際のよさに、ライチは己に巻かれるそれを凝視している。

「おぉ…」
「行くぞ、立てるか?」
「よゆーよゆー!!さんきゅーノンちゃん!」

 いつもの様に元気よく立ち上がると、ライチは足を揺らした。

「おっけい、はやく行こ。シオもきっと待ちくたびれてるよ」

 ジノは小さく息を吐いた。長い一日だったように思う。楽な任務の割には高額提示の依頼は罠で、罠ということは嘘だった訳で当然ながら一文にもならない。それを思うと更に疲れが重くのしかかるような気がした。甘い話には必ず裏がある。今度からは気をつけよう、そう思った。

 そこに哀れな人間が倒れている。カラサワとの対峙は不快だった。他人を拒絶したようなその口振りは、聞いているだけで苛立った。
 しかし深淵は確かに口を開けて待ってはいても、覗き込んだ拍子に自ら落ちていかない限りは飲み込まれることもない。ライチは『おじさん』と言って止まないが、カラサワもまだ30そこそこのまだ世間からは若いと呼ばれる世代である。闇の淵から引っ張り戻してくれる、『誰か』と出会う可能性だってあるだろう。ジノがそうであったように。

 先を急かすライチの言葉に小さく頷くと傍らの己の武器を拾った。空中回転している斧の、そのまま即座に取り付けた部分を今度は手で取り外した。これは窮地に勢い良く飛び出してきた。ライチはジノの装飾品をはじめ、身に付いている全ての金具や金属、さらには彼女の槍にも印踏みを施しているが、このアックス…これだけにはしていない。できていない。そしてジノは、いざというときにしかこの槍をポールアックスとして使わない。だから普段はライチの無限に収めて身軽にいる訳だが、ライチはこれに触れることができない。だから自分が投げ入れるしかないのだが、前回こんなにも乱暴に入れたは自分なのか?凄い威力だ。こんなもの受け止められるのは己くらいし
か居ないだろう。

 ジノはライチの脇に立ち上がった。脇に立つ彼女よりも遥かに高い、自分の身長。ジノは大きなアックスを器用に弄びながらも言った。

「ありがとな」
「ぇあ?」

 聞こえてなかったのか、意味が解らなかったのか、それともそのような振りをしているのか、ジノは未だに少女の瞳の奥までを読むことができない。
 それでもいいと思ってる。何故なら、自分はライチではないのだから。

「撤収だ」

 侵入より脱出の方が遥かに楽である。後先を考えなくて良い。ジノは窓枠に足を引っ掛けた。今なら闇が自分達を隠してくれる。
 窓の先に守衛はいないだろうか、いざ脱出を前に辺りを見回している時にまた予測不可能なライチの言葉が飛んだ。

「待った!!」

 今度は何だ?先を促したのは他でもない、ライチだというのに。ジノが難色を示しつつ振り返る。

「お茶っ葉…どこだろ」

 満面の笑みを投げかける、彼女の真意は一生かかっても解りそうにない。ジノは本日何度目かわからない、ため息を吐いた。




 弱さを知って、強さの本当の意味を知った。
 守られることをされて、守ることができるようになった。
 
 戦争があるから平和は尊ばれ、暗闇があるから星の輝きは愛される。
 その事に気づけたのは、ずっと後になってからだった。

 強さに意味などない。しかし強くありたい理由はある。それは自分を、そして闇に浮かぶ光を守ることができる。弱さから眼を背け続けた過去、闇に沈む道をただ歩き続けた自分にも、意味があるのだと気付けて良かったと思う。

 それは、自分一人で辿り着いた答え?
 いいや、違う。



 調子っぱずれな鼻歌を口ずさむ隣人を見て、ジノは一人、小さく微笑んだ。
00:27 | この記事のURL
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風唄 『Strong&Strange6』 [2008年05月30日(金)]
「な…っ」

 スカートが捲れ上がるのも気にせず足を使ったせいだ、相棒は裾をぱたぱたと払い直している。

「…それはそれで正攻法であると、あたしは思うな」
「そ?どっちでもいいよ。これにあうー?」

 紺色のワンピースに白のエプロン。足元には脱ぎ捨てた帽子が転がっている。くるりと一回転したライチがポーズを決めた。

「メイド服、モエモエじゃな〜い?」
「そうだな、ライチ以上にその制服を着こなせる人間はいないだろう」
「あきゃ!褒めてもなにもでないぞ〜う♪」

 どの時点で、どうやって入れ替わったのか、元居たメイドをどうしたのか、様々な謎はあったが二度目メイドが入ってきた時、その振る舞いの乱雑さが目に付いた。実際見てはいなかったが、ドアを閉める音がそうだった。もっとも、気が急いていたらしいカラサワの眼中にはなかったようだが。
 カラサワは観念したようにため息を吐いた。その目は完全に落ち着きを取り戻していた。

「大したものだよ…。私は君達を低く評価し過ぎていたようだ」
「おじさん、気づくの遅いんだよ。それでよくしゃっちょなんかやってられるねぇ。ボク達の真の強さは、ここまでに止まらないよ。それは満月の美しい夜、」
「あたし達の仕事の邪魔をした代償は払ってもらう」
「ボクが喋ってたんだ!」
「ライチ、黙ってろ」
「いやだ!茶っぱよこせ!!」
「どうでもいいがそれでで怒っても様にならないぞ…」

 明らかに不服そうなライチが制服を脱ぎ始めた。いつもの衣装を下に着込んでいた。

 ははは、と至極楽しそうな声を上げたのはカラサワだった。あの時ドン引いてた彼とは対照的な反応に、JRの二人は一度動きを停止した。

「君達コンビは実に、いい。代償とやらはお茶の葉だけで済むのかい?」
「まさか」

 その問いにすぐに反応したのはジノだった。自分達はまだ馬鹿にされている。相手に勝算はないというのに。

「では何が望みだ?金なら払おう」
「うわ、その台詞、でたー」

 完全に余裕を取り戻したカラサワは、窓の外を向いて、もう太陽が僅かしか見えぬ水平線を見た。こちらに背を向け、その様子から殺される心配など皆目してないようである。
 靴を履き替えたライチが腰を低く構え、円を描く体勢に入った。

「ではまずお詫びとして───」

 カラサワが足を鳴らした。

「これを受け取って貰うとしよう」

 ジノは、カラサワの行動の意味が理解できず、危険と判断した。槍を握り戦闘の体勢に入った。後ろの少女もそれは同じはず。だがそれは盛大な叫び声で裏切られた。

「うわぁうわぁうわぁなんだコレ!?」

 振り向くとそこには先ほどと変わらぬ姿勢を取り続けるライチがいた。
 訝しんだジノは、体勢を変えずに横目でライチの様子を確認する。何をひとりで遊んでいるのだろうか。

「動かな…ぇえマジ〜!?体が動かないんだよノンちゃぁぁぁん!」
「口はとてもよく動いているようだが」
「信じてよぅ!」

 目だけで彼女を見ていたジノは、カラサワの動きに注意を払いつつ、顔ごとそちらを向いた。
 ライチの体は、口と、目とほんの指先が僅かに揺れている程度で動かない。
 カラサワが笑い始めた。今度は卑しく、いぎたない笑い声だった。
 ジノがまた向き直り、低く唸った。

