臨床栄養学の専門ジャーナル(電子版)に、糖尿病予備軍(糖尿病境界型)において、10グラムのオリーブオイルの摂取により、食後の糖代謝と脂質代謝が改善したという臨床研究が、イタリアのグループ(Sapienza University of Rome)から報告されていました。
(
Clin Nutr. 2016 May 28.)
オリーブオイルは、単価不飽和脂肪酸というだけではなく、最近の研究では、
エクストラヴァージン(バージン)オリーブオイルに含まれるファイトケミカル・ポリフェノールによる優れた機能性を有することが分かってきました。
先行研究では、
健常者において、
エクストラバージンオリーブオイル投与により、
食後血糖の改善作用が示されています。
今回の研究では、
糖尿病予備軍(境界型のうちIFG)を対象に、エクストラバージンオリーブオイルによる糖代謝および脂質代謝への影響が検証されました。
(日本では、境界型=IGTとして、「正常」「境界型」「糖尿病」の3つに分類されます。
欧米では、「境界型」を、空腹時血糖値が高い群(IFG)と、OGTT後に血糖値が高くなるタイプ(IGT)に分けています。)
具体的には、
クロスオーバー法により、
糖尿病予備軍(IFG)患者30名を対象に、
試験食を摂取させ、エクストラバージンオリーブオイル10グラムの併用の有無の2群について、
ランチの摂取前、60分後、120分後に糖代謝および脂質代謝関連指標が測定されました。
解析の結果、
エクストラバージンオリーブオイルと食事との併用群では、
非併用群に比べて、
食後の血糖値の有意な減少、
(p = 0.009)
DPP4活性の有意な減少
(p < 0.001)
インスリン値の有意な上昇、
(p < 0.001)
GLP-1の有意な上昇
(p < 0.001)
が認められたということです。
また、
エクストラバージンオリーブオイルと試験食の併用群では、
非併用群に比べて、
中性脂肪値の有意な減少、
(p = 0.002)
Apo B-48の有意な減少
(p = 0.002)
も見出されています。
なお、
総コレステロール値とHDL値には、両群間での有意差は示されませんでした。
以上のデータから、
糖尿病予備軍(境界型;空腹時血糖値の高いIFG)において、
エクストラバージンオリーブオイル投与による糖代謝および脂質代謝の改善作用が示唆されます。
脂質やタンパク質は、炭水化物と比べて、胃排泄が遅いので、食事の前(食事のとき)に、脂質を併用することで、食後血糖値の上昇は抑制されます。
脂質の中では、機能性を考慮すると、エクストラバージンオリーブオイルがもっとも有用性のエビデンスが豊富です。
今回の研究では、脂質としてのオリーブオイルの作用に加えて、オリーブ由来(ポリ)フェノール類によるシナジーも想定されます。
近年の研究では、
単なるオリーブオイルではなく、
オリーブ由来のポリフェノールが豊富なエクストラバージンオリーブオイルのほうが、優れた機能性を有することが分かってきました。
ただし、日本では、JAS基準のオリーブオイルが出回っており、エクストラバージンオリーブオイルの品質が国際基準と比べて、高くありません。
エクストラバージンオリーブオイルの基準は、
IOC(国際オリーブ協会)では酸度0.8%以下、
JASの基準では酸度が2%未満です。
DHCのエクストラバージンオリーブオイルは、
酸度はわずか0.2%以下となっています。
地中海食は、スペインやギリシャ、南フランスなど地中海地方の伝統食です。
野菜や果物、全粒の穀類、種実類、オリーブオイルの利用が多いという特徴があります。
地中海食は、健康増進や疾病予防に有用であることが知られており、多くの研究によってエビデンスが示されています。
地中海食やオリーブオイルの効能については、多くのエビデンスが報告されています。
地中海食で死亡率が半減する
低炭水化物(糖質制限)食と地中海食は低脂肪食よりも有効
オリーブオイルの摂取10gで全死亡率が7%低下
地中海食がメタボを抑制
バージンオリーブオイルとナッツ類を含む地中海食の抗炎症作用
バージンオリーブオイルの心臓病予防作用
オリーブオイルによる皮膚の老化抑制作用
地中海食による認知症予防効果
地中海食+CoQ10サプリによる抗酸化作用
超低炭水化物・地中海食による減量効果
地中海食による高尿酸血症リスクの低下
オリーブオイルによる動脈硬化抑制作用
バージンオリーブオイルによる骨代謝改善作用
オリーブオイルとナッツによる心血管リスク低下作用
伝統的地中海食による脂質代謝改善作用
オリーブオイルによる膀胱がんリスク低下
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