●鎖骨骨折から659日目。
先日、吉本隆明さんの講演会に行ってきた。
場所は、新宿・紀伊国屋ホール。
講演会のタイトルは、「芸術言語論 その2 自宅から生中継」。
吉本さんのご自宅と会場がインターネット回線で結ばれ、紀伊国屋ホールの大きなスクリーンに吉本さんのお顔が大きく映されて、講演が始まった。
◆大雑把な要約;
・日本語の詩の起源は、「記紀歌謡集」の中にある「問答歌」。神話と歌謡が調和し、結合
している。
・奈良時代には、歌謡よりも短く整った「和歌」(短歌)が生まれた。和歌の五七五・七七と
いう構成は、上の句と下の句で、主観性と客観性或いは受身と積極性の対比があり、
「問答歌」の名残りが見られる。江戸時代に、さらに短くなった「俳句」の中にも、同様の
対比がある。
・優れた歌人、芭蕉も正岡子規も、そのことをよく理解している。
・そして、萩原朔太郎の「月に吠える」、中村草田男、角川春樹、岡井隆、吉増剛造、辻井
喬らの現代詩へとつながっている。
◇優れた句として、紹介されたもの;
風になびく富士の煙の空に消えて ゆくへも知らぬわが思ひかな (西行法師)
夏草や つわものどもが 夢の跡 (松尾芭蕉)
暑き日を 海にいれたり 最上川 (松尾芭蕉)
鶏頭の 十四五本も ありぬべし (正岡子規)
かなかなや 蝋涙 父の貌に似る (角川春樹)
◇俳句になっていない(目前の風景を詠んだだけ)、と説明されたもの;
赤とんぼ とまっているよ 竿の先 (三木露風)
「つかしん」(堤清二の街づくりの理念を具現化した尼崎市の商業施設)を、"驚くべき理想の都市”と呼び、辻井喬(=堤清二)の自伝詩に対応させて、吉本さんのお話は終わった。
ハイビジョン画像のリアルタイム圧縮技術(XVD)を使ってスクリーンに投影された映像は、極めて鮮明で、実に見事なQUALITYだった。
83歳というご高齢にも関わらず、熱く語り続ける吉本さんに、とても感銘した。
”奇跡的な講演会”に立ちあった、と思う。
糸井重里さん、スタッフの皆様、素晴らしい企画と見事な運営でした。
有難うございました!