「ライチに何をした」

 ジノの問いかけには答えず、カラサワは側にあった引き出しを開けた。

「わ、わ、わぁ!なんだなんだ!!」

 ライチの体が己の意志に反し、直立の姿勢を取らされ、そのまま移動をはじめた。ジノの立つ場所からは手が届かず止めることができない。

「心の醜い人間にしか操れぬ、鎖さ」

 ライチがカラサワの側に移動した。引き出しから出した物は、リボルバー回転式の銃だった。ライチの顔がみるみる青ざめる。

「ね、ねぇカラサワのおじさん!もちろんそれは金属だよねぇ?金属以外でできた銃なんてないよねぇ!?それでボクを撃つの?やめた方がいいんじゃないかなぁぁぁ!!」
「動くな」

 カラサワの一言に、ジノの髪が揺れた。跳躍の体勢を取ろうとした体が、突然の制止に震えたのだった。銃を持った腕がライチの頬に真っ直ぐ伸びている。

「ぅ…く、くぇ……ちかっ…」
「武器を捨てろ」

 ジノはカラサワの言葉に従い、すぐさま前方に槍を放った。

「そいつから銃を離せ。撃ったらただじゃ置かない」
「なるほど。それはどのように?」

 カラサワは発砲した。即座に照準は変更され、銃弾は太ももを掠め、細い切り傷のようなものを作った。
ひっ…という小さく息を吸うだけの悲鳴が聞こえた後、ライチはがっくりと頭を垂れて、微動だにしなくなった。当然、弾丸も金属でできている。彼女はそれらに触れることができない。

「おい、この娘、動かなくなったぞ。一体どうしたのだろうな」
「……貴様」

 銃口は未だにライチに突きつけられている。カラサワのその笑みには狂気を感じた。
 ジノが一歩踏み出す。


「私は動くなと言った筈だが。お嬢さん?」

 奥歯を噛み締めるジノの眼は、怒りの炎で冷たく燃えたぎっていた。

「相棒は人質。お前は窮地。さあ、どうしてくれようか」

 先程まで余裕でいられた要因は、ライチを縛めている目に見えない鎖だった。それを自分は見抜けなかった不甲斐なさに、ジノの怒りは己にまで及んだ。

「元々の目的は、お前達を殺すことだったが、最強と名高い情報屋がこうも簡単に捕まるとは…ただ殺すにはあまりにもつまらぬだろう?」

 カラサワがジノに銃口を向けた。この狭い部屋では、避けられない。それどころか、下手に動けばその銃口は再びライチに戻り、トリガーを引き絞られるだろう。ジノは動かなかった。

「…──」
「ほう。声も出さずに痛みに耐えるか」

 肩を狙われた。本当になぶり殺しをするつもりらしい。

 カラサワは、構えた銃はそのままに引き出しから今度はナイフを取り出し、その光沢を確かめた。刃渡りだけで20センチは越えている。

「心配しないでくれ。こう見えて、過去戦いの前線に居たことがあったんだ。ナイフ投げは得意な方だったな」
「……そうか」

 成程、妙に隙のない動きをすると思った。はっきりとした理由もわからずに、ライチに警鐘を鳴らしはしたが、こうなっては無意味だったように思う。

「ナイフで死ぬのが一番美しいのだよ。銃のような煩わしい音もせず、急所さえ外さなければ声を出すこともなく息絶える。
ああ、お前は先程も声をあげなかったな。さあ、言い残した事はないか?今なら聞いてやろう」

 夢中になったように一気にまくし立てるカラサワを見る眼差しは、燃えたぎる怒りの炎を静かに湛えていた。

「深淵を見ようとすればするほど、深淵はお前を飲みこもうと口を広げて待っている」
「……ご忠告、感謝しよう」
「貴様はあたしの相棒を傷付けた」
「あとは天で恨め」


 カラサワがジノにナイフを投擲した。どうにかかわさなければ──…それは動くことを許されないジノの左の胸に、深々と突き刺さるだろう。


 だがしかし、ナイフの軌跡は彼の理想通りにはならなかった。
 カラサワの目の前を巨大な何かが横切り、研ぎ澄まされたナイフはそれに阻まれたのである。

 どこからか飛び出してきた凄まじい運動エネルギーを持って回転しているそれは、低めの金属音を響かせナイフを叩き落とすと、弧を描き、ジノに向かって突進した。
 だがジノはそれが飛び出してきたのを視認するとほぼ同時に足元で転がっている愛槍を素早く拾い、その物体を槍の先端よりやや下の場所で叩いた。

 ナイフを弾いて落としたその正体は、斧の刃部分だった。だが今それは、ジノの槍と一体化し、ポールアックスとして存在した。

「…ンちゃ…ん…」

 息も切れ切れなライチの右手の前には、一際煌めく黄金の円があった。自由が利かない右手を、精一杯動かして描いたようだ。斧が飛び出した出口はそこだった。

「…ちっ!!」

 カラサワは素早く銃を構えるも、ジノが先程落ちたナイフを負傷した左腕で拾い、さらに投擲する方が早かった。狙いを全く違えることなくナイフは銃口ぴったりに突き刺さった。

 ジノが間髪入れずに踏み込むと、カラサワは迷うことなくあっさりと銃を捨て、傍らに刺してあった細長い剣を取りに壁まで走る。
 それを見たジノは瞬時にライチの側に寄り、彼女の肌すれすれに素早くその刃を振った。見えぬ鎖の縛めは解かれた。

 直後、背後で空気を切る音がした。確認するまでもなく、あの細い剣の音である。ジノは振り返るより早くポールアックスを振るい、その鋭い一撃を受け止めた。休む間もなく放たれる突き攻撃は、全て心臓を狙うものだった。細い刀身は僅かな隙間を縫い、針に糸を通すような正確さをもっている。ジノが間合いを取るために素早く数歩下がると、相手は流れを渡してたまるかと言わんばかりに詰め寄ってくるのだ。

相当強い。そして慣れている。最前線に居たというカラサワの話は、本当のようだった。
 それでもジノは全ての攻撃を見切った。このスピード戦の中、大きな図体をした槍は下手に攻撃に出られない。一つ一つの突きを避けて、受けて、好機を探っていた。

 ジノは殊更重い突きの後、横からの薙ぎ払いも受け止め、見計らって攻撃に転じようとした。その時に生じた僅かな隙を、敵は見逃さなかった。
 カラサワその刹那にジノの左肩を素手で殴った。

 鋭い痛みにジノが顔を歪ませ、一瞬他の動きを停止させると、カラサワは容赦なくその腹を蹴飛ばした。
壁に叩きつけられた肉体と内蔵は悲鳴をあげ、たまらず血を吐いた。見上げると、勝ち誇った目をしたカラサワが佇んでいた。後ろに見える空は、もう闇の色だ。

「お前は強いが、最強ではない」

 鼻先に剣が突きつけられる。

「他人を守ろうとする人間は、いずれ他人に滅ぼされるのだ」

 あぁ。
ジノは思った。
カラサワが剣を振りかぶる。

「死ね」

 この男は、淋しい人間なんだ。

「あたしは…死なない」

 ジノはそう言って、目を合わせた。カラサワはそれに怯んだように見えたが、奥歯を噛み締め、剣を振り下ろすべく再び柄に力を込めた。
 だから気づかなかった。
 小さくか弱い肉体が、切り札となって『最強』を守ろうとしていることを。

