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第3部メラトニン研究の未来 第18章 自然界の特許@ [2009年12月22日(火)]
 これは貴方にお勧めしているわけでは御座いません。世の中には、こういう考え方もある、と言うことで無断転載させていただいております。
 もしも実践される場合は、自己判断・自己責任でお願い申し上げます。


 私がまだメラトニンの研究を始めたばかりの頃、「本気でそんな狭い分野≠研究するつもりなの」と云う同僚からの質問に辟易(へきえき)した覚えがある。時期に興味を失って、もっと主流の分野に移るだろう」と思われていたに違いない。実際に、強く勧められもした。「ラス、君は幻を追いかけているようなものだよ。もっと時間と労力のかけがえのあるものを見つけてはどうかね」と云う風に、散々忠告されたものだ。
 そんな膳に満ちたアドヴァイスを私が受け付けようとはしなかったのは、「ただ、ただ自分の好奇心を満足させたい。そのためには、あと1つだけ、実験をしなければならない」と云う気持ちがあったためだ。その実験を終えると、今度は別の実験が待っていた。どうにも興味をそそられる実験が私を手招きしていたのだ。その結果から、今度は次の道筋が開かれていった。まるで、子供がパンのかけらにつられて、いつしか森の奥へと入って行くようなものだった。今では、私にはたくさんの仲間がいる。何百人もの研究者が、「それこそ、それぞれのパンのかけらをたどって全く同じ木にたどり着いたのだ。最初の関心は心臓病であったり、ガンであったり、あるいはテンカン・睡眠・うつ病と、様々だが、研究を続けて行くうちに、メラトニンに行き着いたのである。
 メラトニンの研究には現在、実に多くの科学者が携わっているので、非常に速いペースで研究成果が発表されている。たとえば(1995年)現時点で米国立衛生研究所が主催しているプロジェクト農地のメラトニンを含んでいるものは138にものぼる。更に、実施を計画されているものも多数ある。毎週のように他の分野の研究者から。基礎的な情報を求める電話が入っている。この最終章では、この活動がこれからどこを目指すのか、その展望について述べて行く。
 本章の構想を練るに当たり、たくさんの将来有望な研究分野の中から、はたしてどれを取り上げたものかどうか、と私は思案した。
●偏頭痛を癒す。
●胎児性アルコール症候群から胎児を守る。
●神経変性疾患の始まりを遅らせる。
●酸素療法によって生じるフリーラジカルのダメージを抑える。
●放射線療法や化学療法の際に私たちの体内の戦闘部隊を守る。
 その他にもメラトニンの働きについて多数のプロジェクトが実施あるいは研究されている。本性はその中から、どれを選んでもよいわけだ。しかし紙面の都合もあるので、ここではメラトニンの働きについて、次の4つに限り、その治療法と予防について離してゆくことにする。取り上げられるのは、自閉症・乳児突然死症候群・テンカン・糖尿病の4つだ。
 メラトニンには、私たちの心身の健康状態を高める働きがある。しかし、これ以上にその実力を実証して見せるのは、いわば危険を冒(おか)すようなもの≠ゥもしれない。一部の人々は、メラトニンに関する新しい発見に殊更(ことさら)疑惑の目を向ける。「こんなにも幅広い能力を秘めているにはおかしい」と、云うわけだ。私たちが「メラトニンのことをまるで万能薬≠ナあるかのように持ち上げている」と、言いたいのであろう。むろん、私たちの健康と長寿を完全に保証してくれるような物質など、あるはずはない」のに。
