サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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リンゴポリフェノールの胃粘膜保護作用 [2008年11月30日(日)]
栄養学の専門誌に,リンゴポリフェノールによる胃粘膜保護作用を示した基礎研究がイタリアのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Dec;100(6):1228-36.)


医薬品として広く利用されているアスピリンでは,胃腸障害などの副作用が知られています。

一方,機能性食品素材の中には,胃粘膜保護作用を有し,胃腸障害を抑制する働きを示す成分があります。


今回の研究では,ラット胃粘膜におけるアスピリン誘導性障害に対するリンゴポリフェノールの効果が調べられています。


アスピリン経口投与前にリンゴポリフェノールを投与し,COX2などの炎症関連マーカーが測定された結果,COX2 遺伝子やHB-EGF遺伝子の発現増加,胃粘膜障害が有意に抑制されたということです。

このとき,組織学的所見では,障害面積の50%減少が認められています(p<0.05)。


なお,リンゴポリフェノールは,胃酸分泌に対しては特に有意な影響を与えていません。



以上のデータから,リンゴポリフェノールは,抗炎症作用を持つ細胞内分子を誘導することで,胃酸分泌を変えることなくアスピリン誘導性胃粘膜障害を抑制することが示唆されます。
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乳がんとコエンザイムQ10 [2008年11月29日(土)]
栄養学の専門ジャーナルに,乳がん治療にコエンザイムQ10とビタミンB群を併用した予備的な臨床研究が報告されていました。
(Br J Nutr., 100;06, (Dec) 2008, p 1179-1182)


今回の研究では,乳がん患者48名を対象に,乳がん治療薬のタモキシフェン(10mg×2/日)に加えて,一日あたり100mgのコエンザイムQ10,10mgのリボフラビン(ビタミンB2),50mgのナイアシン(ビタミンB3)を併用投与するランダム化比較試験が行われています。

その結果,サプリメント併用群では,乳がん未治療群やタモキシフェン単独投与群に比べて,poly(ADP-ribose) polymerase値の有意な増加および,RASSF1A DNAのメチル化の消失が認められたということです。

(なお,前者はDNA損傷に対する修復活性の亢進を示唆し,後者は予後因子の一つです。)


以上のデータから,コエンザイムQ10とビタミンB群の併用は,タモキシフェン投与時の補完療法となることが示唆されます。

今後,更なる検証が期待される分野です。
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紅景天による抗ストレス・抗疲労作用 [2008年11月28日(金)]
生薬学の専門誌に,紅景天による抗ストレス作用・抗疲労作用を示したヒト臨床研究が,スウェーデンのグループから報告されていました。
(Planta Med. 2008 Nov 18. PMID: 19016404)



紅景天(ロディオラ・ロゼアRhodiola rosea)とは,アジアから欧州,北米にかけての高地にみられるベンケイソウ科のハーブです。

アダプトゲンとして知られている他,紅景天による抗ストレス作用や抗疲労作用,抗うつ作用,認知機能の改善作用等が注目され,欧米において研究が進められています。



さて,今回の研究では,ストレスに伴う疲労に対する紅景天の効果を検討する目的で,20歳から55歳までの男女60名を対象に,1日あたり576mgの紅景天抽出物,あるいは偽薬が4週間投与されました。


QOL(SF-36 questionnaire)や疲労感(Pines' burnout scale),認知機能などに関する指標が測定された結果,紅景天の摂取による抗疲労作用が認められています。

なお,この試験において,特に問題となる副作用は認められていません。


これまでの予備的な臨床研究でも,紅景天による抗ストレス作用・抗疲労作用が報告されており,今回のデータはそれを裏付けたものです。


DHCでは,「紅景天」を製品化しています。
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キャッツクローの有効成分 [2008年11月27日(木)]
構造分析の専門誌に,キャッツクローの有効成分に関する基礎研究が,ポーランドのグループから発表されていました。
(Solid State Nucl Magn Reson. 2008 PMID: 19019638.)



