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鎖骨骨折から117日目。
昨日に続いて、池谷裕二著「進化しすぎた脳」(2007年 講談社)について。
本書には、興味深いテーマが判りやすく語られている。備忘録として、2点だけ書き留める。
1)脳の地図のダイナミックな進化
・脳の地図は、体に合わせて変わり、進化する。
・指が4本になれば、脳地図も4本になる。
・もし指が6本あれば、6本の脳地図ができるはず。
・体と脳は、相互にコントロールしあっている。
・脳が一方的に体をコントロールしている訳ではない。
2)言葉の重要性
・言葉には2つの側面がある。
・コミュニケーションの手段、伝達のための信号・記号
(痛い、暑い、お腹が減った、遊びたい、など)
・抽象的な思考をするための道具
例)この深い感動をどう表現しようか。
自我とは何だろうか。
・動物が発する声は、伝達のための信号にすぎない。
・人間は、言語を繰ることで、抽象的な思考ができる。これが重要。
「人間は脳の力を使いこなせていない」、という章では、病気で脳の成長を妨げられた例が挙げられていた。
子供の頃からの病気で、脳が10%程度しか発達しなかった人でも、日常生活やIQのレベルは健常者と変わりないケースが多い。このことから、人間が持っている脳は必要以上であり、「
人間の脳は、必要な程度の進化を遂げたのではなく、過激に進化してきた」、という。そしてこの過激な進化は、将来予期せぬことが起こったときの「余裕」であり、「未来への予備」、と続けている。
本書のタイトル「進化しすぎた脳」は、ここから来ている。
positiveな考え方で、とても面白い。
慶応義塾ニューヨーク学院高等部での講義は、こんな言葉で結ばれている。
「脳を理解しようなんて、そもそも傲慢でおこがましいチャレンジだと僕は感じはじめている。(中略) 人間ってこんなにも素敵な存在なんだから、人間の脳がそんな簡単にわかってたまるかってね。(後略)」
研究者としての謙虚さが、池谷氏の魅力の一つだと思う。
目が離せない脳科学者を、もう一人見つけた。