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ほんにゃいコメントだづ
おともだちだづ (15)
風唄 本編10 [2008年06月18日(水)]
自然は変わらず受け入れてくれる。頭上に広がる星々もそうだ。
今正にきらめいていると感じた光も、この地まで辿り着くのまでに何億光年と時間がかかっているらしい。 少し近めの星ならば、300前に光を放って今届いたものもあるだろうか?光と同じ時間を超えた自分。 だとすれば、不思議な気分だ。
 空気が澄んでいて、月と星が良く見える。薄くたなびく雲も、時折月光を僅かに弱める控え目な程度で、却って綺麗だと思う。

 夜に、と北斗は言っていた。彼にとっての夜は一体いつ頃からなのか分からないが、陽が落ちてからは随分経った。
 しかしこの夜の海と無限を感じる空を見ていれば、退屈など感じない。
穏やかな気持ちを颯輝に与えてくれるこの眺望は、紛れもない故郷であった。違う所はひとつだけだ。

 妹がいない。

「昼飯はどうしたんだ?」

 星座の絵を描き始めた颯輝に、後ろから声がかかった。この静寂を壊さない、低い声だ。
星の名を冠した友人とは、やはり似てないかもしれない。
膝を立てて、後ろに両手を付いて空を見上げていた颯輝は更に首を後方に回すと、逆さまに映った北斗を見留めた。
何か、別れた時よりも薄汚れている気がする。

「おー?」
「気が回らなくてすまんかった。何か食べたか?」
「簡易食食べたからだいじょーぶ」
「簡易食?」
「オレら一緒に凍ってたのがあったっぽい」

 マックスはそこで行儀良く前足を揃えて寝ている。さっきまで一緒に星を見ていたと思ったのにいつの間に。
寝相は意外に悪いから、熟睡に入れば、その内腹を出して寝言を言い出すだろう。野生は何処へ、おかしな獣である。

「周到なご先祖様だな」

 鼻で笑うように北斗が言った。大星の話題になると、毎回そんな態度だ。北斗は大星が嫌いなのだろうか?

「なあ、」
「待たせたのは俺だが、今まで何して時間潰してたんだ?」
「あ、うん。街中の店ぶらついたり」

 言い出しはほぼ同時か若干颯輝が先であったというのに、北斗は強引とも言える声のトーンで喋った。
何かあったのだろうか?まだ出会ったばかりの友人だ。颯輝は無理に会話を曲げる事はしなかった。

「そうか。街並みは…やっぱり変わるものか?」
「や、意外にそんな変わってなかったなぁ。オレ、自分浮いてないかヒヤヒヤしたけどそーでもなかったし。
オレよりマックスが目立ってた」
「まあ…そんな生き物滅多に見かけないしな」

 生き物の腹は白く、細く速く大地を蹴る足は今、宙を力無く泳いでいる。
閉じていたと思われた口元は、ゆっくり半開きになり、ムニャムニャと口周りを舐めた後また閉じられた。

「あ、外も少し散歩してきたぞ」
「旅立ち予行練習、ってところか」
「まーな。一匹、なんかと戦ってきた」
「なんか…まさか、魔物…?」
「うん!」

 北斗の口元は何とか笑みを刻んでいるものの、その顔は嫌悪でいっぱいだ。

「まぁ…旅には避けて通れない相手…だろうしな」

 ぶつぶつと何か言っている。マックスと2人、武器を持たない状態でも何とか勝利を収めることができたのだ。
魔物の数は多くなったのだろうが、強さの問題はないだろう。

「怖いのか?」
「まさか」
「ほんとかなぁ〜」
「馬鹿にするなよ」

 颯輝の目には、嫌悪の顔がなくなって鼻で笑う彼の姿が強がりではないように映った。

「んで、そっちは?」

 ああ、と北斗は傍らに置いていた幾つかの書物に手を伸ばす。古いのが一目瞭然だ。紙は完全に変色して、茶色く端が擦り切れている。
それを別段貴重品を触るふうな様子もなく、パラパラとページを撫でる。

「時間はかかったが幾つか見つけることはできた。家系図……は見ても別に面白くもなかった。見なくていい。神話の…ここだな。序章」

 古びた書物を無造作に石の上に優しくもない手つきで置く。
そして比較的白い紙で、最近の物のように見える一冊の本を手にし、目的のページを開いた。
深緑の丁装は、触るとざらりとしている。

「颯輝、お前神話の内容知らないんだよな?」
「うん」
「そして一代目から詳しい話も聞いてない」
「うんうん」
「じゃあ…合ってるかわわからんが、俺の見解、聞くか?」
「うん!」

 絵本の読み聞かせが始まる直前の子供のようだ。本当に屈託なくよく笑う。
 北斗は一呼吸置き、序章を指し示した。

「神話が、しかも序文が答えそのものだった」
「答え?」
「本当に…これが正しい答えなら、こんなに簡単でいいのかってくらいだ」
「オレも読めばわかるかな?」
「無理だろ。古文字で書かれてる。300年前よりずっと古い言葉と文字だ」

 颯輝より長く、骨ばった指が移動し、冒頭を指し示す。

「神話だから当然神が出てくる。世界を創造する所から始まる」

 北斗は少し思案し、解説を始めた。
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