キャッツクローは,南米ペルー原産のハーブで,有効成分として各種のアルカロイド類を含みます。

これまでの臨床研究では,変形性関節症や関節炎での疼痛軽減作用が示されてきました。



今回の研究では,有効成分であるアルカロイド類について,NMRによる解析が行われた結果,ミトラフィリンmitraphylline, イソミトラフィリンisomitraphylline, テロポディンpteropodine (uncarine C), イソテロポディンisopteropodine (uncarine E), speciophylline (uncarine D), リンコフィリンrhynchophylline,イソリンコフィリンisorhynchophyllineが同定され,構造解析が行われています。


これらのアルカロイド類は,抗炎症作用や免疫調節作用を介して,関節リウマチや変形性関節症の症状緩和に効果を示します。


今後,補完医療としてのキャッツクローの有用性について,臨床的意義の検討が期待されます。
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赤ガウクルアの作用 [2008年11月26日(水)]
生薬学の専門ジャーナルに,タイのハーブ・赤ガウクルアの作用を検討した基礎研究が報告されていました。
(J Ethnopharmacol. 2008 Nov 1. PMID: 19010408)


タイのハーブでは,女性ホルモンようの作用を持つプエラリア・ミリフィカがよく知られており,女性の美容と健康のために広く利用されています。

プエラリア・ミリフィカは学名であり,現地では白ガウクルアと呼ばれます。

タイにてガウクルア(グァウクルア)と呼ばれるハーブとして,白ガウクルア(学名Pueraria mirifica)の他,赤ガウクルア(学名Butea superba)があります。

赤ガウクルアは,アンドロゲン作用および抗エストロゲン作用を有するとされ,一般に,男性の強壮目的で利用されることが多いようです。



さて,今回の研究では,正常および閉経モデル雌ラットを対象に,赤ガウクルア根抽出物,あるいはテストステロンが投与され,子宮などの臓器に対する影響が測定された結果,子宮内膜厚の増加,黄体形成ホルモンの増加といった作用が認められたということです。


論文著者らは,赤ガウクルアの経口投与によるアンドロゲン作用および抗エストロゲン作用が示唆される,と考察しています。


なお,赤ガウクルアは,アダプトゲンの1種であり,シルデナフィルのような作用はないと思います。
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レッドオレンジによる抗酸化作用 [2008年11月25日(火)]
今月の生薬学の専門誌に,レッドオレンジ抽出物による抗酸化作用を示したヒト臨床研究がイタリアのグループから発表されていました。
(Nat Prod Res. 2008 Nov;22(17):1544-1551.)



被験者は交通整理担当の警察官で,大気中の汚染物資によって生じる酸化ストレスにさらされていると考えられます。


標準化されたレッドオレンジ抽出物を1ヶ月間投与したところ,非喫煙者群における過酸化脂質の低下(改善),低チオール値を示した群における正常化といった効果(抗酸化作用)が認められたということです。


ファイトケミカル類による抗酸化作用をヒト臨床研究において示唆したという点で意義のある研究と考えられます。
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ビタミンCの摂取量 [2008年11月24日(月)]
ビタミンCは,抗酸化ビタミンの代表であり,保健効果を期待して多めに摂取されることが多いサプリメント成分の一つです。


日本では特に摂取上限は定められていませんが,多く摂ることで軟便や下痢を生じる場合もあります。


(一応の目安として,1日あたり2グラムを超えると,これらの症状を生じることがあるとされています。ただし,個人差があります。)



では,どのくらいの摂取が適切なのでしょうか?


