泌尿器科学の専門ジャーナルに、特発性精子無力症に対する複合サプリメントの作用を調べた臨床研究が、イタリアのグループ(Sapienza Rome University)から報告されていました。
(
Arch Ital Urol Androl. 2012;84:137-40)
特発性奇形精子無力症(asthenoteratozoospermia)は、男性不妊症の原因となります。
これまでの研究では、抗酸化サプリメントやコエンザイムQ10(CoQ10)による精子機能の改善作用が示されています。
例えば、
還元型コエンザイムQ10による精子機能改善作用
コエンザイムQ10 による男性不妊症の改善作用
αリポ酸による精子機能改善作用
ビタミンDによる精子運動機能の改善作用
などが知られています。
さて、今回の研究では、
特発性奇形精子無力症の男性不妊症患者において、
抗酸化サプリメント成分の複合剤(L-カルニチンや セレン, コエンザイムQ10, 亜鉛などを含有)による有効性と安全性の検証が行われています。
具体的には、オープンラベル試験として、
少なくとも18か月以上の間、特発性奇形精子無力症と診断された
不妊症男性患者114名を対象に、
複合サプリメント
(L-カルニチン145 mg, アセチル-L-カルニチン64 mg, 果糖250 mg, クエン酸50 mg, セレン50 mcg, コエンザイムQ10 20 mg, 亜鉛10 mg, ビタミンC 90 mg, B12 1.5 mcg, 葉酸200 mcg)
を4カ月間投与しています。
96名が試験を完了しました。
解析の結果、
精子運動能の有意な改善が認められました。
(from 18.3 ± 3.8 to 42.1 ± 5.5.)
また、
16名の被験者は、試験期間中に妊娠に成功したということです。
なお、精子濃度や形態学的所見には、有意な変化は示されていません。
安全性について、問題は見出されていません。
以上のデータから、
男性不妊に対する抗酸化サプリメント(L-カルニチンやコエンザイムQ10)の改善作用が示唆されます。
今後、さらに質の高い臨床試験による検証が期待される分野です。
作用メカニズムの詳細は不明ですが、CoQ10のATP産生作用や抗酸化作用の関与などが推察されます。
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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