恋のチカラ

「休んでゆっくり体調を調えたほうがいい」
とメールをくれた彼のいうことをきかずに、
頭痛がおさまったので、会社へ行った。

心配させないように、と、つとめて笑顔で事務所に入った。

席に着くと、机の上の、お茶缶のペン立てのとなりに、
スケルトンオレンジの円筒形の、新しいペン立てが……。

……ほんとにくれたんだ……。


２時間ほど経ってから、
彼の机のまわりにあまり人がいないのを見計らって、
彼にお礼を言いに行った。


ありがとうございました……ペン立て。

「あぁ、使って。」

で、おいくらですか♪

「いい、いい。いらないよ！　
あんなもんで気持ちよく仕事してくれるんなら安いもんだよ。」

なんだかほんとにスミマセン。

「買ってやるって約束しちゃったからね♪」

約束……したんでしたっけ？

「してないんだっけ？」

その日が過ぎたら終わりだっていわれましたよ。

「えっ？　そうだっけ。すぐ忘れちゃうんだよ、トシだから。
あ〜、損した！」

……（中略）……

「俺のと色違いだよ。」

色違いのお揃いですね♪

「でも、OさんとかSくんもおんなじの持ってるんだよ。」

なんだ〜、そうなんですか。

「クリスマスプレゼントで買ってやったんですよ。」
（↑ホントの理由は仕事がらみ）

……以下略


そういうわけで、２人だけのお揃い、
わたしだけ特別なプレゼント、
というわけにはいかなかったけれど、
うれしいプレゼント、頂きました。

でもわたしの分だけはわざわざ後から買いにいってくれたんだから、
やっぱり特別だって思いたい……♪

「損した！」っていうのも……照れ隠しであって欲しい。

朝、ケータイのアラームを目覚まし代わりにしているわたしは、
夫にケータイが鳴ってるといわれて止めた。

朝から布団の中でDSに興じる夫。
耳にはヘッドフォンだが、
ケータイのバイブの音はわかるらしい。


……じゃぁ、昨夜遅くにメール受信したの知ってる？

「あぁ、知ってるよ。」

そう……。

「でも、だからって別に、
『誰だよ、こんな遅くにメールよこすやつは！』
なんてこと、いいませんから♪」


喜んでいいのかどうなのか疑問だ。


今日の夕食のときも、バレンタインデーの話になって、
「本命にはもう買ったのか？」なんて茶化すし……。

あんた、お兄ちゃんでもおともだちでもないんだよ？
わたしがよその人に恋していて、
まったく平気なの……？

昨日は生理前で低調なところへ、
子どもから風邪をうつされ、
頭が痛くなって、朝から会社を休みたいくらいだった。

でも、休むと彼に会えないし、
やらなきゃいけない仕事もある。
あまりつらかったら早退することにして、
とりあえず会社に向かった。

薬を飲んでも頭痛は治らない。
午後になったら早退することにして、
午後から早退で付けるか、一日有給で付けるか、
彼のところに勤怠の相談をしに行った。

お昼を食べながら淡々と対応する彼。
気をつけて帰ってね、といわれて、
お先に失礼します、と職場を後にしたわたし。


保育園には寄らずに真っ直ぐ家に帰り、
横になると眠ることができた。
眠ることができれば、わたしの頭痛はいつも楽になる。
あずかってくれるギリギリの時間まで寝ていて、
そのあとは、いつものように過ごすことができた。


この分なら、明日は仕事に行ける。
そう思って、布団にくるまり、うとうとしかけた、そのとき、
メールを受信。0：40頃だった。

何度もいうが、
こんな時間に来るのは、
彼からのメールしかあり得ない。


「毎度×2、遅くのメールでｍ（ _ _ ）ｍ
体の具合はどうですか？
明日は無理せず休んで、体調を整えた方がいいと思います。
返事はいいですから。では、おやすみなさいです。」


寝ぼけていたけど、読んで思わず、
「嬉しい。」と言葉にしていた。