 本書では一貫して、「メラトニンには癒す力はほとんどない」と、ハッキリさせてきたつもりだ。このホルモンがエイズ患者の免疫系を強める働きは大いに期待できるが、すでに説明したとおりに、「メラトニンそのものが病気を撲滅するのではない」のだ。現在行われているガンの治療に加えるには素晴らしい物質だが、メラトニンだけでは効果のほどは知れている。これまでの40年間で解ったのは、「メラトニンは人間の生理において中枢的な役割を担っている、そして賢明に使用すれば−時には他の治療法などと併用して−実に多くの症状を防いだり緩和する可能性がある」と云うことだ。これを「万能薬」と呼べるだろうか?答えは「ノー」だ。しかし、私たちが体内で作り出す物質の中で、メラトニンは最高の部類に入ることは間違いない。だから、これだけ関心の的になるのも当然なのである。

注:以下の体験談には、専門の医師(主治医)や研究者の助言により成されたものです

 自閉症
 「メラトニンは老化防止に効くホルモン」と考えられている。そのため、40歳以上の人々の臨床薬として使用すれば、いちばん効果が発揮できるようだ。だが、メラトニンは自閉症やテンカンなど、神経の病気を抱える子供たちの暮らしを、より良いものにする可能性も秘めているようだ。
 自閉症に苦しむ子供は、アメリカに36万人もいる。医学辞典で自閉症の項を引くと、「人間との接触に感応せず、言語の発達にかなり欠け、環境の様々な側面に対して独特の反応をする」と云う説明がある。ロバート・テッシュとゲイ・テッシュがこの定義を読んだのは8年前。3歳になる息子マイケルが、「自閉症の典型的な症状を呈している」と宣告された時だった。まだ小さい頃は、症状はあまり目立たないが、年齢と共にハッキリと判るようになって来る。8歳になったマイケルは、自閉症独特の症状のほとんどを示すようになっていた。自傷行動もその1つだった。「あの子は自分のことを噛んだり、強迫観念に取り付かれたように回り続けたり、息をつめたりしていました。そんな行動が1日の半分以下であれば、今日はいい日だった、と私たちは言い合ったものです」と父親は語る。
 マイケルは深刻な睡眠障害も抱えていた。これも自閉症の子供たちに多い症状だ。ロバート芸は毎晩8時頃にマイケルをめかしつけたが、2時間ほどたつとマイケルは目を覚まし、朝の3時か4時くらいまでそのままずっと起きているのだった。マイケルはそのように眼を覚ましている間、家中を荒らしまわった。
 「そんな時、あの子は異常なまでに良く動くのです。延々と行ったり来たりを繰り返します。車で外へ連れ出せば落ち着くと判っているから、特にひどい夜は私たちのどちらかが町中をぐるぐると運転して回りました。45分でも1時間でも、あの子が眠りに就くまで」
テッシュ夫妻は「自閉症に効果がある」と効けば、どんな薬でも試してみた。しかし、どれもみな効き目はなそうだった。薬によってはマイケルの度を越した行動が治まっても、「物事を認識する力がなくなってしまうのです。ただ座って、放心したようになります」また、薬の影響で、猛烈に怒りを発散することもあった。
そして、それと共にマイケルの能力は次第に衰えて行った。ロバートはこう語る。「言葉の意味を理解することが、あの子には難しくなったのです。『おもちゃを拾いなさい』と声をかけると、おもちゃの前に立って、云われた言葉の意味を理解しないまま何度も繰り返すのです『おもちゃを拾いなさい、おもちゃを拾いなさい』と、マイケルにとって英語はもう外国語も同然でした。失禁も始まりました。抱きかかえてなだめようとしても、あっという間に噛まれてしまいます。それも、思いっきり強く。こんなことを云うのは辛いのですが、まさしく地獄でした」ゲイが続ける。「医師たちは私たちに同情して、心配してはくれましたが、それだけでした」
映画『ロレンツォのオイル』の両親のように、ローバトとゲイはマイケルを救うために立ち上がった。自宅のコンピューターを使って、ロバートは自閉症に関する情報を求めて医療のデータベースを検索した。安全で効果的と思われる治療法を見つけると、詳しい医師を探し出してアドヴァイスを求めた。しかし、そんな治療法の一部はマイケルの症状をいっそう悪化させることになった。「ホメオパシーの治療も試しましたが、逆効果でした。マイケルは凶暴になりました。衝動的な行動をとるようになったのです」しかし、功を奏したものもあった。中でも瞑想によってマイケルの自虐的な行動はかなり治まった。