現在,少量(数百r程度)から開始したビタミンCの摂取量を漸増し,消化器系症状が生じた時の摂取量が,その個人にとっての(通常時における)最大の摂取目安量という考え方があります。


臨床研究で検証されたわけではありませんが,血中・組織中の濃度が飽和した時点で,余分なビタミンCが排泄されることを考えると,一つの目安になると考えられます。
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ラホヤ vs. アルバカーキー [2008年11月23日(日)]
スクリプス研究所でのカンファレンスの期間中,私の両隣にすわっていたMDは,対照的な雰囲気でした。


まず,右隣はラホヤでの開業医です。

ラホヤは,リゾートとして人気がある他,医学生物学系の研究機関も数多くあり,閑静な住宅街でもあります。

温厚で古き良き時代のアメリカを連想させる感じのMDでした。



一方,左隣はアルバカーキー(NM)からきたMDです。

アルバカーキーには,一度,統合医療/代替医療のカンファレンスのために訪れたことがあります。先住民やメキシコ系住民の影響を受けた土地で,カンファレンスのテーマにもスピリチュアル系のCAMが取り上げられていました。

初日,お互いに自己紹介をした際,アルバカーキーから来たといわれて,納得してしまう風貌のMDでした。


(なお,科学的根拠があるわけではなく,単なる私の偏見です。笑)


2人とも専門は家庭医学ということでしたが,外見から話した感じまで,まったく対照的なMDでした。
posted at 23:58 | この記事のURL
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紅麹とスタチン [2008年11月22日(土)]
今週は、スクリプス研究所でのカンファレンスに参加していました。

質疑応答の中で、「紅麹とスタチンは同一なのに、なぜ区別して議論しているのか?」という質問がフロアのMDからありました。


紅麹は、コレステロール合成を抑制することで、高コレステロール血症を改善する作用を持ちます。

東アジアでは食紅として長く利用されてきており、豊富な食経験に基づく安全性が確立されています。


紅麹には、モナコリン類が存在し、高コレステロール血症に対する効果を示します。

近年の多くの臨床研究において、有効性が示されてきました。


さて、前述のMDからの質問は、紅麹に含まれているのはスタチン系のロバスタチンであり、有効性と安全性についての議論は同じであるべきでは、というものです。

ロバスタチンは紅麹の成分の一つであるモナコリンKと同一です。


モナコリンKは主要成分ですが、紅麹にはそれ以外のモナコリン類が存在し、シナジーによる作用を示します。

そのため、スタチン系に付随する有害事象(例えば横紋筋融解症など)は、理論的には紅麹にも共通すると考えられます。

しかし、実際のアウトカムでは、有害事象が少ないことが示唆されています。


これは、モナコリン類(およびそれ以外の成分)によるシナジーによって、有効性と安全性のバランスが保たれると推察されます。

今後、詳細な分子メカニズムの解明が期待される分野です。
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遠隔ヒーリングについてのレビュー [2008年11月21日(金)]
補完代替医療の中には、アウトカムにおいて有効性が示唆されても、作用機序が明確ではなく、科学的評価法も確立していない方法が少なくありません。


このような補完代替医療の代表として、遠隔ヒーリング("distant healing")があげられます。

遠隔ヒーリングには、祈り、スピリチュアル・ヒーリングなどが含まれます。



遠隔ヒーリングに関するレビューによると、合計2,774名の患者を含む23報を解析した結果、13報(57%)において治療による有意な改善作用が示されています。

(なお、23報の内訳は、ヒーリングに対する介入としての祈り5報、非接触ヒーリングタッチ11報、その他の遠隔ヒーリング7報です。)


論文著者ら(Ernst)は、研究方法の限界を指摘しつつ、57%の研究において有意な効果が示されたことから、追加的な研究の推進に値すると述べています。



Ernstらは、補完代替医療についてのレビューを数多く行っています。

そして、それらの解析は、どちらかといえばネガティブなものが多く、仮にfavorableなデータが示唆されても「さらに検討が必要である」という結論になっています。

(この傾向は、コクランでも同じです。関係性を重視し、個別化医療である統合医療からするとあまり意味をなさないと感じています。)


この遠隔ヒーリングに対する結論は、珍しく前向きな評価という印象でした。
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愛とサポートと心臓病リスクの関係 [2008年11月20日(木)]
人との関係性と疾患リスクの相関に関するデータの調べ物の続きです。


社会性と心臓病リスクとの関係を示した研究が、心身医学の専門誌に報告されています。
(Psychosom Med. 1987;49:341-54.)


