サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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ノニの総説--薬理学と安全性 [2007年04月30日(月)]
先月の生薬学の専門ジャーナルに、ノニ(学名Morinda citrifolia モリンダ・シトリフォリア)についての総説が掲載されていました。
(Planta Med 2007; 73: 191-199)

ノニは、90年代以降、日本や米国でサプリメント・健康食品として製品化されています。

特に近年、米国での販売が伸びているようです。
(今年の初めに開催された米国でのカンファレンスで、そのようなデータが提示されていました。主にネットワークビジネスによるものと思います。)


さて、今回の総説では、ノニ果実の機能性成分に関する有効性および安全性について、薬理学的考察が行われました。

(この論文は、スイスのバーゼル大学の研究グループからの報告です。欧州では、2003年にノニ果実がNovel Foodとされています。)


総説によると、

--近年、ノニ果実の化学的構成成分について、知見が集積されつつある。

--ただし、研究の多くはin vitro研究であり、一部がin vivo研究による。これらが、有効性に関する可能性を示唆しているにとどまる。

--基礎研究による臨床的意義は明確ではなく、臨床研究データが欠如。

--毒性試験データに基づくと、ノニジュースは安全であると考えられる。

となっています。


その他、欧州ではノニ(ジュース)製品の摂取に関連した肝障害を報告した症例があり、安全性について再検討されています。
もっとも、現時点では、ノニジュース摂取と肝障害との因果関係はf明確ではない、あるいは否定的のようです。


ただし、体質による個人差もありますので、ノニ製品を利用する際には、必要に応じて臨床検査データをモニターすることが推奨されます。

また、ノニ製品については、あたかも万能薬であるかのような訴求が行われている場合もあります。

今後、有効性と安全性を検証するための質の高い臨床研究が求められます。
posted at 23:52 | この記事のURL
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ザ・ネイバー [2007年04月29日(日)]
以前に取材を受けた「ザ・ネイバー」という雑誌が送られてきました。

「新研究シリーズ」という記事で、「生活のなかの身近な鉱物を見分けよう」というのがテーマです。

必須微量元素としてのミネラルの他、最近話題のプラチナナノコロイドについても紹介させていただきました。
posted at 23:56 | この記事のURL
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マテ・ガラナ・ダミアナの減量作用 [2007年04月28日(土)]
先日開催された学会で、ハーブサプリメントによる減量効果を報告した研究がありました。

利用されたのは、マテ・ガラナ・ダミアナの3種類のハーブを主要成分として含むサプリメントです。

イギリスで行われた今回の臨床研究によると、まず、87名(18〜70歳)の被験者がナショナルヘルスサービスを介してエントリーし、68名が試験を完了したということです。
(平均BMIは30.60)

プロトコールは、6週間のハーブサプリメント投与、続いて4週間の観察期間です。
その他、特に介入は行われていません。

試験の結果、体重減少幅は、投与6週間後で平均2.2kg(2.6%)、10週間の時点で2.9kg(3.3%)と報告されています。


サプリメントの投与期間は少し短いと感じられますが、1ヶ月間の観察期間後でも減量が維持されていることは


このハーブ複合剤については、これまでにも数十人程度の被験者を対象にした複数の臨床研究が報告されており、いずれも体重減少効果が示唆されています。


作用メカニズムの異なるハーブを組み合わせてダイエット効果を得ようとする試みは、サプリメントではよく行われます。

ただし、これらのサプリメントは、適切な食習慣と運動習慣に併用することを前提とした補完療法になります。
posted at 23:50 | この記事のURL
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大型連休前の注意--海外での感染症について [2007年04月27日(金)]
明日28日から来月初旬にかけてのゴールデンウィークでは、旅行で海外に行かれる方も多いのではないでしょうか。


