臨床精神医学の専門ジャーナルに、オメガ3系必須脂肪酸と、うつ病との関連を調べた臨床研究が、米国のグループ(Washington University)から報告されていました。
(J Clin Psychiatry. 2016 Feb;77(2):e138-e143)
うつ病では、赤血球中のオメガ3系必須脂肪酸(EPAとDHA)濃度が低いことが知られています。
(EPAとDHAの体内濃度の指標として、赤血球での値が測定されます。)
うつ病に対する有効性が示されている機能性食品・サプリメントには、
セントジョーンズワートやオメガ3系必須脂肪酸(EPA、DHA)があります。
今回の研究では、
血中のオメガ3系必須脂肪酸のレベルと、うつ病のアウトカムとの関連が検証されました。
具体的には、
DSM-IVにて重症うつ病と診断された被験者122名を対象に、
オメガ3系必須脂肪酸の介入の前後で、
赤血球中のEPA、DHA、オメガ6系アラキドン酸の値が測定されています。
介入は、2005年5月から2008年12月まで、
・1日あたり50mgのセルトラリン(SSRIの1種)+ オメガ3系必須脂肪酸(930 mg EPA/750 mg DHA)の併用投与群
あるいは、
・1日あたり50mgのセルトラリン+ 偽薬投与群
の2群で行われました。
介入の前後で、
赤血球中のオメガ3系必須脂肪酸値およびうつ病の寛解(17-HDRSスコア7以下)の関連が調べられています。
解析の結果、
まず、
オメガ3系必須脂肪酸投与群では、
寛解に達した被験者は、
寛解に至らなかった被験者に比べて、
介入前の赤血球中のEPA+DHA値が有意に高値であり、
(P = .002)
EPA+ DHA:AA比も有意に高値でした。
(P = .003)
一方、
セルトラリン+偽薬投与群では有意な相関は見出されていません。
介入前のEPA(P = .03)とEPA + DHA:AA比(P = .04)は、
実薬群とうつ病のアウトカムとの有意な相関が認められています。
以上のデータから、
重症うつ病患者に対するオメガ3系必須脂肪酸サプリメントの投与では、
EPA高値、EPA + DHA:AA比高値が、介入後のうつ病改善(寛解)と関係すること、
オメガ3系必須脂肪酸サプリメントの投与によるうつ病への好影響が示唆されます。
つまり、
重症うつ病患者のうち、オメガ3系必須脂肪酸が潜在的に不足している場合には、積極的にオメガ3系必須脂肪酸の投与が必要ですし、
重症うつ病患者の中では、
オメガ3系必須脂肪酸が充足しているほうが、
SSRI+オメガ3系必須脂肪酸サプリメント(EPA+DHA)に反応しやすいと考えられます。
EPAや
DHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は、抗炎症作用・動脈硬化予防作用、認知機能改善作用、抗うつ作用など多彩な働きが示されています。
EPAやDHAといったオメガ3系脂肪酸では、抗炎症作用を介した動脈硬化抑制作用による生活習慣病予防効果が知られています。
オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用のメカニズムとして、以前は、オメガ6系との比率からアラキドン酸カスケードへの機序が考えられていました。
現在では、これに加えて、EPAとDHAの代謝物自体に抗炎症作用があることがわかっています。
臨床研究におけるオメガ3系脂肪酸の投与量は、1日あたり数百ミリグラムから4グラム程度です。
また、EPA:DHA=2〜3:1の割合です。
日本人の食事摂取基準では、EPAおよびDHAの摂取量を一グラム/日としています。
EPAもDHAも、どちらも健康維持や疾病予防に重要です。
一般に、
DHAは脳の栄養素、
EPAは血管の栄養素といえるでしょう。
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