今月の糖尿病学の専門ジャーナル(電子版)に、血中ビタミンD値と、全死亡率および心血管死亡率との関連を調べた研究が、英国のグループ(University of Birmingham)から報告されていました。
(
Diabetes Care. 2012 Mar 7.)
至適な血中ビタミンD値(25-OH-D値)は、心血管疾患による死亡率および全死亡率を低下させることが知られています。
そこで、今回の研究では、メタボリック症候群リスクと死亡率、ビタミンD値との関連が検証されました。
具体的には、1997年から2000年の間に心カテ目的で紹介された1,801名のメタボリック症候群患者を対象に、平均7.7年間のフォローアップが行われ、死亡率が調べられています。
(Ludwigshafen Risk and Cardiovascular Health (LURIC)というコホート研究の一環です。)
解析の結果、
被験者(メタボリック症候群患者)の多く(92%)が、血中ビタミンD値が低値(25(OH)D (<75 nmol/L))でした。
22.2%では、ビタミンD欠乏(<25 nmol/L)が認められました。
フォローアップ中、462例の死亡例が見出され、
267例(57.8%)は、心血管疾患に起因する死亡でした。
交絡因子で補正後、
至適な血中ビタミンD値は、ビタミンD欠乏に比べて、全死亡率の顕著な低下との相関が認められました。
(75%のリスク低下)
また、心血管死亡率では、67%のリスク低下となっています。
(至摘なビタミンD値は、ビタミンD欠乏に対して。)
さらに、心臓突然死では85%のリスク低下、心不全では76%のリスク低下が見出されています。
なお、心筋梗塞リスクとビタミンD値との間に有意な相関は示されませんでした。
死亡率の低下作用は、それぞれ用量依存的(血中ビタミンD値依存的)でした。
以上のデータから、
至摘なビタミンD値は、メタボリック症候群における全死亡率および心血管疾患死亡率の低下と相関すると考えられます。
今後、ビタミンDサプリメント投与による血中濃度の改善で、死亡率の低下が認められるかどうか、検討が期待される分野です。
ビタミンDは、骨の健康維持や骨粗鬆症予防の必須栄養素として知られています。
近年、ビタミンDの機能性として、免疫調節作用や抗がん作用、インフルエンザ予防作用なども見出されてきました。
また、さまざまな生活習慣病では、血中ビタミンD値が低いことが知られており、健康保持や疾病予防のために、ビタミンDサプリメントの摂取が推奨されます。
(欠乏症の予防ということでは通常の食事からでも補えますが、疾病予防という目的では、1日あたり1,000〜2,000 IUの摂取が必要であり、サプリメントを利用することになります。)
今日では、ビタミンD欠乏症の典型例のような疾患は少ない一方、血中ビタミンDの低値が広く認められることから、生活習慣病の予防やアンチエイジングを目的としたビタミンDサプリメントの利用が推奨されます。
日本人の間でも、ビタミンDの潜在的不足/欠乏が顕著になっています。
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