「ボクが殺させない」

 次の瞬間カラサワは崩れ落ちた。
 指サックのついたライチの手には銃が握られており、その銃口にはヒビが入っていいる。手袋をつけた左手には、銃に突き刺さったというのに刃こぼれひとつ起こしていない銀色の彫刻が美しいナイフが光っている。

「…ノンちゃ…!!だいじょうぶ?」

 ライチはそれらを足元に放り出し、友人の顔を覗き込んだ。

「あぁ…」
「わわわ、血ぃいっぱい…全部ノンちゃんの?」
「……貧血を起こしそうだ。今夜は肉かな」

 ジノの軽口に安心したように、ライチはいつもの笑顔に戻った。
 その左肩を見て、応急処置を始める。

「カラサワに…何をしたんだ?」

 ライチは自分の左手が入るだけのサイズの円を描いて、中から包帯を取り出した。包帯巻きは、あまり得意じゃない。

「んん〜?銃とナイフを印踏みして、カラサワのおじさんを撃っただけだよ。弾は別モン、ライチさん特製安眠弾!」
「…この間街で買った弾だろ。特製とか見栄張るな」
「…………えへっ」

 印踏みは、ライチが習得している特殊な魔術である。印をしるされた物体は一度ライチの手にかかったものとして、何物であっても彼女に扱えるようになる。最も、極度のアレルギー持ちのライチは、金属のみにしか使わない。

 そして、いつものような会話をいつものように交わしているうちに、ライチの手当ては終わったようだ。ありがとう、と礼を述べようとして、ジノは自らの肩を見やった。

「…………」

 酷い巻き方だった。
00:24 | この記事のURL
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風唄 『Strong&Strange5』 [2008年05月30日(金)]
 ジノは特に隠れる事もせず、ゆっくりと歩み出た。そして門の前でこちらに警戒の視線を送って寄越す、いかにも筋骨逞しげな護衛の男に話し掛けた。警戒はされて当然と思う。自分ライチと違い、背中には巨大な槍を背負っている。今その自分の背中は、彼女と同じ、橙であるだろうか。

「カラサワ氏に雇われていた者だ。今日はその報告に来たんだが、通してもらえるだろうか」

 二人の護衛の男は顔を見合わせ、再びジノの爪先から頭まで、舐めるように見た。

「女一人か?」
「報告如きに野郎が何人も必要ないと思ったもので」
「………」

 通用するだろうか。

「いいだろう。入れ」

 やはり。
 ジノは、カラサワがこの警護達をはじめ、重臣以外の下の者達には当たり障りのない説明しかしないだろうと踏んでいた。
自分達二人を殺そうとしたあの集団か、あるいはその代表が、報告のためにこの屋敷を訪れる。しかし業界トップの人間が、
暗殺計画など以ての外。さしずめこの護衛達は主の『何事か』の依頼を受けた『何者か』が、ここを訪ねてくるという事程度しか知らされていなかったのだろう。物騒な出で立ちでも構わぬ、とでも。そしてその読みは当たった。
 警護がインカムで何やら連絡を取り、程なくして邸宅からメイドのような女が静かに歩み出てきた。女は僅かに頭を下げると、こちらです、とジノを導いた。

 さぁ、どうしてくれようか。ライチの事は心配ないだろう。あんな性格ではあるが、仕事に関しては絶対にジノの足手まといになるような事はしない。どうでもよいことで普段足を引っ張りまくってるくせに、不思議極まりない。

「こちらでお待ちください」

 案内されたのは広い作りの応接室だった。歩きにくいほどの絨毯には、見覚えがある。

「カラサワ氏はどこに?良い報告なんだ」
「はい、只今呼んで参りますので、少々お待ちください」

 メイドはまた静かに頭を下げて、見事な彫刻を施してある巨大な扉から出ていった。そうだ、ここはカラサワと契約を交わした部屋だ。
 今はまだ日が落ちきるには早い時間だ。会社社長が平日に職務に励む事もなく、出かけることもせず、女二人の暗殺報告を今か今かと待ちわびているのか。ジノは想像し、黒い感情が沸々と生まれてるのを自覚した。
 それに耐えるように小さく息を吐くと、入口に背を向け安楽椅子に深く腰掛けた。

「ご苦労だった」

 威厳あるように聞こえた声も、怒りの耳では、ただの太く煩わしい声にしか聞こえない。ジノは完全に背もたれに体重をあずけているので、入口側からはその姿は見えないのだろう。威勢良く開いた扉から入ってきたカラサワは、気にもとめずに奥の席まで移動した。
 メイドは扉の横に控えている。

「良い報告なのだろう?私の依頼は」

 愚者め。
 ジノは脚を組み替えた。

「そうだな。契約通り、遂行した」

 カラサワがようやくこちらを振り向いた。

「な…」
「あんたの依頼通り男を尾行し、動向を探った。そうしたら不思議な事に、命を狙われたんだ。何故だろう。知ってるか、カラサワさん?」

 その皮肉な笑顔が映った目は見開いて血走っていた。社長と言っても只の人間には変わりない。だが声だけは人の上に立つ者らしく、落ち着いていた。

「……何故生きてる?」

 ジノは吹き出した。

「あんた、社長辞めてペテン師になったらいい。あたしたちを騙すなんて、大した役者だと思うぞ」

 くすくすと笑いながら、ジノは立ち上がった。カラサワが後ずさる。

「なめられても困るんだよな。あたし達があの程度でやられる訳がない」

 ジノが背中の愛槍に手をかけた時、カラサワは扉に立つメイドを見やった。相変わらず静かに立ち尽くしている。

「何してる!この女を止めろ!」

 叫ばれたメイドは、くるりと背を向けた。そして徐に扉を蹴っ飛ばすと、ガシャンと錠の落ちる音がした。

「な…!!」
「ふぃー。この鍵、鉄製だから触りたくなかったんだぁ」

 給仕の制帽を取ると、うつむき加減に控えていたその顔が露わになった。そこには、薄紅色の渦巻きがあった。
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風唄 『Strong&Strange4』 [2008年05月30日(金)]
それでも男は目だけを泳がせ、口ごもるだけで話そうとしない。

「ノンちゃぁん、そろそろボク、飽きてきちゃった」

 ライチはいつもふざけていて、演技がかっているように見えるから、ジノは時々彼女のどこからどこまでが本気なのか解らなくなる時がある。しかしこの時ばかりはそれが吉とでたようだ。男は首筋に刺さる矢を再確認して震え上がり、しっかりしない声ではあったが、はっきり言った。

「や…雇い主だ!」
「それを訊いてる」
「ち、違う!」

 は?
 二人の女の表情は納得には程遠い。

「話せば命は…?」
「保障しよう」

 ジノは即答し、はじめに槍を引き抜き、それを右に構え突きつけながらも一本ずつ矢を抜いた。
 全て抜き終わると、男はその場に尻餅をついた。それでも逃走されることを考慮して、ジノの切っ先は男の鼻先をぴったりと狙い澄ましたままだ。そして少し目を緩ませ、訥々と話し始めた。

「…俺達と、あんた達の雇い主は、同一人物だ」

「ぅええ〜、お茶はおいしかったのになぁぁぁ」

 尋ね返すこともせずライチは妙な所で落胆し、ジノの表情はさほど変わらない。普通はもっと驚くことでは無かろうか。二人の様子に、かえって男が驚いた。彼女たちにとって、それは大きな問題ではないようだった。

