医療における「関係性」の臨床的意義を調べていて、
うつ病治療では、精神科医のほうが、薬よりも3倍重要である、という研究報告を読みました。
(
J Affect Disord. 2006 Jun;92(2-3):287-90)
心身医学や統合医療の分野では、
患者と医療従事者との関係性が、疾患の予後に影響を与えることが証明されています。
つまり、
医師患者関係が良好であれば、
同じ薬でも、より効果的であり、よい経過となる、ということです。
鎮痛剤の投与方法でも、機械式ポンプと、ナースとの比較試験があり、
ナースによる投与のほうが、鎮痛効果が大きいという複数の研究があります。
まず、今回の研究の背景として、
米国NIHの国立精神衛生研究所(NIMH)による評価で、
うつ病治療では、
三環系抗うつ剤のイミプラミンが、偽薬よりも有効であるというコンセンサスがあります。
(NIMH TDCRPのデータ。イミプラミン+クリニカルマネジメントが、偽薬+クリニカルマネジメントより有効。)
しかし、
このデータでは、医師など治療者の臨床的意義が解析されておらず、
精神科医の果たす役割や治療への寄与度が示されていません。
そこで、今回の研究では、
米国NIMH TDCRPにおける精神科医の役割が検証されました。
具体的には、
NIMH TDCRPから患者112名分のデータが対象となり、
・イミプラミン+クリニカルマネジメント群(n = 57, 9 psychiatrists)、
・偽薬+クリニカルマネジメント(n = 55, 9 psychiatrists)
が検証されました。
うつ病の評価スコアとして、
BDIスコアとHAM-Dスコアが比較されています。
解析の結果、
まず、
BDIスコアにおける各要素の寄与度は、
医薬品:3.4% (p < .05)
に対して、
精神科医:9.1% (p < .05)
でした。
つまり、
うつ病治療では、
精神科医は、
抗うつ薬の3倍の役割を果たしていることになります。
また、HAM-Dスコアは、
医薬品:5.9% (p < .05)
精神科医:6.7% (p = .053)
でした。
以上のデータから、
うつ病治療において、
精神科医の果たす役割は、医薬品よりも重要であることが示唆されます。
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