本日発表された米国がん協会のレポートによると,
米国では,癌患者数が減少し,癌による死亡者数も減少している,
というデータが示されています。
(Annual Report to the Nation on the Status of Cancer, 1975-2006)
これは,ここ数年の明確な傾向です。
つまり,米国では,対癌政策が成果を上げつつあるといえるでしょう。
今回のレポートでは,
2009年に新たに癌と診断されたのは約148万人,
癌による死亡者数は約56万人
と推計されています。
これは,過去に比べて大きな改善であり,
米国は,がんとの闘いにおいて勝利しつつあること,
20年間進めてきた癌対策が成果をあげつつあること,
を示しています。
新規に診断される各種の癌は,明らかに減少しています。
具体的には,
肺がん 0.8%減少
乳がん 2%減少
前立腺がん 2.4%減少
大腸がん 2.5%減少
ということです。
(年率換算)
レポートでは,
がん減少の主因として,
まず,平均的なアメリカ人の生活習慣の改善をあげています。
特に,
・赤身の肉(牛肉や豚肉,羊肉など)の消費の減少,
・喫煙の減少,
です。
また,
・カルシウム
・葉酸
の摂取の増加もあげられました。
(その他,アスピリンも増加。)
以上は,がんの新規発生の減少(あるいは再発の予防)に関与する因子です。
さらに,がん死亡者数の減少には,
がん検診による早期発見
が要因と考えられます。
一方,日本では,がんが死因の第1位であり,がん患者数が増加し,さらにがん難民も増加しています。
(米国では,がんは死因の第2位。)
もちろん,米国では,医療保険制度の問題・数千万人が医療保険に加入していない問題・ビッグファーマや保険業界のロビー活動・肥満者の急増といった,まだまだ解決するべき問題が知られています。
日本でも米国でも,医療を取り巻く現状は複雑であり,問題は山積しています。
ただ,がん患者数やがんによる死亡者数というデータを比較する時,がん対策という点について,日本が米国より劣っているのは明らかでしょう。
例えば,喫煙は,ありとあらゆるがんの原因となります。
しかし,日本では,欧米並みにタバコ税を増税することもできなければ,新興国でさえ行われている程度の禁煙対策もできていません。
そして,日本のタバコ会社はTVでイメージ広告を大量に流しつつ,タバコそのものの宣伝ができないために,ドラマの中で若い俳優に喫煙させるといったシーンを放映し続けています。
(その一方で,日本では売り上げ増が見込めないために,新興国/発展途上国での販売に注力しています。)
日本では,喫煙の効能?といった説を唱える医師もいます。
しかし,米国では,タバコの害を否定する研究を発表した医師や研究者は,その背後でタバコ会社と取引をしている,というデータが示されています。
がんの発症にはさまざまな原因があり,すべてが生活習慣で予防可能というわけではありません。
しかし,多くのがんでは生活習慣の介入による効果が知られており,
早期発見/早期治療という手段と併用することで,大きな成果が得られると考えられます。
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医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
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これからもいろいろ教えて下さい。よろしくお願いします。
久米秀海 拝