わたしたちのNGOはメンバーの貧困克服を目標の一つに挙げています。NGO結成から1年、少しずつメンバーの暮らしぶりも向上しています。その中の一人、デイビッドさんの例を紹介します。
デイビッドは54歳。奥さんも子供もいますが、10数年前に郵便局を解雇されたあと、例のごとく奥さんに逃げられ、子どもの学費にも事欠くようになって、銀行から借金をしました。1万シリング(約1万円)ほど借り、少しずつ返したものの、1万シリングほど返したところで、その利子返済に追われ、しまいには警官を雇って、銀行が利子取り立てに来るようになりました。家の差し押さえを迫られ、家にいられなくなりあちこちと逃げ回っていましたが、ある時、川で毒を飲んで身を投げて死ぬところまで追いつめられました。
その時はうちのNGOのメンバーになっていましたが、その噂を聞きつけ、どうにか助けたいということを私たちが言っているとほかのメンバーに伝えてもらい、残りの借金を肩代わりしました。しかしそのままお金をあげると、ほかのメンバーにとってジェラスのもとになり、依存体質を助長すると思い、その分うちで働いてもらうことにしました。彼は毎日借りたお金と働いたお金を
ノートにつけて、それが減るまで一生懸命午前中、働きました。4カ月働いた後、私たちからの借金も0になり、本当に晴れ晴れとした顔で、これからは2度と借金はしないそして一生懸命今まで以上に働くと誓いました。
それからはNGOの店番をしたり、引き続きうちの畑で働いたり、とれた作物を行商して歩いたり、一生けんめい働きました。夕食は10シリングのうちで売っているパンと
ミルクティーのみ、しかし少しずつお金が入ると、もう大きくなっている子供の手助けをしたりして、-手持ちのお金がプラスになり始めました。そして、まず第一目標の携帯を買うことができました。
次の目標として、鶏を少しずつ買いたして、養鶏を始めました、鶏小屋は竹を利用した手作り。餌も餌代がかさまないよう工夫して、今では鶏を9羽飼っています。そして産んだ卵を売り始めました。私たちは初めて生んだ彼の鶏の卵を食べました。地鶏の生んだおいしい卵です。今では卵までメンバーのところで採れたものを食べれるので、私たちも満足です。
ケニア人は日本人に比べてなかなか働かない人が多いのですが、彼は本当に一生懸命働いて、そして短期間に借金生活から脱却し、次々と目標を達成しています。次の目標は鳥で儲けたお金で豚を飼うことだそうです。農民たちの夢がかなうのを見ることこそが喜びです。