腎臓病学の専門ジャーナル(電子版)に,慢性腎臓病での食事療法において,リンのホメオスターシスを考慮する際には,動物性タンパク質よりも植物性タンパク質のほうが好ましいことを示した臨床研究が,米国のグループ(Indiana University School of Medicine)から報告されていました。
(
Clin J Am Soc Nephrol. 2010 Dec 23.)
慢性腎臓病では,体液のホメオスターシスが保てず,代謝異常や電解質異常を生じます。
血中の変化として,代謝性アシドーシス,高リン血症,低カルシウム血症,高カリウム血症などが認められることがあります。
そのため,食事療法として低タンパク食が推奨され,リン摂取制限が行われることもあります。
(慢性腎臓病ではリンバランスが過剰となりますが,FGF23やPTH誘導性リン酸塩尿のために,血中リン値は正常範囲内を示すこともあります。)
一般に,保存期慢性腎不全の食事療法では,タンパク質の摂取量は0.6以上0.7未満(グラム/体重kg/日)とされ,
尿中リン排泄量が500mg/日以上で,リンの摂取制限となります。
(低タンパクの食事療法が実践できていれば,リンの摂取制限は行われていません。)
リンの制限として,たとえば1日あたり800mg以下という指針があります。
一方,リンの供給源であるタンパク質の種類が,臨床的に重要であると考えられます。
そこで,今回の研究では,慢性腎臓病患者における食事性リンの意義について,ベジタリアン食と非ベジタリアン食(肉食)の比較が行われています。
具体的には,腎臓病患者9名(平均GFR; 32 ml/分)を対象に,1週間毎のクロスオーバー法にて,ベジタリアン食(植物性タンパク質)と非ベジタリアン食(動物性タンパク質)の摂取が行われました。
解析の結果,1週間のベジタリアン食により,血中リン値の低下,FGF23値の低下が認められたということです。
介入試験による入院中,血中リン,カルシウム,PTH,および尿中リン排泄の変動に関して,両群間に有意差が示されています。
以上のデータから,慢性腎臓病の食事療法では,タンパク質の量のみならず,その種類が,リンのホメオスターシスに重要であり,動物性タンパク質よりも植物性タンパク質のほうが好ましいと考えられます。
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