張り子の鍾馗さま [2008年05月05日(月)]
張り子の鍾馗さまです。
鍾馗さまは、中国伝来の邪気をはらう神様です。
もともと唐の玄宗皇帝が熱病に冒されたとき、落第書生の鍾馗を名乗る大鬼が小鬼を食らう夢を見、それによって病が治ったので、その像を画工の呉道玄に描かせたのが鍾馗像のはじまりとされています。
中国では、端午(旧暦の五月五日)の節供は、避邪防病の日とされ、薬草を摘み、家の門によもぎでつくった人形や虎、あるいは菖蒲でつくった剣をかけ、鍾馗の絵や五毒(サソリ、ムカデ、ヤモリ、ガマ、ヘビ)を食べる虎の絵を貼って邪鬼の侵入を防ぎました。
中国から端午の行事が渡来した日本でも、この日を薬猟(くすりがり)と称し、薬草を競い狩ることで、不吉をはらう風習が行われるようになりました。菖蒲が邪気をはらう薬草として用いられたことは、旧くは『日本書紀』にも記述されています。その際、菖蒲は軒につるされたり、家のうちに飾られたり、菖蒲縵(しょうぶかずら)と称し、頭につけられたそうです。
下って、武家の時代となり、同音のため菖蒲が尚武と通じて考えられるようになり、端午を男子の健康な成長を祈願する男子の節句ととらえるようになりました。それにつれ、菖蒲縵が菖蒲兜と変化し、その前に武者人形を立て、五月五日に五月人形として飾るようになりました。
鍾馗さまは古来の邪鬼をはらう神様として、武家時代由来の武者人形とともに飾られるようになったようです。
みなさんのうちに邪鬼が侵入しませんように
参考文献『世界宗教大事典』(平凡社、1991年)