栄養学の専門ジャーナルに、末期腎不全/維持透析患者において、L-カルニチン投与による脂質代謝改善作用を示した臨床研究が報告されていました。
(
J Nutr Metab. 2012;2012:510483.)
カルニチン(L-カルニチン)は、脂肪の代謝に必要な機能性成分です。
(長鎖脂肪酸は、L-カルニチンと結合することでミトコンドリアに入ります。)
L-カルニチンに関する研究では、中性脂肪やVLDLコレステロールの低下作用、肝臓での脂肪蓄積の抑制、運動能向上作用、肥満での減量など、多彩な働きが示されています。
また、特定の病態において、治療と併用されることもあります。
例えば、腎疾患患者の血球減少症に対する効果、糖尿病患者での代謝の改善、慢性疲労症候群患者の症状改善、C型肝炎のインターフェロン療法の補助療法などが報告されています。
特に、腎不全によって慢性維持透析を受けている病態では、カルニチン欠乏による障害が知られており、L-カルニチンの摂取が推奨されます。
さて、今回の研究では、
維持透析患者において、L-カルニチン投与による脂質代謝やQOLへの作用が検証されました。
具体的には、慢性維持透析患者を対象に、
・1日あたり1グラムのL-カルニチン投与群(n = 24)、
・偽薬投与群 (n=27)
の2群について、16週間の介入が行われました。
(ランダム化二重盲検偽薬対照試験)
介入の結果、
カルニチン投与群では、
中性脂肪値の有意な低下(-31.1 ± 38.7 mg/dL, P = 0.001)、
HDLコレステロールの有意な増加(3.7 ± 2.8 mg/dL, P < 0.001)
が認められました。
また、カルニチン投与群では、
総コレステロール値の低下傾向(-6.6 ± 16.0 mg/dL, P = 0.075)、
ヘモグロビンの増加傾向(0.7 ± 1.7 g/dL, P = 0.081)
が見出されています(有意差なし)。
一方、両群ともLDL値には有意な変化はありませんでした。
エリスロポエチンの用量は、両群とも有意に減少しました。
(カルニチン投与群;-4750 ± 5772 mg, P = 0.001、偽薬投与群;-2000 ± 4296 mg, P < 0.05)
なお、QOLスコアは両群とも有意な変化は示されていません。
以上のデータから、
慢性維持透析患者において、
L-カルニチンサプリメントの経口投与は、TGとコレステロールの低下、HDLの増加という脂質代謝改善作用を示し、
かつ、ヘモグロビンの増加によるエリスロポエチン用量の減少という効果を得られる、
と考えられます。
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