それによると、狭心症を有する男女159名を対象に、社会的な関係性におけるサポートの有無を調査した結果、自分が「サポートされている」「愛されている」と感じているグループにおいて、心血管疾患のリスクが最も低かったということです。


(研究では、冠状動脈疾患についてカテーテル検査による評価が行われています。
また、年齢、性別、喫煙歴、脂質異常症といった心臓疾患の危険因子について、データの補正が行われています。)


他の人から「サポートされている」「愛されている」という項目は、冠状動脈のリスク低減に取り上げられることは少ないと思いますが、心身相関の点からは重要な予防因子になると考えられます。


(もちろん、「サポートされている」「愛されている」という人では、他の人へも同様に接していることが推察されます。)
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両親との関係性と病気のリスク [2008年11月19日(水)]
人との関係性と健康状態の関連を示した研究では、ハーバード大学の学生を35年間フォローした「The Harvard Mastery of Stress Study」がよく知られています。
(J Behav Med. 1997;20:1-13.)


1952年から54年の男子学生126名を対象に、35年間フォローし、有意な疾患(がん、心臓病、アルコール依存症、高血圧、消化性潰瘍など)の発生をアウトカムとして、対象者と両親との関係性での相関を調べた研究です。


その結果、まず、母親との関係性について、健康上の問題を有していた被験者の割合は、関係が緊張した・こじれたという被験者では91%、関係が良好であったという被験者では45%でした。


次に、父親との関係について、緊張していたという被験者では82%、良好であったという被験者では50%が、健康上の問題を生じています。


両親との関係が緊張していた場合には100%の有病率であったのに対して、両親との関係が良好であった被験者では47%の有病率でした。



一般に、健康上のリスクについて、遺伝や環境、栄養と運動、あるいは心身相関といった個人レベルでの研究データが多いですが、人との関係性も個人の疾病リスクに有意な影響を与えることが知られています。
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心臓病のリスクを高くする結婚 [2008年11月18日(火)]
昨日のブログのデータとは逆に、結婚が心臓病のリスクを上げるというデータを示した研究もあります。
(Arch Intern Med. 2007;167:1951-7.)


イギリスの9,011名(男性6,114名、女性2,897名)を対象に12年間フォローアップを行った結果、ハッピーではない結婚(配偶者との関係がうまくいっていない結婚)は、性別にかかわらず、心血管イベントのリスクを34%上げるということです。


近しい人間関係におけるネガティブな関係性が病気のリスクを高めるというデータです。
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結婚と心臓死の関係 [2008年11月17日(月)]
関係性と疾患の相関について調べていたところ、結婚と心臓疾患の予後との関連を調べた研究がみつかりました。
(JAMA. 1992;267:520-4.)


心臓の冠動脈疾患の予後と社会生活との関係を調べる目的で、米国にて行われた研究です。


心臓カテーテル検査後の1,368名の男女(82%は男性)を対象に転帰を調べた結果、未婚者あるいは(恋愛において)信頼できる人がいない場合は、既婚者に比べて、5年間の死亡リスクが3倍に達したということです。

(なお、研究では、その他のSESも交絡因子として検討されています。)



人との関係性が疾患の予後に有意な影響を与えることを示した、興味深いデータです。
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リンゴによる抗がん作用 [2008年11月16日(日)]
生薬学の専門ジャーナルに、リンゴ(Malus sp.)の抗がん作用に関する総説が発表されていました。
(Planta Med. 2008;74:1608-24.)



