●鎖骨骨折から527日目。
先日の土曜日、詩人の谷川俊太郎さんに会いに行った。
場所は、自由が丘のブックストア。
谷川俊太郎さんの詩「生きる」に、写真家・松本美枝子さんが写真を撮りおろした、写真詩集『生きる』の出版記念トーク&サイン会。
谷川さんが松本さんに質問する形で、トークは始まった。
今回「ボツ」になった写真を幾つか取り出して、ボツにした理由を松本さんが話してくれた。
ボツになった写真も、なかなか味わい深かった。
松本さんは、フィルムカメラで撮影し、ご自身で現像するという。便利なデジカメをあえて使わないところに、女流写真家の心意気を感じた。
参加者からの質問で、「生きる上で最も大切なこと」を尋ねられた時、谷川さんは笑顔で即答された。
「そりゃ、愛でしょ。」
「愛にも様々あります」、とも付け加えられた。
素敵だなぁ、と思った。
谷川さんは76歳、松本さんは33歳。
谷川さんが「生きる」を創作されたのは、30歳代後半だという。
40年前に作られた詩が、今でも読み継がれ、詩が書かれた後に生まれた赤ん坊が大人になって写真家になり、その詩に写真を添える。
何と素敵なことだろうか。
----------------
トークの最後に、谷川さんが「生きる」を朗読された。
詩の中の一字一句が、谷川さんの口を通じて、宙に舞った。
音楽のようだ、と思った。
谷川さんの詩に聴き入っていると、不意に、僕の目から、涙が出てきた。
唐突に、静かに、そっと、涙が出てきた。
呼吸をするように、瞬きをするように、ごく自然に、無意識の行為として、涙が出てきた。
驚いた。
不思議な不思議な体験だった。
谷川さん、松本さん、有難うございました。