ある日曜の朝のこと。
その日もいつものように4時に起きて
ウォーキングに精を出していました。
近くの公園をひとまわりするいつものコースだけでは物足りなく思い、
公園の向こうの橋を渡って川の反対側を歩いてみようと、
まだ歩いたことのない道へ。
5時前なのに、もう農作業のおじさんや、
ウォーカーらしきおばさん2人組に会い、
その都度、見知らぬ人だけどあいさつしてすれ違います。
ずいぶん人に会うな……と思っていると、
今度は寝巻き姿に前掛けをしたおばあちゃんが。
こんな朝早く散歩かぁ……「おはようございます。」
すると、
「……悪いけど電話借りてもいいかい?」
「?」
よくみるとおばあちゃん、履物も靴下もはかずに、
裸足でした。
そうです。彼女は徘徊老人だったのでした。
気がついたら知らないところにいた、といった感じで、
「こんなことははじめてだよ。」と本人も困り顔で、
履物もはいていないのを恥ずか
しそうにしています。
朝早いし、肌寒かった……。私は歩いていてぽかぽかでしたが。
息子さんの家だという番号に電話をしたのですが、
まだ早い時間のせいか、誰も出ません。
これは困りました。
住所を教えてくれたら、車ではすぐ近くでしたが、
おくってあげようにも、歩いてきている私は、
その地点から家まで戻るのに、最短で15分ぐらいは掛かります。
その間にまたどこかへ行かれてしまっても困ります。
おぶっていくしかないか! と一瞬覚悟を決めましたが、
さすがに大人一人おぶって見込み10分以上のウォーキングは
キビシスギルナァ……。
何度もいいますが、朝早いので、
近所の家に助けを求めるのも気が引けました。
最後の手段で、
家で寝ている夫に迎えに来てもらうことに。
おばあちゃんと一緒に5分くらい待っている間、
もう一度息子さんの家に電話をしたのですが、
今度は受話器を上げてしまったらしく呼出さえもしません。
少々怒りを感じていた頃、夫が到着。
おばあちゃんに道を聞きながら
無事家まで送ってあげることができました。
おばあちゃん、家の前で、
「何かお礼をしなくちゃ…」とがま口からお札を出しました。
履物をはくのは忘れても、お金はもっているのですね。
しかし、独居老人からお金を巻き上げるのは人道的にどうか
と思うでしょう?
何度も返そうとしましたが、
おばあちゃんの気が済まないらしく、
気づかないうちにそっと前掛けのポケットに入れようとしても、
気がついてしまい、受け取ってもらえません。
そこまでしっかりしているのに、
徘徊してしまうものなんですね……。
その後夫は、
「これはなにかのめぐり合わせだ。
頂いたお礼を3倍に増やす!」
といって、パチンコ屋に行きました。
……まぁ、せっかくの休みなのに、
私がたたき起こしたわけだから、
好きにしてチョウダイ……。
結局、頂いたお金がすっからかんになり、
その後銀行から下ろしたお金でやっと儲けを出して、
冷や汗をかきながら帰ってきたのでした。
そこまでゆるしたおぼえはないけどっ?