イメージの詩

■Ｄ．Ｈ．Ｊ．婦人、４３歳、既婚
■臨床診断：骨髄炎、左の転子（大腿骨頚部の下にある突起）のあたりの病理的骨折を伴った筋肉腫。左大腿に手術および連続的病菌感染を伴う。ガンによる大きな瘢痕の塊あり。
■生検レポート（バージニア州リッチモンド　バージニア医大）
　「関連する過去の病歴として彼女は、１９２４年左腰の筋肉腫を切除している。これに関連する手術が必要とされた。集中的なＸ線治療も行われた。骨折の箇所の辺りには骨髄炎も起こしていた。
　何度かの視察の後、この骨折は内部で固定することが必要だという判断になった。そのためにジーエット針を用いた。
　手術に続いて、患者は前の手術が悪化した場所にひどい腐肉を生じた。以前から何年にもわたってジクジクしていた場所には、排液法を続けた。
　…患者には（いま、これ以上の手術をすべきではない）と、私は感じた」
■以前の病歴
　１９２３年診断、筋肉腫（生検による）。
　１９２３年　左大腿骨上部の腫瘍を切除。
　１９２３年　同じ場所の再発を切除。
　１９２４年　同じ場所の再発を切除。Ｘ線治療を開始。
　１９２５年　同じ場所から再び瘢痕の塊りを全部除去。その時以来、傷口は塞がらないままに残る。
　１９２８年　開いた傷口に皮膚を移植
　１９２９年　同じ場所から骨の一部を切除。傷は治り、１９４０年までは治った状態が続く。
　１９４０年　瘢痕が再び潰瘍化。骨の炎症と破損が始まる。
　１９４１年　瘢痕を全て切除、皮膚を移植
　１９４４年　小さい骨の破片を切除。
　１９４５年　小さい骨の破片がさらに排出された。
　１９４６年　新たな皮膚の移植がされ、傷跡は１９５１年５月２５日に患者が脚の骨折を起す
　　　　　　　までは、そのままの状態を維持していた。
　１９５１年　大腿骨の前兆の３分の２の長さの金属板を挿入。銀のネジ釘で骨に取り付ける
　　　　　　　手術を、バージニア医大で行った。筋肉と皮膚は治らず。
　１９５２年　壊死した組織の塊りを切除。
■１９５２年９月１５日ゲルソン・クリニックでの初診時およびその後
　治療をすぐに開始。
　患者はベッドに寝ていて左の大腿の側面のほとんど全域にわたり、大きく潰瘍化していた。潰瘍の深いところには金属板の大部分が観えるほどで、膿もたくさん出ていた。
　左の腰の関節が少し膨れ、粘液嚢炎が起きていて、松葉杖で歩くのもやっとだった。
　１９５３年３月
　潰瘍化していた場所のほとんどが塞がり、新しい骨がドンドン出来て、病理的骨折の場所を塞いだ、新しい骨の組織を作る力が余りに強いため、３本のネジ釘が砕けたほどだった。
　周囲の筋肉や組織も回復した。
　その後数年のうちに、砕けたネジ釘の破片はバラバラに離れ、金属板は上に押し出され、歩くと痛みを起すようになった。
　痛みが強くなったので、私は金属板や釘を取り除くように患者に助言した。
■バージニア州リッチモンドの専門医のレポート
　「１９５６年５月２９日、我々は患者を手術した。この手術では以前の手術跡で古くで硬い革のようになっている肉芽組織を切除したが、そこには金属板も露出していて、この金属板や釘も一緒に取り去った。
　この他にも砕けた釘が１本見つかったが、これはＸ線には現れなかった。
　私は１本の釘が残っている部分は取り除けたが、２つの残りの部分は、取り除けなかった。取り除くのが躊躇されたからだ。と、云うのも−不確かな治り具合と骨髄炎が、骨をひどく硬く、脆くしているからだ。
　私は患者に取り返しのつかないダメージを与えはしないかと、心配した。とくに患者が大腿骨に骨折を起したりすると、そうなると思った。
　Ｘ線治療・骨折・何階もの手術をやった患者で、こんなひどい骨髄炎の症例は私も初めてぶつかった」
　このケースで興味があるのは、患者の基礎代謝が最初からマイナス３３だったこと。また血圧も低く１０４／５２で、後には１１８／８２になった。脈拍は規則正しく７６だった。
　私は１９５３年６月には、基礎代謝をマイナス７まで回復させるのに成功した。後にはマイナス３からプラス４にまでなった。血液中のカリウムは正常、あるいは正常に近いまでに、もっと早く回復できた。
　患者を最後に診たのは、１９５５年７月２０日で、１９５５年７月までレポートは着ていた。それによれば彼女は「いい状態で、痛みもなく普通の活動が出来ていた」と言う。
　このケースは体の中に自然に備わっている自然な治癒能力の素晴らしさを、際立って示す例である。その能力は骨の成長の邪魔になる大きな金属の釘まで砕いてみせた。肉芽組織は病菌・バクテリア・ガン細胞を殺し、それを体外に排斥（はいせき）。次にまず肥厚した瘢痕組織を作り、後にはそれを正常ないしは正常に近い、色々な組織と入れ換えた。そしてこういう仕事を完成させるのには、新鮮な食品の中に含まれている生きた物質を最大限に活用して、体を援護してやるのが不可欠である。そうすれば体は自分のもつ生物学的可能性の全てを使って、いまの物質を強力な創造力を持つ肉芽組織に変えて行くのである。
　この例からは自然の生命を作り、生命を維持する能力がいかに驚くべきものかが分かる。
我々医者は、ひどい障害やガンのような退化病の治療にも、同じ力を利用するべきである。
物理学の世界では、人間はこういう力を理解し、それを利用し始めている。ただ生物学の世界では、体の全ての機能は複雑に、かつ絡み合った形でコントロールされている。だからこの力の素晴らしさを認識し、自然のこの秘密の力を活用するのが、最も難しい。