アマルフィ-女神の報酬- [2010年05月27日(木)]

映画『アマルフィ/女神の報酬』がWOWOWで放送された。

監督:西谷弘
製作:堀口壽一、島谷能成、高田佳夫、尾越浩文、杉田成道、永田芳男
エグゼクティブプロデューサー:亀山千広
企画・プロデュース:大多亮
原作:真保裕一
撮影:山本英夫
美術:種田陽平
主題歌:サラ・ブライトマン
製作国:2009年日本映画
上映時間:125分
配給:東宝

CAST:織田裕二、天海祐希、戸田恵梨香、佐藤浩市、大塚寧々、伊藤淳史、
小野寺昭、平田満、佐野史郎、中井貴一、サラ・ブライトマン、福山雅治、他






録画しておいたのでちょっくら観てみた(ネタバレありなので注意されたし)

いや〜、某掲示板サイトでは酷評されていたのが嘘のよう

なかなか素晴らしい映画ではないか

適度なサスペンス要素があり、決して派手なカーチェイスや銃撃戦があるわけではないが

終始緊張感があり、125分間というン長丁場の中最後まで楽しませてもらった

しかし、映画宣伝とは雰囲気が異なっていて、予想に反して

ヒューマンドラマ的な部分が多いように感じられた。

個人的には嬉しい裏切りだった。

ドンパチやったり、やたらめったら男と女の濡れ場があったりというのは

ハリウッド映画だけで十分。

日本人ならではの臨場感があればそれでいいのだ。

映画を観る前は、織田裕と天海祐希ってどうなの?と思っていた。

自分には想像出来ない組み合わせだった。

しかし、蓋を開けてみるとこれがまぁいい感じなんだわ

織田裕二といえばいまや世間では『躍る大走査線の青島刑事』のイメージが強いようだが

自分にとってはそうでもない

躍る〜がテレビドラマとして放送されていた頃、自分は1回も観た事がない。

映画になった際も劇場に観に行くことはなかった。

テレビで何度目かに放送した映画(1,2共に)はここ数年でやっと観たくらいだ。

なのであの有名な 「事件は会議室で起きてるんじゃない!!!!」のくだり

あれもほんの1〜2年前にテレビでやっと観て、「おおおお、これがあの名台詞」と

感動したものだ。

そんなこんなで、自分にとって織田裕二といえばこれ!という役名はあまりパっと

思いつかない。

ひとつ挙げるとしたら『東京ラブストーリーのカンチ』だろうか(ふるっ!)

このドラマも最終回を観ただけだ(まだ子供だった)

あと、織田裕二で印象に残っているのは『振り返れば奴がいる』の悪そうな医者?(司馬先生だっけ)

のクールな演技 確か石黒ケンと共演していた。

これも最終話のラスト数分のみ、多分再放送の時かな、たまたま観た。

いきなり背後から織田さんが刺されたシーンは衝撃的だった…

ストーリーもちんぷんかんぷんだったけど、この織田裕二はかっこよかった。

何が言たいかというと…今回このアマルフィを観て、こんときの織田さんを

思い出したわけだかっこよくてクールな織田裕二

タレントの山本高広に滑稽なモノマネをされて少し面白キャラになっていた

様子だったので、この映画を観て安心した。

やっぱ華があるな〜と感心感心 共演の天海祐希も素敵だった

この映画は、サスペンスでもミステリーでもラブロマンスでもなく

まさに、大人の男と女たちによるヒューマン映画と言っても良い

出演者達はほぼ、顔の表情や仕草、滲み出る雰囲気で演技している。



お気に入りシーンはいくつか挙げてみよう

@犯人を待つ紗江子(天海祐希)を執拗にナンパするイタリア人男性と、それに困惑する紗江子を見て思わず走り出す黒田(織田裕二)

冷静に考えて、このナンパ男2人組は犯人グループとは関係ない
それは共に事件の捜査にあたっている刑事達も言っている
「クロダ、落ち着け、ただのナンパヤローだ、放っておけ」
それがわからない黒田ではないはず

しかし思わず助けに行こうと走り出してしまうのだ
ここで紗江子の前に現れてしまったら、監視しているかもしれない犯人グループに
まんまと見つかってしまうことになる
寸前のところで思いとどまる黒田

遠目に見つめあう2人(黒田と紗江子)
うーーーん…この時の黒田は、紗江子を守りたい思いに動かされた
1人のただの男なのだ
最高にかっこいい、そして切ないっす



A紗江子がホテルのテラスでいつものように煙草を吸って気分を
落ち着けようとするが、煙草を持つ手が止まり、少し思いつめた表情をして
煙草をしまうシーン


ここはものすごーーーく好きだし、重要なシーンだと思う

紗江子は藤井(佐藤浩市)が黒田に話した通り、主を亡くしてから
誰にも頼らず、肩肘を張りながら娘を守り、1人で生きてきたようなところがある
強く、美しい女性だ
それが娘を誘拐されても泣き喚くことなく、1人テラスで煙草を吸うシーンにも
よく表れていた。

しかしここのシーンでは、その手を止め、煙草を吸うことをやめている。
黒田と出会い、事件解決に向けて共に行動するうちに
自分が1人の弱い女なんだということを思い出してしまったのだろう
いや、黒田という男の存在が、弱い自分を思い出させてくれたとでも言おうか


紗江子はそんな表情で夜の街を見下ろす
そして、今更ながらに孤独感と不安感と、そして黒田という存在感による自分の中に
芽生える安心感に涙するのである
声を押し殺して、細い肩を震わせる
今まで一度も傍に寄り添う事のなかった黒田が心配そうにテラスに出て
彼女の肩にそっとコートを掛ける
その手を握り、倒れこむように黒田に泣きすがりつく紗江子
このシーンは思わず泣いてしまった
どんな濃厚なラブシーンよりも艶っぽく、切なく、美しい名シーンだと思う




B黒田と藤井が車の前で会話するシーン

正体面の時から互いの存在を探り合っていた2人だが、黒田が藤井を怪しいと感じていることに、おそらく藤井自身ほぼ気付いていると思われる。(私にはそう思えた)

だからこそ、「彼女(矢上紗江子)のことを最後まで宜しく」の台詞が
生きてくるのではないか
つまり、藤井はこの大臣暗殺計画とは別に、紗江子に対する特別な気持ちはあり、
彼女の幸せを願っている

今までささやかながら親身になって話を聴く存在だった自分が、これから
死を覚悟して計画を実行するにあたって、彼女がまた孤独になっていくことへの懸念が
あるのだ
だから、この「彼女を最後まで頼みます」のような台詞は、誘拐事件解決以外の
事に対しても言っているように思えた
まさに男と男が目で会話するようなシーンだ 渋いっ!!!



そんなこんなで結構な余韻に浸りつつ
また織田さんの他の作品を観たいな〜と思い
今度は気になっていた 『振り返れば奴がいる』 をレンタルして
全話じっくり観ようと決めた

いつか必ず、とずっと思っていたので良い機会だ
んん〜楽しみ