「何故?」
「さぁ、俺が事情を知るわけないだろ」
「知ってることを言え。でなければ先程の保障は無かった事になる」

 ジノが槍の切っ先を男の鼻先すれすれに近づける。

「―――っわからねぇよ!本当だ!」

 ライチが鼻歌交じりに小さな円を描き始めた。

「俺は知らな……いや、そうだ聞いたことがある!あんた達があいつらに不利な情報持ってたりするんじゃないのか!?」

 ジノの刃先が僅かに震え、ライチの無数に描いた円が瞬時に消え失せる。
 二人が顔を見合わせた。

「あいつの経営してる会社は政府と繋がりがある!あんた達二人でこの間政治家数人を業界から葬り去ったって言うじゃねぇか!それじゃねぇのか?」
「…あー……」

 過ぎ去った日々を振り返る暇はない。そんなこともあったような。確かに大分前になるが、そのような仕事を請け負ったことがあった。ただ自分達の仕事は、情報操作による政界の人物の脱却であったため、情報として裏金があった事は知っていたが、それに連なる組織については範疇外であった。
つまりは美味しいお茶(ライチしか飲まなかったが)を入れてくれたあのクライアントが、自分たち二人の存在が己の地位を危ういものとする事を危惧して、ジノとライチ二人を抹殺する事にしたようである。

「馬鹿だな」
「ボクのこと!?」

 偶然顔が、ライチの方を向いたままになっていたらしい。ライチは怒り始めたが、ジノはライチが『そう』あることも否定は出来ないと思うから、彼女が地団太踏んで怒るのを無視した。

「ならば、次の目的は決まりだな」

 男は俯き黙り込んだ。

「あんたは仲間を連れて逃げろ。全員生きてる。それにあんた達があたしらの抹殺に失敗した事を知れば…解るよな」
「俺達を殺さないのか」
「そう言う契約だったろ。情報屋は信用第一。それに―――」

 男を見下ろす赤い瞳が遠くを見たような気がした。

「バカって言う方がバカなんですぅー!!ノンちゃんのバーカ」
「あぁそうだな」
「ちょっと!全然心がこもってないんですけど!」

 最強の情報屋は、やはり強がった。



 仕事は早い方がいい。それがジノの仕事に対する取り組みである。
 真の敵がはっきりした今、二人はすぐに来た道を引き返した。裏通りを抜け、人通りも疎らな細い道を目立たないように、且つ早足で進む。足であるダチョウ二羽は置いてきた。


「ボクにはまだ色々ギモンが残ってるんだけどぉ」
「何が」
「ノンちゃんはどして弾より速く動けんの?」

 ライチの質問に、あぁ、と何の気はなさそうにジノは答えた。

「いくらあたしでも弾より早くは動けないよ。引き金を引く指の動きより早く動いてるだけ。あとは銃口の向きから総合的に判断する」
「ふわぁ。ノンちゃん、すっげぇなぁ」

 その顔は、驚いていると言うより喜んでいるような表情だった。渦巻きが少し歪んでいる。

「色々って、他には?」
「ぁ、なんでおっさん達はボクらが政治のえらーい人たちをやっつけたって知ってたのかな?」
「さぁ」
「……………」

 妙な所でアバウトである。

「ああいう情報なら泳がせておいて問題ない。仕事の達成率の高さも世間に匂わせておかなければ、良い依頼は来ない」

 そっかそっか、とライチは納得した。
 しかし今まで様々なケースの依頼を受けた自分達だが、完全に嵌った訳ではないにしても、罠をかけられたのは初めてであるし、ライチには予想もしなかった事だ。自分達の戦闘能力には自信があるためあまり臆することでも無かったが、いい気分ではない。
 懲らしめるぞ、と心の中で呟き、ライチが左手の手袋を確認した時、見透かしたように友人の声が頭上から降りかかった。

「気をつけろ」

 ジノの一言は意外だった。無敵の自分達に恐れるものなどあるのだろうか。

「今をときめくJRコンビの正体は、敵なし夢ありジノライチ♪大丈夫だよ〜〜」

 妙な節をつけて話すライチ一言は、ジノの口元を緩ませた。



 少し前のクライアント、そして目下の敵、カラサワ氏の住む邸宅前で、二人の女は逡巡していた。
 豪邸には必ず強固なセキュリティーが共にあるのがお決まりだ。

「ライチ、クライアントに会ったらどうする?」

 口元だけが皮肉な笑顔を作り、ジノが質問した。

「んん〜?お茶っぱもっと貰っかな。っていうか、ふんだくる?」
「それだけか?」
「もちろん、いったたたーい思いもさせますよ!!」

 こちらは相変わらずの渦を巻いた頬を楽しげに膨らませている。

「ノンちゃんはー?」
「私の仕事の邪魔をした罪は重い」
「良くわっかんないよねぇ。仕事くれたんだか、ただのおじゃまむしなのか」
「とりあえず痛い目には合わせる」
「おおーっと!結局はボクとおんなじ意見じゃ〜ん♪」

 声をあげて笑う少女に邪気はない。彼女のそこはかとない明るさは、いつ何時でも周囲を和ませる力を持つ。

 この家の主は、自分達の命を狙った人間だ。突入を前にして、種々の場数を踏んできたはずの肉体に、知らずに力が入っていた。
 それは裏切りに対する静かなる怒りなのだろか。違う筈だ。カラサワが自分達の抹殺を目的にクライアントを装って依頼を申し込んだのならば、それは裏切りとは言わない。ただの謀だ。
 ならばこの感情は、己の私利私欲の為に、理不尽にも命を狙われた事に対する、これまた保身のための自己中心的な怒りだ。

 ジノは物陰に隠れ、一際豪奢な窓を見上げた。目指すはあの部屋。カラサワが普段書斎としている部屋だ。

 少なくとも、感情の起伏が以前より顕著になったような気がする。自分にとって命とは、取られる前に、取るものだった。
その程度のもので、狙われたぐらいで怒りなど感じなかった。
手のひらの感覚を確かめていると、パートナーが愉快そうに声をかけてきた。

「さ、どしょっか?」
「あたしは正攻法を使う」
「んじゃやっぱ別行動だなぁ〜」

 か弱き肉体ひとつで、一体どの様な手段で潜り込むつもりなのだろうか。

「そうか。意見分裂。君と分かり合う事はないようだ」

 ジノが大袈裟に肩を竦め、目だけはしっかりと笑いを含んで相棒を非難した。そこには、先程まで体中を支配していた緊張も、皮肉もなかった。

「そりゃ〜ボクはノンちゃんじゃないしぃ〜〜」

 華奢な腕をひらひらと震わせ駆け出して行った。護衛の目を盗み、垣根を飛び越えた。日が傾きはじめ、その背中は燃えるよう太陽を背負っていた。
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風唄 『Strong&Strange3』 [2008年05月30日(金)]
 九人対二人。いくら武術、魔術に長けているとはいえ、相手は女だ。普通に考えれば勝敗は明らかであるはずなのに、どうしたことか目の前の若い女二人は息も切らさず立ち回り続けている。

