高校生の頃、先生に恋をしました。
授業中脱線して、
「生徒には絶対に手を出さない」
と言ってました。
いまでもわたしは信じてますけど。
「恋人ができたらみんなの前ででんぐり返ししてやる!」
と言って、
数ヶ月後にはホントに、
教壇の上ででんぐり返しさせられている先生を見たとき。
笑うクラスメイトたちのなかで、笑えていないわたし。
なんとも言えない感情が沸き起こっていました。
そのとき、わたしは気がついたのです。
この人に恋をしている自分に。
卒業するまで、ほとんど毎日のように、
職員室に通いました。
わたしが先生に思いを寄せていることは、
誰から見てもわかっていたみたいです。
告白なんかはしていない。でも、
勿論先生本人も知っていたと思います。
ときどき先生の家に電話かけちゃうくらいですから。
先生は、動じないでしょうもないわたしの相手をしてくれた。
できれば、卒業して、
先生と生徒じゃなくなったら……、
なんてことも考えたこともありますけど、
恩師と教え子には変わりありません。
いつまでもそのときのままの関係です。
わたしは先生と机を並べて仕事をするのを夢見て、
教員免許をとれる大学に、
奨学金をを掛け持ちして、親戚にお金を借りて、
やっとの思いで、入学。
卒業後は1年常勤講師を務めた後、
晴れて教諭に。
おまけですが、
教諭として他校へ異動するわたしの後任に、
彼(←先生ね)が着任したんですよ……。
まったくニアミスです。
用事があってその学校に行ったとき、
高校生のわたしが書いた小論文に、
先生がみっちり添削している原稿用紙のコピーが、
生徒に配られ、授業で使われたことを、
生徒から聞いて知りました。
(実はわたしも自分の授業で使いましたが。)
先生は当時のものを何でも保管していて、
大学の合格通知のコピーまでとっておいてくれてました。
そしてなぜか一緒に映っている写真を持っていて、
「おまえにやる。」とくれました。
教諭としては、二年しか勤めていません。
動機が不純なもので、
実力に無理のある仕事は続かなかったんですね。
大学時代からの付き合いで、
他県に就職した夫との結婚を機に、退職しました。
いまでも年賀状のやり取りは続いています。
今は先生には奥さまもお子さんもいて、
幸せな家庭を築いていらっしゃる。
先生がご結婚されたのは、わたしが大学生のとき。
わたしは苦しい恋から逃げるように、
そのとき既に、今の夫と付き合っていました。
心から、先生の幸せを祝福できる自分になっていました。 |