淳之介の背中
吉行文枝/著
発行年月:2004年6月
吉行淳之介の妻。
結婚して、長女が生まれてすぐに夫は別の女性の元へ。
世間も妻の存在を殆ど知らず、彼女自身もずっと沈黙し続けてきたが、淳之介没後10年を経て、出会って一緒に暮らした時間(15年間)の事を、思い出しながら綴った本
世間では、周知の事実。
淳之介さんは、宮城まり子さんの元へ幼い娘と妻を置いて向かい、実質的な妻は、宮城まり子さん。
そんな状況の中、妻の立場としたら、宮城さんは憎んでも良い人。
心の中では、そういう気持ちもあったと思いますが、その辺の事は一切触れていません。
ただ、淳之介さんの妻として生き、これからもそれは変わらないと世間に伝えているような感じです。
宮城さんの事は、「あじさいの人」という表現で出てはきますが・・・。
先日、「ねむの木子ども美術館」と「吉行淳之介文学館」を訪ねたとき、長女が「本当の奥さんはどういう気持ちなんだろうね〜」とポツリとつぶやいた事で、わたしも同様の事を思い、本書を見つけて読んでみたのですが、最後まで離婚という形を取らずにいたのは、意地というより、それだけ淳之介さんを愛していたからこそかな〜?
そうすると、淳之介さんという人に少し、腹が立ってきたりして・・・。
宮城さんの元に行っても、文枝さんの誕生日には忘れず、バラの花を贈る人だったそう。
いっそ、きっちり切ってあげたら、文枝さんには、違った人生もあったかも。
自分の元を去っても、そして亡くなった今もただ一人の男性を思い続けるなんて、切ないです。
なんて、わたしが勝手に思うだけで、文枝さんは、こうする事を望んで選んだのかもしれません。
出来事を淡々と、昔の写真を幾つか交えながら綴っていて、懐古録として読めば微笑ましいです。
淳之介さんのこと
宮城まり子/著
発行年月:2003年4月
出会った時には、奥さんも子どもさんもいた作家、吉行淳之介と恋に落ちた。
一日も会わずにいられないほどの激しい思い。
やがて、一緒に暮らすようになり、癌を告知された淳之介のそばに寄り添い、最期を看取った37年間の恋の記録
先に「淳之介の背中」を読んでいたので、わたしの中では、文枝さん寄りのやや宮城さんを敵対視した気持ちのまま読み始めました。
でも、途中で、この恋も本気なんだ。すごいなぁ〜と思ってしまいました。
奥さんのことは、あまり書かれていませんが、幼い娘さんを残して来ている事に対しては、気にかかっていたみたい。
成人した娘さんが突然、二人の暮らす家で一緒に暮らすようになったとき、初めて、自分の前で見せる淳之介さんの顔が娘さんの前では違うことをみてショックを受ける部分は、切ないものもありました。
そして、癌を告知されてからは、自身も忙しい身(既にねむの木学園の園長となっていた)の中で、出来る限り、そばにいようと献身的に接する姿は感動しました。
こうして、二人を本を読んでみると、こんな風に真剣に二人の女性に愛された吉行淳之介という人は、どんな人だったんだろ?
なんて、事も考えちゃいます。
という事で、今度は、お母様(あぐりさん)の淳之介さんを偲んで書かれた本と、宮城さんが選んだ淳之介短編集などを借りて来ちゃいました。
お母様は、2007年に100歳を、迎えられたとか。
2005年にお店は閉店したそうですが、90過ぎまで美容師として働いていたことは有名。
NHK連続テレビ小説「あぐり」のモデルでもありますね。