 槍が振るわれる際に響く特有の高音に乱れはない。それは斬られたことによる大気の悲鳴のようで、また旋律のようにも聞こえる。それに伴い刃同士がぶつかり合う金属音。それは擦り合わされるような嫌な音ではなく、金属全体の細かな振動による小気味良い音である。銃撃、斬撃共に見事に攻撃の全てを相殺し、その動きには無駄がない。

その様子を見極めた、グローブを嵌めた一人の男が素早くジノの懐に飛び込んだ。一見すると振り回しているだけのように見える槍も、威力とともに恐ろしく高い精密さによって制御されていることはわかった。だが世にある様々な戦術には、間合いというものが存在する。
 槍であるならば、近距離から中距離攻撃に適しており、極接近戦には向かない。
 槍は剣やナイフなど、飛び道具を除いた諸々の武器に比べるとリーチが長いという利点があるが、体術などの直接打系が対峙する敵となると、些か相性が悪い。また一度薙いだ切っ先は、元の位置に戻るまで、多少の時間がかかる。さらに、彼女程の速さで槍を振るうのであれば、手元の動きが刃に反映されるまで、柄がしなる分多少の時差が起きているのである。

 男は彼女よりは戦闘能力は高くないものの、そこを見極めたところをみると、やはりプロだった。
 一気に間合いを詰めると、男の渾身の一撃が放たれた。それはあまり振りかぶられることなく、しかし素早く急所を狙うものだった。

 ジノは、その男の攻撃のタイミングが予め分かっていたかのように一度自分を取り囲んでいた他の敵を一斉に弾き飛ばし、
柄の部分でその重い一打を寸分の狂いなく受け止めた。

 ジノはその姿勢のまま、静かに男と目を合わせ、言った。

「待ってた」

 男にはその言葉が理解できない。ただ渾身の一撃を受け止められた驚きに戦慄が走り、そして踊る女の楽しそうに刻まれたその唇の形と赤い瞳の色に一瞬目を奪われた。

 次の瞬間、ジノの姿は目の前にはなく、視界には受け止められたそのままの形で拳に添えられた槍の柄だけだった。
 男が目の前で起きたことを脳内で処理できないでいると、唐突に背後から声がした。

「実はあんたが一番手応えありそうだと思ってたんだ。武器の相性から言っても」

 瞬時に先程の出来事について、理解した。
 戦闘が開始される直前の広間にて、魔銃による一発。女は無傷で、撃った男が倒れていた。煙に巻かれた理由が切っ先で弾を割り壊したのであれば、その時その煙の中で女は音もなく瞬時に狙撃手の背後に回り、自分を狙うその人物を仕留めたのだ。
 おそらく一撃で。
 そして煙が引くにはまだ余裕がある刹那に、元の位置へ元の状態で収まったと言うわけだ。
 なんという速さだろうか。弾より速く動ける人間は、確かにいない。だがこの人物はそれすら凌駕し、女でありながら強靭な肉体をもってして、最強の情報屋としてこの世界に名を轟かせているのだ。

 カシャン

 槍の倒れる音がした。
 それに触発されたようにグローブが背後の髪を揺らす女に掌打を繰り出す。だがやはり、彼女は冷静に見極めては首を捻り、数歩下がり、時には手のひらを添えるように受け流しては、その攻撃すら殺す。男は体を捻り、遠心力にスピードを乗せてジノの首を狙うが、それも相手の軽やかなバックステップによって空を切るに終わった。
 渾身の一撃は威力も大であるかわりに、消耗も激しい上、体勢を立て直すまで僅かな時間がかかる。ジノは後退することによって生み出された間合いで右足を軸に体を反転させ、男の左側頭部に強烈な回し蹴りを放った。止められることなく振り抜かれた左足から、容赦ない一発だったようだ。
 そして男は天を仰いで地に伏した。

 強い。
 武に長ける情報屋は、槍術もさることながら、体術にも長けていた。

 このあたりで男達の苛立ちはピークに達した。武の女に対する攻撃はすべて殺され、魔に対する女の攻撃は全て無限の闇に吸い込まれてしまう。疲労しているのは我らのみ。それも女達は、自分たちに攻めの姿勢を見せていないのだ。彼女達はこちら側の攻撃を見極め、流すのみ。少数、劣勢だったはずの彼女達は、まるで男達の戦闘能力の品定めをして楽しんでいるかのようだった。

 グローブの男が地に倒れたのを見て、ターゲットだった男が歯を軋り、また銃口をジノに向けた。この場においてのリーダーは、どうやら彼らしい。それを見て、残った男達もそれぞれ武器を構え直し、彼女達を取り囲んだ一斉攻撃がまた始まろうとしていた。
 その様子にジノは面倒臭そうに小さなため息を吐き、目だけで彼らを見回した。その目は見下している、という形容が適しているかもしれない。
 侮辱の念を感じた男達はさらに頭に血が上り、引き金の指に力が籠められた。ジノはそれを見定めると、視線はそのままに左足を少々ずらすことで足元に転がる愛槍に爪先を引っ掛けた。
 傍らには円から登場したライチの気配がある。円は音もなく描かれ、彼女の小さな体躯をしまい込み、そして排出するのだ。

 広間に女性にしては低く、しかし耳にはよく届く声が響いた。

「あたしを出し抜くくらいだ、どれだけの者達かと思って様子を見ていたが」

 次いで、間髪入れずにその声とは対象的な、やや高めの少女らしい声で補足が入る。

「キミたち、攻撃方法がワンパターンなんだよね」

 二人の女は変わらず微笑みながらも、目の奥に今まで隠されていた怜悧な光りが現れた。

「つまりはあたし達を倒すには、役不足」

 それは、明らかなる怒りの光り。

「と!言うことで…」


 ジノが槍を蹴り上げた。
 ライチが巨大な弧を描いた。
 同時に男達がまたトリガーを引き絞り、床を蹴る。発砲は何発も折り重なるように撃たれた為か、爆発が爆発を呼び、その轟音から通常の威力を遥かに越えたものだと言うことが見て取れる。その衝撃波は、撃った自分達が立っている地点にも響き、仲間達にも少なからずダメージを与えたが、普通にやっても歯が立たなかったのだ。ある程度の犠牲は付き物、そう考えるしかなかった。いくら並外れた速さの人間だろうがこの爆風に晒されて無事であるはずがない。そこに武器を持った仲間が飛び込んで行くのだ。あとは彼らが始末する。
 射手達は勝利を確信し、銃口を地面に向けた。
 それでも彼らは緊張の面持ちで煙が引くのを待った。それぞれ肩で息をしつつ。

「キミ達、ワンパターンの意味知ってる?」

 振り返れば、巨大な漆黒の円を背にして微笑む少女が一人。
 仕留めてなかった、少女が穴に逃げ込む方が速かった―――。驚きのあまり口が聞けないでいると、後ろの巨大な円は貪欲な口を閉じ、そして少女、ライチが徐に指先だけで小さな小さな円をまた描いた。
 そのサイズの円では彼女の体をしまい込む事は出来ない筈。銃を持った男達が、リロードの為に慌てて薬莢を捨てた。
 それを見たライチは口を尖らせ、あーぁ、と疲れたような声と共にため息をついた。