海外では感染症に注意が必要です。


例えば、狂犬病。

昨年、海外で犬に咬まれて狂犬病に感染し、日本で発症する例が2例ありました。

狂犬病は発症すると死亡率がほぼ100%です。

犬だけではなく、ネコやコウモリ、アライグマなど他の動物も原因になります。




その他、海外で注意すべき感染症として、蚊が媒介するさまざまな感染症、鳥インフルエンザなどがあります。


厚生労働省では、

「海外で感染症にかからないようにするためには、感染症に対する正しい知識と予防方法を身につけることが必要です。特に、飲料水、虫刺され(蚊やダニなど)、動物との接触には注意が必要です。」

として注意を呼びかけています。

19年4月24日付 海外で注意すべき感染症について-大型連休(いわゆるゴールデンウィーク)を前にして-)



posted at 23:52 | この記事のURL
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がんによる死亡率の高い県は? [2007年04月26日(木)]
本日、厚生労働省から、

「都道府県別にみた死亡の状況―平成17年都道府県別年齢調整死亡率の概況―」

が発表されました。


がん、心臓病、脳血管疾患といった三大死因を都道府県別にみると、死亡率に地域差が存在します。


今回発表されたH17年のデータでは、各死因による死亡の状況は、次のようになっています。


まず、「肺がん」の死亡率。

男性は和歌山、長崎、奈良が上位3県です。大阪や青森が続いています。

一方、山梨や長野等では低くなっています。

女性は大阪、沖縄等で高く、富山、島根等で低くなっています。

(なお、正確には「肺がん」ではなく、「気管,気管支及び肺の悪性新生物」です)



次に、「胃がん」の死亡率。

男性は秋田等で高く、熊本、沖縄等で低くなっています。

女性は富山、石川等で高く、沖縄等で低くなっています。



「大腸がん」の死亡率は、

男性は北海道、青森、岩手等で高く、愛媛、熊本、宮崎等で低いという結果です。

女性は岩手、和歌山等で高く、徳島、香川等で低くなっています。



「急性心筋梗塞」の死亡率は、

男性は青森、茨城等で高く、島根、佐賀等で低いという結果です。

女性は茨城、三重、沖縄等で高く、島根、佐賀、熊本等で低くなっています。



「脳梗塞」の死亡率は、

男性は青森、岩手等で高く、沖縄等で低いという結果です。

女性は茨城、栃木等で高く、沖縄等で低くなっています。




これらの地域差は、その地域特有の食事など生活習慣による影響が大きいと考えられます。

その他、地域によって住民を対象にした健康診断の受診状況、医療機関の充実度などに違いがあり、その影響が反映されているとも推測されます。
posted at 23:54 | この記事のURL
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オオバコの1種による脂質代謝改善作用 [2007年04月25日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、オオバコ科の植物に由来する食物繊維が脂質代謝を改善したという臨床研究が報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2007 85: 1157-1163.)


今回の研究では、オオバコ科の1種で、学名をPlantago ovata プランタゴ・オバタという植物の種子が用いられています。

この植物からは食物繊維であるサイリウムが得られます。
(インド原産のPlantago ovataの種子の殻・ハスクからサイリウムが作られます。その大部分が食物繊維です。)
(なお、日本のオオバコとは種は同じですが、別の植物として区別されます。)


さて、研究の背景として、食物繊維の摂取が虚血性心疾患のリスクを低下させるという考えがあります。

今回の研究では、Plantago ovata種子のハスク(殻)に由来する水溶性食物繊維による心血管疾患予防効果(2次予防効果)が検討されています。


心血管疾患(心筋梗塞あるいは狭心症)を有する男性28名を対象に、一重盲検ランダム化クロスオーバー法にて、1日あたりハスク10.5グラムあるいは、種子10.5グラムが8週間投与され、空腹時の脂質生化学指標が測定されました。

その結果、ハスク(水溶性食物繊維)摂取群では、中性脂肪の有意な低下が認められました。
また、種子(不溶性食物繊維) 摂取群に比べて、ハスク摂取群では、HDLコレステロールが有意に増加、総コレステロールのHDLに対する比およびLDLのHDLに対する比率がそれぞれ有意に低下しています。