  しかし、マイケルの睡眠障害はどうにもならなかった。それが癒されたのは、メラトニンと出会ってからだった。ロバートの同僚に、メラトニンを睡眠剤として使っている者がいた。ロバートはその同僚から、どこでそれが手に入るのかを教えてもらった。それから、ロバートは専門家にアドヴァイスを仰いだ。「害はありませんよ」と云う答えだった。
 その日、ロバートとゲイは近所の店でメラトニンを近所の店で1瓶買って、息子に飲ませてみることにした。「いつもの時間にマイケルをベッドに入れました。そして、いつもマイケルが眼を覚ます時間よりも少し前の10時に起こして、3ミリグラムの錠剤を飲ませたんです。驚いたことに、あの子はまた眠りに就いて、4時まで起きる事はありませんでした。翌日は、いつも眠る時間にメラトニンを飲ませました。効果覿面でしたね。マイケルは朝まで、ぐっすりと眠ったままでした。私たちはもう、夢心地でしたよ」夫妻は毎晩マイケルにメラトニンを飲ませ、少年はその後もずっと朝まで、ぐっすりと眠り続けた。
 これだけでも、まさに天の賜物(たまもの)≠ニ云うに相応しいが、このホルモンの効き目はそれだけではなかった。「あの子の精神状態が良くなってきたんです」と、父親が続ける。「それに、意味を理解するのも早くなってきたのです。自閉症の子供たちは反応するのに時間がかかるんです。以前ならばマイケルに1つ質問をすると、答えが返ってくるのに20分はかかってしまいました。メラトニンを使うようになってからは、彼はもっと早く応えることが出来るようになって来ました」
 果たしてこれは、マイケルがよく眠れるようになったためなのか、それともメラトニンの直接の影響なのかは、夫妻には解らない。
 マイケルの変わり様があまりに感動的だったので、負債は毎晩息子にメラトニンを野まで、少年はその後もずっと朝まで、で眠り続けた。テッシュ夫妻は自閉症の子供を持つ親たちにメラトニンのことを話した。ゲイは、こう語る。「皆もメラトニンを飲ませてみたんです。翌日電話がかかって来ました。『すごい、本当に効いたわ!』ってね」すぐに、自閉症の子供にメラトニンを飲ませる家庭は30にもなった。
 「どの子もみんな、よく、眠れるようになりました」と、ロバートは続ける。「それに、我が家の場合と同じように、どの家庭でも睡眠以外の効果があったのです。何人かは発作的な行動が減りました。強迫観念にとらわれた行動が少なくなった子供は大勢います。全体的に観て、子供たちは以前よりも自分の周囲に『適応』出来るようになったのです」
 ある子供の場合、その反応はまさに劇的だった。7年間も、その少年は料理用の黄色い漉器(こしき)に強く執着していた。片時もそれを手放さず、しっかりと握り締めては、あれこれと眺め回していた。その濾器が見当たらないとパニックを起こし、見つかるまでは誰にもどうにもなだめることが出来なかった。濾器が自分の手に戻ってくると、愛しそうに握り締めてハミングするのだった。その少年の母親の話しを紹介しよう。
 「メラトニンを服用し始めてから3週間後、息子は濾器への関心を全く失ってしまいました。濾器は今では、家の中の他の物と同じ、になったのです。置きっ放しにして、そのままです。今では、人間の方によっぽど、関心があるみたいです」
 イェール大学の研究者は現在、自閉症とメラトニンの関係についての研究を企画している。いわば、テッシュ夫妻の献身と忍耐が実を結んだ、とも言える。一方、他の大学では、死亡した成人の自閉症患者の松果体についての研究を開始した。1995年の夏、イタリアの研究者は「通常ならばメラトニンの分泌量が増えるはずの夜間に、自閉症の子供たちのメラトニンの量は増加していない」と云う調査結果を発表した。つまり、「メラトニンの欠乏が、この複雑な神経疾患になんらかの関わりがある」と云う意味だ。
 メラトニンと自閉症には数多くの接点があるが、ロバート・テッシュは「メラトニンと言うホルモンは決して奇跡の治療薬ではない」と、言い切る。