「だから、それ意味ないから止めた方がいいんじゃないかな」

 男達の弾を込め直す手際は良かった。それは一瞬の芸当ではあったが、ライチの円が増えることの方が速かった。

「キミ達は知らないんだろうけど、ボクの力はボクをしまい込むだけじゃないんだよ」

 顔をあげると、深淵を思わせる美しい円は、今度は吐き出すためにこちらを向いて口をぽっかり開けていた。意思を持っているかのようだった。

「じごーじとく!ばいばーい♪」

 小さな黒い穴から吐き出されたもの。それは銃撃戦でライチが収納した、男達が撃った弾そのものだった。弾は闇の中を迷い、方向を奪われ、ライチの手によりまた進む方向を与えられるのだ。突き進むだけの意志を持たぬそれらは、ライチの手に掛かれば撃った主に牙を剥く。
 本日何度目かわからない爆発音が響き、狙われた男達はダメージを与えられ、しかし急所は外されその場に倒れた。

「歯には歯を…ってね。ノンちゃ〜〜〜ん?」

 もうもうと立ち上る煙が引くのを待たず、粉塵をかき分けながらライチは友人の名を呼んだ。霞んだ視界の先に、長い髪が揺れるのが見えた。

「はっけーー…ん?お、おぉ…」

 自分があの爆発を穴に逃げ込むことで逃れようとした時、視界の端に友人が高く早く跳躍するのが見えた。その後飛び込んできた敵を問題なく倒したとして、同時に自分も敵を倒して…今。彼女は一人の人間を締め上げていた。ちょっぴりいつもより怖い顔で脅されてるのはターゲットだ。

「言え」

 ジノは見かけ目立って筋骨隆々と言うわけではなく、少し筋肉質と言う程度だ。だがその体からは驚くほどの馬力を作りだし、並みの男では歯が立たない。その女に胸ぐらを掴まれ、締め上げられているいうのに口を割らないとは大した根性だな、とライチは思った。

「なーにしてるのん?」

 自分に被害が及ばなければ、楽しい事には変わりない。ライチは至極単純に思考を連結し、ジノの『あそび』の仲間に入れて貰うことにした。
 ジノは手を緩ますことをしないままライチの姿を認めると、にやりと笑みを浮かばせた。

「ああライチ、今この方の雇い主をお尋ねしてるんだけど、なかなかお話ししてくださらないんだ。彼がお話しし易いよう、手を貸して
くれないか?」

 演技がかった話しぶりから、ジノも『あそび』始めた事がライチには楽しかった。

「まぁ、それはそれは大変な事でございますことよ!ボクで良ければお手伝いいたしますですわ」

 ジノが口調とは裏腹に、ターゲットの胸倉を掴んだまま荒々しく壁際に押し当てた。ライチは新品の指サックをはめ直し、落ち着いた様子で彼女の背に回るとまた大きな円を描いた。ジノは首を少しだけ傾げると、彼女の耳元をヒュッっと何かが横切った。男は目を丸くしジノに抵抗するのも忘れ、固まった。
男の首筋に一筋の赤い血が流れる。鏃は男の首の皮一枚を斬り、後ろの壁に深々と突き刺さっている。

「矢を使うとは…なかなか好感が持てるやり方だな、ライチ。これならばこの方もきっとお話しくださるよ」
「ははーっ!お褒めたまわり嬉しいかぎり!」

 再び無限の闇とは対照的な黄金の縁が回転を始める。ジノは相変わらず左手で男の胸ぐらを掴んでおり、右手には愛槍が引っかけられている。突然男から左手を離したかと思うと、両手で柄を握り直し、刃に体重を預け男の頬の脇すれすれにそれを突き刺した。その動作もまた寸分の狂い無く、そして速かった。
 壁の一部分が崩れる音は男の耳元で唸り、赤い筋は二本になった。

「貴方の雇い主は、どちら様で?」

 ジノが右手を己の腰にあてがうと、唐突に肘の内側が風を切った。
 ジノの長い髪が風に揺れて、一本だけ床に落ちた。これがまたライチの仕業であるとジノは予め分かっていたように、後ろを振り向き声を掛ける。

「……おい」
「しっぱいしちゃった…ドンマイ!」

 実際失敗ではなかった。やや上方から放たれた矢はジノの髪一本と風を切り、彼女の肘と腰の隙間を通って、男の膝の内側の洋服部分のみを貫いたのだ。

 そして

 その業に、仕方なさそうに目を細めることで諦め、ジノはまたターゲットだった男に向き直った。

「話す気に、なったか?」
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風唄 『Strong&Strange2』 [2008年05月30日(金)]

「……っ!!?」

 凄まじい爆発音と共に、足元が崩れ落ちた。
 落ちた先で、歓喜に満ちた笑い声が耳に届いた。

「っは!まんまと引っかかってやがる!!」
「凄腕情報屋って言っても…大したことないんだな」

 キンッという金属音は、弾を込める音だろうか。咄嗟に身を翻して着地したものの、もうもうと砂煙が上がっていて、周囲が良く見えない。気配だけで読み取れば自分を取り囲んでいる人間の数は…十人前後か。二階にいるはずの自分は、一階の例のだだっ広い場所にいた。自分を捕らえる為に、一回部分の天井で、二階部分の床を特殊な銃でぶち抜いたらしい。煙が少し落ち着いてきた。

「……随分と荒業だな。品格に欠けるやり方だ」
「…余裕こいてるのも今のうちだぜ、姉ちゃんよ」

 そう言ったのはターゲットであったはずのあの男だった。―――嵌められたな。
 下卑た笑いに晒され、ジノは嫌気が差した。こういうやり方にはあまり好感が持てない。
 立ったまま目だけを動かして状況を見定める。人数は読み通り、十人きっかり。半分は銃のようなものを携帯し、他には帯刀している者もいる。グローブを嵌めた体格のばかりがいい奴は、肉体派なのだろうか。さすがに後頭部まで目があるわけではないので、真後ろにいる者の武器の状況までは分からないが…何とかなるだろう。面倒な依頼だった、割に合わない…ジノがそう後悔しかけた時、銃口がこちらに向けられた。
 それでもジノは表情を変えず…いや、少しばかり目を細めたか、男達を見る。  

「恨みはねぇけどな。死んでもらううぜ」
「銃如きであたしは殺せない」

 男達の嘲笑が、更に増した。

「確かに普通の銃じゃあんたを殺せねぇな。だがな、心配するな。これはちーっとばかし特殊な銃でな」
「それでさっきの爆発か」
「おおおお、鋭いじゃねぇか」

 言葉の先を読まれてもなお笑いを見せるのは、多勢に無勢である余裕からか。
 愚人だな。
 ジノはひとり、心の中で吐き捨てた。自分から己の武器の秘密を明かすなど、愚か極まりない。

「殺すには勿体ねぇ、いい女だけどよ」
「じゃあ、やめないか?」

 男達が笑い、ジノがにっこりと笑う。


 引き金が引かれた。

 爆発は、今度はジノの立っていた場所で起こった。即ち、それはジノに弾が命中した事。だが煙がひいた時に、女は変わらずその場に立っていて、地に伏していたのは引き金を引いた本人だった。
 現状把握が出ない男達。戦えるメンバーが十人から九人に減っただけ。たったこれだけの事なのに、男達の動揺は目に見えた。

