今日の夕方、東京駅近くの会議室で、学会誌に掲載用の座談会と、学会の臨時理事会がありました。
座談会では司会を務めさせていただきました。
さて、本日の私的なお勉強日記です。
今月の栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、HIV治療におけるビタミンD3サプリメントの有用性を示した臨床研究が、米国とブラジルのグループから報告されていました。
(
Nutr J. 2015 Aug 18;14(1):81.)
HIV感染での抗ウイルス療法(ART)では、
ARTによるビタミンD代謝への影響から、
ビタミンD欠乏のリスクが高まります。
ビタミンDは、免疫賦活作用を有しているため、HIV治療におけるビタミンD低下は好ましくないと考えられます。
そこで、今回の研究では、
HIV感染者において、ビタミンDの充足と臨床所見との相関が検証されました。
具体的には、
ART治療中でウイルス数が低い(HIV-1 RNA <50 copies/mL)HIV陽性の成人を対象に、
ビタミンD充足群とビタミンD不足群に分け、
(充足群と不足群は、血中25(OH)D値にて、30以上、あるいは 30 未満ng/mLで区分)
ビタミンD不足群には、
オープンラベル試験として、
50,000 IUのビタミンD3を1週間あたり2回、5週間投与し、
続いて、8000 IUを1週間に2回の投与として、24週間の介入が行われています。
主エンドポイントは、
24週間後の時点で、
25(OH)D値が、30 ng/mL以上に到達するかどうか、です。
97名が試験に参加し、
34名がビタミンD充足群、
63名がビタミンD不足群でした。
(女性32%、非白人47%、平均年齢46歳、ATR期間は5年間、CD4は 673 cells/mm(3))
ビタミンD値(25(OH)D)は、83%の被験者で回復しました。
これは、CD4数およびプロテアーゼ阻害剤の期間と有意に相関していました。
年齢、性別、人種で補正後、
efavirenz服用では、24週間後のビタミンD値が21.1 ng/mL高く、
zidovudine服用では、7.1 ng/mL低いこと、
また、
25(OH)Dが1 ng/mL増えるごとに、
CD4数が3.3 cell/mm(3)増加する、という相関が見出されました。
(p = 0.06)
以上のデータから、
HIV感染者で、抗ウイルス治療を受けている患者では、ビタミンD不足が効率に見られること、
ビタミンD不足は、ビタミンD3サプリメントの投与により回復し、
それに伴って免疫関連指標も改善する
ことが示唆されます。
近年、ビタミンDは、骨の健康維持だけではなく、免疫調節作用や抗がん作用など、多彩な効果が示されています。
一般に、
健康保持や疾病予防、ヘルシーエイジングを目的としたビタミンD3サプリメントは、
1日あたり
25マイクログラム(1,000 IU)から、50マイクログラム(2,000 IU)が推奨されます
ビタミンD3サプリメントは、安全性、有効性、経済性に優れていますので、健康保持や疾病予防、あるいは多くの疾患での栄養状態を改善する前提条件に、ベーシックサプリメントとして広く利用されることが推奨できます。
多くの生活習慣病や慢性疾患、難治性疾患の患者群において、ビタミンD低値が示されており、ビタミンDサプリメントの臨床的意義が注目されています。
米国での関連学会は、下記の推奨をしています。
米国老年医学会は、1日あたり4,000 IUを推奨
米国老年医学会(AGS)では、高齢者における転倒や骨折を予防するために、血中ビタミンD値(25OH-D)が30 ng/mL (75 nmol/L)は必要としています。
そして、ビタミンDの推奨量は、1日あたり4,000 IUとしています。
(これは、食事、サプリメント、日光暴露による総量です。
なお、この量は、現実的には食事のみからでは不可能であるため、サプリメントを利用することになります。)
米国内分泌学会は、1日あたり1,500 IU〜2,000 IUを推奨
米国内分泌学会のガイドラインでは、1日あたりの所要を男女とも年齢によって、次の3段階に分けています。
1歳未満の乳児は400〜1,000 IU、
1歳〜18歳では600〜1,000 IU、
19歳以上では1,500 IU〜2,000 IU
サプリメントでは、ビタミンD3が用いられます。
日本からの報告では、
ビタミンDサプリメントのインフルエンザ予防効果
が知られています。
また、さまざまな生活習慣病では、血中ビタミンD値が低いことが知られており、健康保持や疾病予防のために、ビタミンDサプリメントの摂取が推奨されます。
(欠乏症の予防ということでは通常の食事からでも補えますが、疾病予防という目的では、1日あたり1,000〜2,000
IUの摂取が必要であり、サプリメントを利用することになります。)
今日では、ビタミンD欠乏症の典型例のような疾患は少ない一方、血中ビタミンDの低値が広く認められることから、生活習慣病の予防やアンチエイジングを目的としたビタミンDサプリメントの利用が推奨されます。
日本人の間でも、ビタミンDの潜在的不足/欠乏が顕著になっています。
たとえば、
日本人妊婦の90%がビタミンD不足、
血中ビタミンD値が高いと大腸腺腫リスクが低い
というデータがあります。
DHCでは、
ビタミンD3サプリメントを製品化しています。
ビタミンDサプリメントに対する効果には個人差がありますが、
臨床的には、ビタミンDサプリメントを1,000 IU/日の用量で投与すると、血中25ヒドロキシビタミンD値が10ng/mL増加する、
という報告もあります。
マルチビタミンのビタミンDはRDAのための設定ですので、別途、ビタミンDサプリメントの利用となります。
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