リンゴにはポリフェノールやファイトケミカル類が含まれていることから、機能性食品素材として注目されています。


特に、ヒドロキシケイ皮酸, ジヒドロカルコン、ケルセチン、カテキン、プロシアニジンといったファイトケミカルが知られています。

また、リンゴの赤色色素にはアントシアニン類が存在します。


これまでの研究によって、リンゴおよびリンゴ製品は、多彩な健康増進作用を有することが示されてきました。


具体的には、心血管疾患、喘息、肺機能障害、糖尿病、肥満、がん等といった疾患に対する作用です。


今回の総説では、リンゴ抽出物による抗がん作用についての解析が行われており、オリゴメリック・プロシアニジン(oligomeric procyanidin、OPCs)による作用機序が基礎研究において示されていると述べられています。

OPCによる抗腫瘍作用、抗酸化作用、抗炎症作用、情報伝達機構に対する調節作用、アポトーシス誘導作用がメカニズムとして考察されています。


動物実験では、リンゴ製品による皮膚がん、乳腺がん、大腸がんの予防作用が示されてきました。


また、疫学研究では、1日あたり1個以上のリンゴの摂取によって、肺がんと大腸がんのリスクが低下するという相関が認められています。



リンゴの効果を得るためには、果物としての摂取の他、リンゴポリフェノールを含むサプリメントの利用もできます。
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Omics研究についての記事 [2008年11月15日(土)]
先日、『モダンフィジシャン』という内科系総合誌の08年11月号が送られてきました。


この号では、特集「いま、知っておきたい統合医療」として、統合医療の理念から主要な代替医療の各論に至るまで、各分野の担当者が寄稿しています。


私は、「統合医療におけるOmics研究」と題した論文を寄せました。
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フラボノイド類の摂取と体重の関係 [2008年11月14日(金)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、フラボノイド類の摂取が多いとBMIの増加が抑制されるという調査研究が、オランダのグループから発表されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 1341-1352.)



フラボノイド類は、植物に含まれる抗酸化成分であり、これまでの研究によって抗肥満作用が示唆されています。



今回の研究では、前向き調査によって、フラボノイドの摂取とBMI(体格指数)との関連が調べられました。


具体的には、1986年の時点で55歳から69歳の男女4,280名を対象に、3種類のフラボノイド類(フラボノール、フラボン、カテキン)の摂取と、14年間にわたるBMIの変化との関係が解析されています。


各種の交絡因子で補正後、女性では、フラボノイド類の摂取が最も少ない群(4分位)においてBMIが0.95(フラボノール/フラボン)、0.77(カテキン)、それぞれ増加したのに対して、摂取量が最も多い群では、BMIの増加率が有意に低く、0.40(フラボノール/フラボン)と0.31(カテキン)ということです。
(両群間での差:p<0.05)


一方、男性ではフラボノイド類の摂取とBMIとの間に有意な相関は示されていません。



以上のデータから、フラボノイド類の摂取は、女性における体重増加抑制に効果があると示唆されます。



フラボノイド類は、多くの植物性食品に含まれており、バランスのとれた食生活で摂取することができます。

サプリメントでは、カテキンなどが製品化されている他、ビタミンP(フラボノイド類)として成分に含まれている製品があります。
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グルコマンナンの働き [2008年11月13日(木)]
栄養学の専門誌に、グルコマンナンによる体重や脂質代謝・糖代謝への影響を解析した総説が米国のグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 1167-1175.)


グルコマンナンは、水溶性食物繊維の1種で、コンニャクなどに含まれています。

これまでの研究によって、グルコマンナンの摂取は、脂質代謝や糖代謝、血圧、体重に影響を及ぼすことが示唆されてきました。



今回の総説では、2007年11月までに報告された14報(n=531)を検討した結果、グルコマンナン摂取によって、

・総コレステロール値の有意な低下(-19.28 mg/dL)、

・LDLコレステロール値の有意な低下(-15.99 mg/dL)、

・中性脂肪値の有意な低下(-11.08 mg/dL)、

・体重の有意な低下(-0.79 kg)、

・空腹時血糖の有意な低下(-7.44 mg/dL)