「この程度?」

 女の笑顔は、酷く落ち着いていた。

「っ…んだよ!!」

 それぞれが武器を構え、四名が一斉に射撃する。激しい爆発が起こる。距離は十メートルと離れていない、近距離での発砲、被弾は免れない。
 
 そのはずだった。

「さすがに四人分はこれで精一杯か…」

 傷ひとつ無く、立っていた。先程と違うのは、その姿勢。腰を低く槍を構えている。そして周囲には薬莢が真っ二つに割られて落ちている。
 刹那に槍を振るうその女は、被弾する前にその刃の切っ先で銃弾を割り、爆発を免れているのだ。


 それから焦燥に駆られた狙撃人たちは、ひたすら目標に照準を合わせ、引き金を引いた。どうやら彼らはプロらしい。さすが支配されているものが例え焦りであっても、その狙いがそれる事はなかった。
 銃弾の速さは通常人間の動くスピードよりも早い。それをかわせる人間はいないはずだが、彼女は違った。やり手の情報屋は武にも長けていると、あらかじめ伝えられていたから特殊な銃…魔弾を用意したと言うのに、彼女を前にするとただの鉄塊に成り下がった。

 発砲するたびに女が槍を振るい、その軌跡は確実に銃弾を捉えて割り、叩き落す。その動きには無駄が無く、舞っているかのようだった。
 雨のような銃弾が一旦止んだ。銃に込められている弾の数は無限ではない。ジノの動きも一時止む。それを見た他の男達が駆け出した。
 唇に刻まれている笑みは変わらない。一斉に突っ込んできた男達の姿を確認すると、ジノは愛器の刃、柄、時には己の肉体で確実に受け止めた。―――否、それは受けているのではなく、去なし、払い、殺されている。各自の武器がぶつかり合う金属音が広間に絶え間なく響く。
 そして再び引き金が引かれたとき、今度は爆発音すらしなかった。

 「ノンちゃんばっかにいいとこ取られてたまるか〜〜〜〜」
 「遅い」
 「道、間違えちゃった。てへ」

 黄金色に輝く円が、女を取り囲むように、護るように描かれていた。それは全てを取り込む、無限の空間。ぽっかりと狙撃手に向かって口を開く、暴力的な円の、美しく輝くその金の縁以外は闇の色。頬に桃色の渦巻きが描かれるその少女は、どこからとも無く目の前に現れた。


 笑顔は二対になった。


 目の前で繰り広げられている女達の笑顔とのん気な会話に、反して男達は逆上した。それぞれが咆哮し、二人にむかってそれぞれの得意とする武器を使用し、攻撃を繰り出す。
 ジノとライチは左右に分散した。
 槍を振るう彼女の攻撃範囲は、意外な事に広いのだ。それは一般的な槍術の使い手の大きさをひと回り以上であり、しなやかに伸縮するその肉体あってこそのものだった。それは大胆に振るわれているように見えるが、先程の銃弾を刃で斬るなど、その槍術は繊細である。
 ライチが側で戦っていてもその確実さをもってすれば、彼女の残撃の余波が及ぶ事はないだろう。しかし折角広い場所で戦っているのだ。
 存分に戦ったほうが良いに越した事はない。
 ジノに向かってナイフが飛ぶ。彼女の長い後ろ髪が揺れ、それはあっさりと首を傾げるだけでかわされた。体を半回転だけさせ、柄の部分で投げた相手の腹部を突いた。
 ライチに向かって両手に刃を構えた男が突進する。驚いたような小さい声をあげるものの、小柄な肉体はなかなかに身を翻す。その動きは決して速いものではないが、騒ぎながらも少女は確実に斬撃を見極める。よいっしょっ、と言う声と共に彼女自身が円の中に隠れ、そして思いもよらないところに登場する。
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風唄 『Strong&Strange1』 [2008年05月30日(金)]
弱者か強者かとと問われれば、自分は後者だと答えるだろう。
 それは過信でなく自信。


その強さを誇れるかと問われれば、自分は肯定するだろう。
 それで今まで生きてきた。


その強さに意味はあるのかと問われれば
 自分は答えられるのか?




「ノンちゃぁぁんかっこいーーーー!!!」

 元気なのは威勢ばかりだ。自分はのん気にダチョウに跨って、加勢する気なぞ更々無かったらしい。それは自分を信頼しての事なのだろうが…複雑である。

「手伝う気、ゼロか」
「一回しか振り下ろしてないのに、ちゃぁんと仕留めたね!すごいぞ、えらいぞノンちゃん!」

人の話を聞く気も無いらしい。
この娘は出会った時からそうだった。勝手に喋り捲り、勝手に動き回り、そして勝手に眠る。使用言語はなんとか理解がなるものの、その内容は予測不可能極まりなく、自分にはない思考回路の持ち主であることには間違いなかった。今までにないタイプで、それはそれは不思議に思う事が多く、またそれが当初は煩わしいことこの上なかった。理解が及んでからは…それこそ『理解した』と言っていいと思う。突飛な言葉や行動も、彼女なりのルールのようなものがあるのだと分かった。

「…当然だ」

 刃にべっとりとついた血糊を振り払いながら、ジノは静かに答えた。
 クライアントの待つ街へあとわずかというまさにその時、二人の前に現れたは一匹の魔物だった。その姿にライチは口笛を吹き、ジノは小さなため息を吐いた。
 その魔物の体長は有に四メートルを越えていたのだった。
 図体が大きければ動きも鈍くなるだろうと思われがちだが、それは誤っている。敵の攻撃も侮れない、もし喰らったらひとたまりも無い激しい打撃を、魔物は繰り出すのだ。
 だがそれを見たジノは幾らか面倒臭そうに武器を構え、対峙する魔物の攻撃を危うげなくかわし、わずか二メートル程…それは敵の半分程度の長さにも満たない、槍で仕留めたのだった。それも一撃で。

敵の屍を、ジノは足で蹴り上げた。普通の人間が蹴っただけならその局所の肉が僅かに揺れるだけだろう。しかし彼女がそれをやると、驚いた事に突っ伏して死んだその魔物の顔が露になるのだった。
自分が死んだ事に気づいてないのだろうか。それとも死を予感する暇も無かったのだろうか。魔物はその眼は空を見詰めたまま絶命している。ジノはその顔を見定めて、少女の名を呼んだ。

「ライチ」
「わかってるよん」

 間髪入れずに戻ってくる応答はテンポが良い。ライチは自分の出番であると初めからわかっていたらしい。
 旅を続けると、魔物との遭遇率も街で暮らすよりはるかに高い。一般人はそういった知能を持たない異形の者との戦闘は好まない。
 よって雑魚となれば話は別だが、今回クラスの魔物であればその屍から獲れる血肉は、人々にとってまたとない収穫物となる。
 徐に、ジノは短い吐息共にその尾を斬った。彼女が愛器を振るうと、凄まじい速さの打撃が繰り出されたあの尾であるとは信じられない程、それはあっさりと胴体から切り離されるのだった。

 同時にライチが指先で、空に美しい弧をなぞる。それは僅かに金色の輝きを帯びて、ひとつの円となった。

「ぅおもっ…」

 収納はライチの専門分野である。彼女の魔力は、指に嵌められている指サックを介在とし、無限の空間を作り出す。それは右手で行う。
 もう一方の手は、主に入れるものを入れるために使う。普通の手だが、布製のような手袋が嵌められている。彼女は極度の金属アレルギーもちなのである。便利なのか不便なのか、ジノには良く分からない。
 ライチは魔物の尾を抱え込むようにして己の描いた円の中に入れようとしているが、小柄な彼女にはそれすら難しいらしい。どうにもこうにも持ち上がらず、フラフラして危うい。見かねたジノが提案した。

