神経病学の専門ジャーナルに,ハンチントン(舞踏)病に対してコエンザイムQ10の高用量投与を行った第1相臨床研究が報告されていました。
(
Mov Disord. 2010 Jul 28)
ハンチントン舞踏病は,付随意運動や認知症,精神障害等を生じる遺伝性の神経変性疾患です。
近年の研究によって,原因遺伝子部位が特定され,熱ショックタンパク質を制御する転写因子の異常が原因と考えられています。
しかし,治療法は確立されていません。
コエンザイムQ10は,神経保護作用を有しており,これまでの研究では,ハンチントン病患者に1日あたり600mgの投与によって,病気の進行を遅らせたという報告があります。
そこで,今回の研究では,さらに高用量のコエンザイムQ10投与について,安全性・認容性が検証されました。
具体的には,被験者28名(ハンチントン病患者20名,健常者8名)を対象に,1日あたり1,200mg,2,400mg,3,600mgのコエンザイムQ10が20週間投与されています(オープンラベル試験)。
用法は,まず,1,200mgにて開始し,4週間毎に1,200mg増量し,最大3,600mgを投与するという方法です。
有害事象および血中CoQ10値が測定されました。
被験者28名のうち23名(83%)が最大量の3,600mg投与を完了しました。
6名の被験者(健常者2名,ハンチントン病患者4名)は,消化器症状や疾病の悪化といった理由で脱落しています。
最も頻繁に認められた有害事象は,消化器症状でした。
(なお,1名の被験者において,重大な有害事象が認められましたが,コエンザイムQ10投与との関連は否定されています。)
血中CoQ10の平均値は,
--投与前(n = 28);1.26 +/- 1.27 mug/mL
--1,200 mg/日投与,4週間後(n = 26);5.59±2.24 mug/mL
--2,400 mg/日投与,8週間後(n = 25);6.38±3.25 mug/mL
--3,600 mg/日投与,12週間後(n = 23);7.49±4.09 mug/mL
--3,600 mg/日投与,20週間後(n = 20);6.78±3.36mug/mL
という結果でした。
高用量のコエンザイムQ10投与は,
80%以上の被験者で目標とした用量に達し,十分な認容性が認められています。
論文著者らは,血中CoQ10値と有害事象とのバランスから,1日あたり2,400mgの投与が妥当であろうと考察しています。
一般に,
生活習慣病の予防やアンチエイジングを目的としたコエンザイムQ10の用量は,1日あたり100mg前後です。
一方,特定の病気の治療目的では,今回のように高用量投与が行われることがあります。
(例えば,パーキンソン病に対して1,200mgを投与した臨床研究も知られています。)
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