コエンザイムQ10による糖代謝への影響を調べた系統的レビューとメタ解析が報告されていました。
(
Arch Iran Med. 2016 Aug;19(8):588-96.)
これまでにいくつかの研究により、コエンザイムQ10の摂取と、糖代謝マーカーとの関連が調べられていますが、一致した結論は得られていませんでした。
そこで、今回の研究では、
コエンザイムQ10サプリメントによる糖尿病関連マーカーへの影響について、系統的レビューとメタ解析が行われています。
具体的には、
主要医学データベースを用いて、
(Pubmed, EMBASE, Science direct, ISI web of science, Google Scholar)
1989年から2016年3月までのランダム化比較試験(RCT)により、
空腹時血糖値、インスリン値、HbA1cを示した研究が検索され、18報が抽出されました。
14報を対象にした予備的なメタ解析の結果、
コエンザイムQ10サプリメント投与により、
空腹時血糖値の軽度な、しかし、有意な低下が認められたということです。
(SMD:-0.28 mg/d; 95% CI: -0.12, 0.04)
ただし、研究間の不均一性も顕著に認められています。
(Cochrane Q test, I2 = 93.9%, P < 0.0001)
次に、
研究の不均一性を取り除くために、3報を解析から除外して解析した結果、
コエンザイムQ10投与による空腹時血糖値の低下作用がやや小さくなっています(有意差あり)。
(SMD: -0.20 mg/dL, 95% CI: -0.38, -0.02)
なお、
コエンザイムQ10は、HbA1cや空腹時インスリン値には有意な作用は示しませんでした。
HbA1c; -0.05% (95% CI: -0.22, 0.12)
インスリン値;0.12 pmol/L (95% CI: -0.21, 0.44)
以上のデータから、
コエンザイムQ10サプリメント投与により、空腹時血糖値の有意な低下作用が示唆されるものの、
インスリン値とHbA1cには有意な変化はないことから、さらに質の高い研究が必要と考えられます。
今後、臨床的意義の検証が期待される分野です。
コエンザイムQ10投与によって、直接、血糖値が改善するということは考えにくいと思います。
一方、コエンザイムQ10は、ベーシックサプリメントとして、壮年期以降には摂取が推奨されます。
加齢により、内在性のコエンザイムQ10が低下し、それとともに生活習慣病などが増えていきます。
また、同年代(たとえば、60歳前後)で比較すると、健常者に比べて、2型糖尿病患者では、ATP産生能が半減していることが示されています。↓
そのため、2型糖尿病の場合には、(血糖値に直接、影響を与えて改善することはないので、医薬品との相互作用は考えにくいでしょう)、コエンザイムQ10をベーシックサプリメントとして摂取することが必要と考えます。
コエンザイムQ10は、抗酸化作用やATP産生作用を有する機能性成分で、体内でも産生されます。
しかし、加齢とともに内在性コエンザイムQ10は減少し、生活習慣病や慢性疾患でも低下がみられることから、アンチエイジング分野で広く摂取が推奨されているベーシックサプリメントです。
健康な人や未病の状態では、1日あたり90mg〜110mg程度をベーシックサプリメントとして毎日摂取します。
一方、何らかの疾患があり、補完療法として用いる場合には、1日あたり100mg〜300mg程度の利用になります。
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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