が認められたということです。



これら以外の指標(HDL値や血圧)について、グルコマンナン摂取による変化は認められていません。


また、小児の患者、食事指導を受けている患者、耐糖能異常を有する患者では、グルコマンナンの摂取による改善作用はより小さいという結果でした。


この総説から、グルコマンナンによる脂質代謝や糖代謝への改善作用が示唆されます。



DHCでは、コンニャクを含む食品として米こんにゃく、こんにゃくチップス(オニオン味チョコ味チリペッパー味)を製品化しています。
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炭水化物の種類と加齢黄斑変性症のリスク [2008年11月12日(水)]
昨日に続いて、炭水化物の摂取と疾患との関係に関するデータです。


栄養学の専門ジャーナルに、グリセミックインデックス(GI)と加齢黄斑変性症との関係を検討した疫学研究が報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 1104-1110.)


加齢黄斑変性症は、高齢者における視力障害の原因となる疾患です。

発症には食事性の因子も関与すると考えられ、単純炭水化物の摂取(あるいは高GI食の摂取)が候補の一つという説があります。


そこで、今回の研究では、グリセミックインデックスと加齢黄斑変性症発症との関連を検討する目的で、49歳以上の被験者3,654名を対象に調査が行われました。


5年後のフォローアップでは2,335名、10年後には1,952名のデータが解析されています。

10年以上の累積調査の結果、1,810名のうち、208名が初期の加齢黄斑変性症と診断されました。


各種の交絡因子で補正後、高GI食の摂取と加齢黄斑変性症との間には有意な相関が認められたということです。

(4分位での上位と下位の比較では77%のリスク上昇が示されました。)


一方、シリアルやオートミールの摂取と加齢黄斑変性症との間には負の相関が認められています。

(32%のリスク低下というデータです。)

(シリアルなどは高食物繊維食であり、低GI食とされています。)


なお、進行した加齢黄斑変性症では、GIとの間に有意な関連は示されていません。



以上のデータから、単純炭水化物の多い高GI食は、加齢黄斑変性症の発症リスクをあげると考えられます。


ところで、加齢黄斑変性症を予防する機能性食品成分としては、ルテインなどのカロテノイド類がよく知られており、サプリメントとしても広く利用されています。
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炭水化物の摂取と大腸がんの関係 [2008年11月11日(火)]
栄養学の専門誌に、炭水化物の摂取と大腸がんとの関係を示した疫学研究が、米国のグループから発表されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 1074-1082)



高グリセミックロード(GL)食の摂取は、高インスリン血症を介して、大腸がんのリスクを高めることが考えられます。

(一般に、単純炭水化物の多い食事が高GL食になります。)


そこで、今回の研究では、グリセミックロードと大腸がんのリスクとの関係を調べる目的で、191,004名を対象に、8年間のフォローアップが行われました


2,379例の大腸がん(大腸腺がん)が見出され、グリセミックロード、炭水化物、ショ糖の摂取との関連が調べられた結果、女性において、GLが高値になるほど大腸がんのリスクが低下するという相関が認められました。

(高GL群は低GL群に比べて25%の低下。P for trend =0.02)

(なお、高GL値への関与因子として、白米が大きいということです。)


一方、男性では、GLと大腸がんリスクとの相関は認められていません。


炭水化物およびショ糖と大腸がんリスクとの関連も類似した結果となっています。



この研究では、女性におけるGL値と大腸がんリスクとの負の相関関係は、すべての人種グループにおいて認められています。


以上のデータから、高GL値および炭水化物の摂取は、女性における大腸がんリスクを低下させることが示唆されます。


なお、これまでの研究では、炭水化物の摂取と大腸がんリスクは無関係であるというデータや、炭水化物の摂取が少ないほうが、がんリスクを低減できるというデータが多いと思います。


今回は、一般的な説とは逆のデータになっていますので、今後の検証が必要と考えられます。
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