 「メラトニンの服用を始めたおかげで正常になった、と云う子供は1人もいません。子供たちの特殊の行動をコントロールするには、これからも辛抱強い努力を重ねて行くしかないのです。幸い、息子は今のところ順調です。メラトニンの服用量を減らし、もう毎晩は飲んでいません。健康状態も良好です。ぐっすりと眠っていますし、全般的に一目で『自閉症』と知れるような症状は出なくなりました。行きずりの人からは、『少し発達が遅れている』程度にしか見えないでしょう。しかし、これは私たちに言わせれば大きな進歩≠ナす。メラトニンを使って何が一番うれしかったか、と言うと、自宅で息子の介護が出来ることですね」

 テンカン
 メラトニンには抗痙攣(けいれん)薬としての働きがある。これは、既に30年以上前に実証されていた。アレチネズミの松果体を切除するとテンカンセイの発作が起きる事は、数十年前(1995年現在)に多くの研究者たちが確認していた。更に、メラトニンがここのニューロン(神経伝達物質)の興奮性を治め、穏やかな抗痙攣薬として働くことも明らかになった。最も雄弁にそれを物語る研究と言えば、1977年に行われた動物実験だろう。それは「ラットにメラトニンの抗体を注射してメラトニンの自然な分泌を抑える」と云うものだった。ようやく注射し終わったかどうか、と云う時点で、既にラットは痙攣を起こしていた。
 テンカンの患者に初めてメラトニンを投与した医師は、フェルディナンド・アントン・テイである。1971年、彼はテンカン患者3名にメラトニンを注射した。注射の前後に渡って患者の脳波をモニターしたところ、メラトニンは彼らの脳波を正常にしていることが判った。特に投与後4時間はその効果がはっきりと現れていた。アントン−テイはそのうちの1人だけに、それから2日間メラトニンを与え続けた。その間、患者は発作を起こさなかった。しかも、その2日間は、他の治療薬は処方されていなかったのである。
 かつてないほどメラトニンが劇的な効果を挙げたのは、つい最近のことだ。チェラと云うスペイン人の2歳の女の子のケースである。チェらはテンカンの一種であるレノックス−ガストー症候群だった。彼女は1日に15から20回も発作を繰り返し、(1995年現在)最新の抗痙攣剤も他のどんな治療法も効果はなかった。そして、ほとんど昏睡状態だったのだ。チェラの両親はスペインのグラナダ大学で生理学の教授をしているダリオ・カストロビエホ医師に相談した。彼は私の同僚でもある。カストロビエホはメラトニンの投与を進めた。そこで、毎日3回ずつ50ミリグラムのメラトニンが注射されることになった。わずか2日のうちに、奇跡的に発作が治まった。1ヶ月もすると、どこと言って異常なところは観られなくなっていた。それからはや2年が経つが、チェラは量こそ少なくなったものの、尚もメラトニンの投与を続けている。症状は全く出ていない。チェラの命を救ったのは、間違いなくメラトニンだ」と云う確信は、チェラの両親と医師たちに共通しているはずだ。
 興味深いのは、「メラトニンがフリーラジカルを除去すると言うやり方で、テンカンの発作を抑えるの一役買っているかもしれない」と云う点だ。脳の重要な抗酸化物質であるグルタチオンペルオキシダーゼが大幅に不足している子供たちは、絶えず発作に見舞わられることが知られている。こうした子供たちにセレン(セレンはグルタチオンペルオキシダーゼに欠かせない)を投与すると、発作の回数が減り、脳波の状態も改善された。メラトニンも同じように働く可能性がある。既に述べたとおり、メラトニンそのものが独立した抗酸化物質として働くので、やはり脳でグルタチオンペルオキシダーゼの活動を刺激するのかもしれない。いずれにしても、メラトニンとテンカンの関係については、これまで以上に詳しく調べることが必要だ。メラトニンの研究者と神経学の専門家が、もっとこの分野の研究に積極的に関わってくれることを期待している。
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