今月の泌尿器科学の専門ジャーナル(電子版)に,前立腺切除術時におけるノコギリヤシの効果を調べた臨床研究が,イタリアのグループから報告されていました。
(
Minerva Urol Nefrol. 2010 Jul 16.)
前立腺肥大症(BPH)は,加齢とともに生じる疾患です。
前立腺がんとは異なり,良性ですが,排尿障害などQOLに影響します。
前立腺肥大症(BPH)に対しては,医薬品の他,ハーブサプリメントでは
ノコギリヤシ(
Serenoa repens)が利用されます。
今回の研究では,前立腺肥大症(BPH)に対する外科的処置の前に,ノコギリヤシを投与することで,手術に伴う出血などの副作用に影響があるかどうか,検討されています。
具体的には,経尿道的前立腺切除術(TURP)あるいは開腹前立腺切除術(OP)を前提にしたBPHの患者144名を対象に,
(1)手術の前2ヶ月間にわたり,320mg/日の用量でノコギリヤシを投与した群
(2)ノコギリヤシ非投与群
の2群に無作為に分けて比較されました。
144名中24名(ノコギリヤシ投与群10名,非投与群14名)が試験を脱落しています。
解析の結果,
まず,非投与群に比べて,ノコギリヤシ投与群では,
手術時間が有意に短くなっていました(投与群59.8分 vs. 非投与群77.6 分, P<0.001)。
また,ノコギリヤシ投与群では,手術中の合併症は見出されていません(投与群0% vs. 非投与群15%; P=0.001)。
さらに,輸血の必要性も顕著に少なくなっています。(投与群0% vs. 非投与群38.33%; P<0.001)
その他,術後経過も,非投与群に比べて,ノコギリヤシ投与群のほうが好ましい結果でした。
入院日数も,有意に短くなっています。(投与群5.92 日 vs. 非投与群7.92日; P<0.001)
以上のデータから,前立腺切除術施行前のノコギリヤシ投与は,術中術後の経過を良好にする働きがあることが示唆されます。
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