サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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抗酸化サプリメントと死亡率のメタ分析 [2007年03月01日(木)]
昨日(2/28)付けの米国医師会雑誌に、抗酸化作用を持つサプリメントの疾病予防作用を検討した論文が掲載されていました。
( JAMA. 2007;297:842-857.)


この論文は、これまでに報告されたいろいろな研究をまとめて解析して、サプリメントの効果を検討したという種類の研究です(システマティック・レビュー、メタ分析というタイプの研究になります)。



論文では、ベータカロテン、ビタミンA、C、E、セレンといった抗酸化作用を持つビタミン・ミネラルを用いたランダム化試験を解析した結果、死亡率の低下といった効果は確認できなかったという結論になっています。

(解析されたのは68個のランダム化試験で、232,606名の参加者、385個の発表論文です。)

(今回の論文では、ベータカロテンやビタミンA、Eでは、逆に死亡率を上げる可能性が示唆されています)


サプリメントについてのネガティブなデータとして、この論文はメディアでも取り上げられています。


ただし、この論文(メタ分析)の結果をみて、抗酸化作用を持つビタミンやミネラルのサプリメントをやめるべきかという簡単な話ではないと思います。



たとえば、合成ベータカロテンを肺がんのハイリスクグループに、単独で大量投与すると、死亡率が上がるというデータはすでに知られています。

そのため、現在では、カロテノイドの摂取について、野菜や果物を基本とし、「マルチカロテン」のサプリメントを併用するという考えになっています。



また、ビタミンEのメタ分析で問題になるのは、末期の慢性疾患患者(少数)に大量投与した場合には、死亡率が上がったという論文の影響です。



何万人もの参加者を対象にしたメタ分析というと、一見、説得力がありますが、抗酸化サプリメントについては、死亡率が適切なアウトカム・指標になるとは考えられません。


それは次のような理由からです。


一般に、ランダム化試験では、対照群と治療群(今回はサプリメント投与群)との間で、参加者の属性(性別や年齢、健康状態など)をできるだけ一致させて比較します。


それでも、ゲノムやプロテオームのレベルでは大きな個人差が存在します。

それらの多様性・個人差を検討せずに、(介入効果の大きな)医薬品と同じアウトカムを用いた、個々のランダム化比較試験の手法自体に疑問が残ります。


つまり、抗酸化作用といった、(分子標的治療薬や抗がん剤といったい薬品と比べると、)介入効果の小さな成分による長期的な効果を検証する際には、新しいバイオマーカー・指標を確立する必用があると思われます。

(換言すれば、医療用医薬品と同じようなアウトカムを指標としたランダム化試験では、サプリメントによる疾病予防効果を検討するには検出力が小さすぎる、ということになります。)


(極端な例ですが、病気がちな体質の個人や既に何らかの慢性疾患を持っている人が抗酸化ビタミンをとる場合と、健康状態の良好な人が抗酸化ビタミンをとらない場合とでは、抗酸化ビタミンによる介入効果と、もともと存在する疾患感受性の個人差についての検証が必要でしょう。)


その他の問題点として、抗酸化ビタミンやミネラルの血中濃度変化を確認していないランダム化試験が少なくないとか、投与したサプリメントの成分分析が十分ではないといった問題もあります。







最近の研究では、抗酸化ビタミンや必須脂肪酸の作用について、それらの成分による効果(中性脂肪の低下や動脈硬化の予防といった効果)を得られる人と得られない人がおり、その違いは遺伝子の個人差による、という予備的なデータが知られています。




抗酸化サプリメントに関して、現時点での最上のエビデンスから得られるアドバイスは、

--野菜や果物など抗酸化成分の豊富な植物性食品をバランスよく摂取しましょう。

--ただし、不足しがちな栄養素もあるため、マルチビタミンやマルチミネラルを補完的に利用しましょう。

--植物性食品や抗酸化成分を十分に摂れないときには、サプリメントが利用できます。

--疾病予防のために長期的にとることが多いので、費用対効果も考えて、適切な品質で適正な価格の製品を選ぶことも大切です。

と考えています。
(あくまで私見です。)



以上は、抗酸化サプリメントについてです。



サプリメントでは、特定の疾患について改善効果が示されているハーブ・薬用植物、その他の成分が多数知られています。

これらのサプリメントは、適応となる疾患や病態に対して適切な用量・用法で利用することで効果が期待できます。




今後、ゲノムやプロテオームに存在する個人差に基づき、疾病予防の見地から栄養学の知見が集積されれば、個人の多様性を考慮した個別化医療において、サプリメントがより的確に活用できるようになるでしょう。

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