「あたしが入れようか?」

 ライチは尚も、真っ赤な顔で持ち上げるばかりで首を縦には振らない。それは意地を張っているわけではないことは分かるが、このままでは埒が明かないような気がしてきた。
 ジノはライチの意見を無視し、むんずと片手でその肉塊を奪い掴むと、勢いよく黄金の輝ける円のなかへ放り込んだ。

「あっきゃーーーーーー!!!なんてことしてくれたんだノンちゃんてば〜〜〜…あぁこれじゃ出すの大変だよ…」
「手伝うから」
「あうう…大丈夫かなぁ…」

 ライチの無限の円にはいくつか特性がある。入れる分には問題ないのだが、取り出すときに苦労する事がある。それは危機的状況を翻したりもするのだが、通常に使う場合それは必要が無い。

「あたしは優しく投げ入れたつもりだった」
「うそつけ!!!」

 取り出す、と言い切ってしまっては語弊があるかもしれない。
 それは、入れたときと同じ威力で出てくるのである。だからライチはジノの初めの提案を受け入れなかったのである。
 自分が投げた勢いそのままで出てくるのだ。己が放った物だ、受け止められないはずがない。ジノは騒ぐライチを見て、笑った。




「この依頼、引き受ける」
「おめでと〜〜」
「そういうことは…私の依頼を達成してから言って欲しいのだが」
「分かってないね、クライアントさん!ノンちゃんが引き受けたからに…」
「では、契約書に拇印を押してくれ」
「あぁ、こ…」
「ボイン?ビックボイ…」
「ライチ、黙れ」
「いやだ!!」

 これだから仕事がはかどらない。クライアントだってライチの横行にはドン引きである。依頼人は目の前の男で、仕事人は自分で、はっきり言ってこの場にライチは必要ない。だが放っておけば何をしでかすか分からない上、依頼人との会話を一部始終見ていないと気が済まないライチに後から質問攻めにされるのははっきり言って苦痛である。依頼人には悪いが、彼女自身が戦力となる時だってある。仕事の依頼を受けるときは同行させるようにしている。

 そして今回の任務、ある男を追跡し、その動向、目的を探って報告する。至って簡単で、大きな失敗さえしなければ命の危険もほぼ無い。
 依頼人がどうしてこのようなことを知りたがるのか、仕事をこなすだけの自分には知らなくったって差し障り無い。一、情報屋としてそれを知る必要性がある、と感じなければ、依頼人に理由を問う事はまずなく、またこのような非公式の情報屋に『情報』を求める人間は、大抵がその理由を言いたがらない。…必要があれば聞き出すまでだ。
 契約書のサインを確認し、ジノは腰を上げた。

「確かに承った。すぐ準備して取り掛かる。ライチ、行くぞ」
「このお茶っ葉もらっていってもいいですか!!!」
「…………ライチ、行くぞ…」

 こうして、いつものように依頼を引き受けたのである。



 ターゲットは予想通り、裏通りの倉庫へと入っていった。魔術を扱える人間かどうかは見ただけでは分からないが、おそらく丸腰。ライチの異常な視力によれば、銃の携帯もないそうだ。
 割のいい仕事だと思った。例の倉庫には既に盗聴器の類を取り付けてあるし、あとはこのインカムを通して傍受すればいい。ライチの魔力が僅かに注入されたそれは、驚くほど感度が良い。
 ジノは耳元に手を伸ばし電源を入れた。三階建ての倉庫の間取りは頭に叩き込んである。ターゲットが会話するであろう部屋だけでなく、至る所にそれは仕掛けておいた。奴等のクリアな話し声が、聞こえるはずだった。

 「…?」

 ノイズしか聞こえてこない。別の角度から倉庫内を見守るライチにアイコンタクトを送るも、彼女のつけているインカムもまた同じような事が起こっているらしい。珍しく険しい顔で、倉庫内の機器に意識を集中させているようだ。

 ダメっぽい――

 ライチの目がそう言った。
 しくじった…初歩的なミスである。どうしようか、会話を傍受できないのであれば、依頼を達成できない。
 一瞬の逡巡のあと、ジノは決断を下した。

 侵入、しよう

 ライチは小さく頷き、屋根裏の小窓から小さな体躯を滑り込ませ、見えなくなった。
 それを確認したジノは手短な窓を確認する。二階だからだろうか、鍵はかかっていない。それに部屋に人はいないようだ。
 あまりの無用心さに拍子抜けしつつも、油断せずに侵入を図る。古い建築物は床が軋んだ音が出やすいが、その音さえも押し殺してジノは奥へと進む。それも滑るように。闇を背負っての隠密行動は得意な方だった。
 気配を消して、頭の中の間取りを確認しつつ、慎重且つ素早く目的の部屋へと近づく。この建物は正面の入り口からすぐの一階の広間をはじめ、倉庫の割には部屋数が多い。現在は何にも使われておらず、長く人が出入りしている気配がない事は、ここに盗聴器を仕掛けた時に既に知っていた。回廊へ出たとき、ジノは梁に音を立てずに飛び乗り、静かに周囲を見渡した。

 しかし、だ。静か過ぎる。
 どうもおかしくは無いか?あれだけ仕掛けた機器のひとつも反応が無いのは異常事態である。ジノはその事に気づいていながら、敢え侵入を試みたのだ。それだけの自信があった。
 ライチはどうしているだろうか?あんな性格ではあるが、彼女の魔の力と仕事のサポートは申し分ない。きっと上手くやっている事だろう、それにターゲットが銃器を持ち込んでいる可能性は低い。
 しかしながら―ー―、一度ライチとコンタクトを取ったほうがいいかもしれない、そう思ってジノは上を目指した。
 上に行くには、階段を使うべきか、それとも天井裏を通るべきか…叩き込んだ間取りを思い出している最中、ひとつの扉を見た。

 あんなところには扉は―――

 異変に気づき、咄嗟に背中の愛槍に手を掛けた、その時だった。
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神様? [2008年05月29日(木)]
目覚ましがなって時刻を確認・・・9時



朝のごミ出しは午前8時半までが基本です



まぁ、まだ収集車がきていなかったからいいけど 瓶缶の日は私にとって今日が最後だったのものですからちょっとは焦ります


仙台で過ごす最後の休日 5月29日 アリアノット☆です
前回の記事で我が実家がどんだけ自然に馴染んでいるかは ご紹介できたかと思います。
あのもののけ姫のモデル白神山地ある青森県だからでしょうか
一瞬、チャーリーが獅子神様に見えました(笑


たしか・・・こんなシーンあったよね(笑

わー神聖だなぁ(棒読み

こんな実家ですけれど一応住宅街にあるんですよ!この写真だと白神山地ですけどね(笑



あと、寝坊した原因の一つ・・・途中だったお絵かきの人物部分が大体できたのでアップします
出発前に完成は難しいのでね

走って階段をのぼっている設定なので足は適当!いや、適当でなくても上手ではないけど

パソの画面が反抗期か画面上部と下部で色の出方が変わってしまうので;着色が難しいんですよね
一体これからどうなるのかしら?=3
や、それ以前に出張中の生活が全くイメージできないけど・・・課長・・・早く向こうの住所と出勤場所を教えておくれ・・・
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