医学博士　蒲原聖可ブログ

シャンピニオンとは，西洋マッシュルームの一種で，ハラタケ科に属する食用キノコです。

和名はツクリタケあるいはセイヨウマツタケ，英名はmushroomで，シャンピニオンchampignonとは仏語の名称です。

学名をアガリクス・ビスポラスAgaricus bisporusといいます。



機能性食品素材としては，このアガリクス・ビスポラスの他，アガリクス・ブラゼイ・ムリルAgaricus blazei Murrill（カワリハラタケ）も利用されています（訴求は異なります）。



シャンピニオン抽出物（エキス）には，腸内細菌叢を改善し，腸内異常発酵を抑制することで，体臭や便臭を抑える働きが示唆されており，消臭効果をもつ機能性食品としてもちいられるようになりました。

有効成分として，各種アミノ酸，フラボノイド類，セミヘルロース等の多糖類，エルゴステロール等の脂質，ビタミンやミネラルが存在します。


シャンピニオンは，腸内細菌叢において，善玉菌を増やし悪玉菌を減らす作用があります。


消臭効果のメカニズムとして，腸内および血液中のタンパク質分解由来有害物質であるアンモニア，メルカプタン，インドール，硫化水素，アミン類を中和したり捕捉したりする作用が考えられます。

これまでに報告された働きとして，抗酸化作用，抗アレルギー作用，痛風改善作用，腸内細菌叢の改善による胃腸症状の軽減作用，免疫賦活作用，慢性腎不全の進行抑制作用等があります。


臨床研究では，次のような報告が知られています。


まず，消臭作用を検証した予備的な臨床研究では，老人保健施設の患者32名を対象に，１日あたり67mgのシャンピニオンエキスを10日間投与したところ，便臭および便通の改善効果が認められたということです。


次に，口臭に対する効果を検討した臨床研究によると，若年女性を対象に，生ニンニク摂取後の口臭を測定した結果，シャンピニオン熱水抽出物の併用によって口臭が減少したと報告されています。



さらに，慢性腎不全に対する効果を検証した試験では，低タンパク食を実行し，血圧が調節されている保存期腎不全患者16名を対象にして，１日あたり２〜４gのシャンピニオンエキスを４〜17カ月間投与したところ，半数の例で，有意な慢性腎不全の進行抑制効果が認められました。

この作用機序の詳細は不明ですが，シャンピニオンが，腸内環境を改善し，臭気物質産生量を減少させることが関係していると推測されています。



その他，本邦では，シャンピニオンエキスを主な有効成分とする製品（シャンピニオンゼリー）が，厚労省による「特別用途食品」として認可されており，「水分を補給する際，そしゃく・嚥下が困難な方に適した食品です」といった表示例があります。


広く食用に利用され，豊富な食経験に基づく成分であることから，適正使用における許容性は高いと考えられます。

なお，基礎研究や質の高い臨床試験はまだ十分ではなく，今後の研究成果が期待されます。



本邦の食薬区分では，「セイヨウマツタケ（別名シャンピニオン，ツクリタケ）」は「子実体」が「非医薬品（医薬品的効能効果を標榜しない限り医薬品と判断しない成分本質）」とされています。



文献

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・Carrizo ME, et al. The antineoplastic lectin of the common edible mushroom (Agaricus bisporus) has two binding sites, each specific for a different configuration at a single epimeric hydroxyl. J Biol Chem 2005; 280: 10614-23.
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