今月の消化器病学の専門ジャーナル(電子版)に、コーヒーの摂取と、肝硬変の進行および肝臓移植後の長期生存との関係を調べた疫学研究が、ドイツのグループ(University Hospital of Heidelberg)から報告されていました。
(
J Gastroenterol Hepatol. 2016 Feb 15.)
肝臓疾患末期に対する治療や、肝臓移植後の長期生存の改善に寄与する治療は、限られています。
これまでの疫学研究によって、コーヒーの摂取による生活習慣病リスクの低下が知られています。
例えば、コーヒーの摂取による2型糖尿病リスク低下、脳卒中リスク低下、うつ病リスク低下、肝がんリスク低下、認知機能の低下抑制などがあります。
今回の研究では、コーヒーの摂取と、肝硬変および肝臓移植後の長期生存との関連が検証されました。
具体的には、
肝臓移植待機中の末期肝臓疾患患者379名および肝臓移植後の患者260名を対象に、
コーヒーの摂取と、生存率との関係が調べられています。
解析の結果、
まず、
末期肝臓疾患患者のうち、195名がコーヒーを毎日習慣的に摂取しており、
184名は摂取していませんでした。
生存期間は、コーヒー非摂取群では、摂取群に比べて、有意に短かったということです(p = 0.041)。
各生存期間は:
コーヒー非摂取群:40.4 ± 4.3 ヶ月, 95% CI: 32.0-48.9
コーヒー摂取群: 54.9 ± 5.5 ヶ月, 95% CI: 44.0-65.7
でした。
また、
サブ解析では、
アルコール性肝障害患者の生存率(p = 0.020)や原発性肝硬変の生存率 (p = 0.017)でも、コーヒー摂取群による有意な延長(改善)が認められました。
一方、
慢性ウイルス性肝炎(p = 0.517)や、その他の疾患(p = 0.652)ではコーヒーの摂取と非摂取による有意差は認められませんでした。
多変量解析の結果、
原発性肝硬変とアルコール性肝障害では、
コーヒーの摂取が独立したリスク因子であることが示されています。
(OR: 1.94; 95% CI: 1.15-3.28; p = 0.013)
その他、MELD-スコアも有意な危険因子です。(OR: 1.13; 95% CI: 1.09-1.17; p = 0.000).
肝移植後の長期生存に関しても、
コーヒーの非摂取群に比べて、
(52.3 ± 3.5 ヶ月, 95% CI: 45.4-59.3; p = 0.001)
コーヒー摂取群での有意な延長が認められました。
(61.8 ± 2.0 ヶ月, 95% CI: 57.9-65.8)
以上のデータから、
コーヒーの習慣的な摂取によるアルコール性肝障害、原発性肝硬変といった末期肝臓疾患の進行抑制作用、肝臓移植後の長期生存の改善が示唆されます。
論文著者らは、
習慣的なコーヒーの摂取が、これらの患者に対して推奨されうる、と考察しています。
これまでの疫学研究によって、コーヒーの摂取による生活習慣病リスクの低下が知られています。
例えば、コーヒーの摂取による2型糖尿病リスク低下、脳卒中リスク低下、うつ病リスク低下、肝がんリスク低下、認知機能の低下抑制などがあります。
コーヒーにはファイトケミカルの1種であるクロロゲン酸が含まれており、抗酸化作用を介した生活習慣病予防効果が示唆されています。
(カフェイン以外のコーヒーの主要な成分として、フェルラ酸(ferulic acid)、カフェ酸(caffeic acid,)、クロロゲン酸(chlorogenic acid)が知られており、いずれも抗酸化作用を示します。これらの中ではクロロゲン酸が比較的多く存在します。)
これまでの疫学研究や臨床試験では、高血圧症の改善、心血管疾患(動脈硬化性疾患)リスクの低減、抗がん作用などが報告されています。
例えば、次のような研究が知られています。
コーヒー摂取による全死亡率と心血管疾患リスク低下効果:メタ解析
コーヒーの摂取と泌尿器のがんの関係@メタ解析
コーヒーの摂取による前立腺がんリスク低下作用@メタ解析
コーヒーによる肝臓がんリスク低下作用
コーヒーの摂取と前立腺がんリスクとの関連
コーヒーの摂取による口腔咽頭がんリスク低下作用
チョコレートとコーヒーの摂取と肝機能の関係@HIV-HCV重複感染者
コーヒーの摂取が女性のうつ病リスクを抑制
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