この研究結果から、既に冠状動脈血管疾患を有している人に対する二次予防として、同量の不溶性食物繊維よりも、水溶性食物繊維の投与による脂質代謝改善効果が示唆されます。
posted at 23:20 | この記事のURL
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ルテオリンの抗炎症作用 [2007年04月24日(火)]
植物由来の抗酸化成分・ファイトケミカルの一つに、ルテオリンというフラボノイド類があります。
これまでの研究によって、ルテオリンの多彩な働きが示唆されています。

生薬学の専門ジャーナルに、ルテオリンの抗炎症作用を示した基礎研究が報告されていました。
(Planta Med 2007; 73: 221-226)


研究では、マウスを対象に急性および慢性の抗炎症活性が検証されています。

実験の結果、10mgおよび50mg/kgのルテオリン経口投与によって、浮腫が抑制されたということです。
抗炎症活性は、白血球数やプロスタグランジン等の解析によっても示されています。

実験では、作用機序として、COX-2阻害を介したメカニズムが示唆されました。


少し前になりますが、米国ではCOX-2阻害剤の使用が副作用のために中止になりました。
そこで、米国では、COX-2阻害作用を有する薬用植物や機能性食品素材の成分が注目されています。


現在、多くの生活習慣病・動脈硬化性疾患において慢性炎症の関与が示唆されており、炎症を抑制するような食習慣の重要性が認識されています。

少し積極的な介入法として、抗炎症作用を持つ植物性成分やオメガ3系脂肪酸がサプリメントとして利用されています。
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オリーブオイルによる抗炎症作用 [2007年04月23日(月)]
エクストラ・バージン・オリーブオイルによる食後の抗炎症作用・抗酸化作用を示した臨床研究が報告されています。
(Atherosclerosis. 2007; 190: 181-6)


今回の研究では、脂質代謝が正常な被験者12名を対象に、150グラムのポテト+エクストラ・バージン・オリーブオイル摂取群、あるいは+オリーブオイル摂取群、または+コーンオイル摂取群の3群に分けて、食後1,2,6時間後の血漿サンプルが採取され、各種の臨床指標が検討されました。

その結果、エクストラ・バージン・オリーブオイル摂取群のみにて、炎症マーカー(TXB2やLTB4)の減少(改善)が認められたということです。


今回の研究結果から、地中海式ダイエットによる心臓病予防作用メカニズムの一つとして、オリーブオイルによる抗炎症作用が示唆されます。

(同じオリーブオイルでも、エクストラ・バージン・オリーブオイルの効果が期待されます。)
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バコパ・モニエラの神経細胞保護作用 [2007年04月22日(日)]
インド伝統医療アーユルヴェーダで利用されてきたハーブに、ブラミ(brahmi) (学名バコパ・モニエラBacopa monniera)という多年草があります。

今月の生薬学のジャーナルに、アルミニウム塩によって生じる中枢神経細胞障害がバコパ・モニエラ投与によって軽減されるという基礎研究が報告されていました。
(J Ethnopharmacol. 2007;111:56-62.)


各種のアルミニウム塩は、酸化ストレスを亢進することで、細胞内のタンパク質や脂質を障害することが知られています。

今回の研究では、ラットに塩化アルミニウムを1ヶ月間経口投与し、バコパ・モニエラ併用投与群を対照(ポジティブコントロール)群と比較した結果、生薬併用投与群でも神経細胞におけるアルミニウム塩誘導性酸化障害の減少が認められたということです。

サプリメントとしてのバコパ・モニエラは、認知機能改善やADHD改善、炎症性腸疾患改善を目的に利用されることがあります。

ヒトを対象にした予備的な臨床研究では、認知機能改善作用が示唆されています。
今後の研究が期待されるハーブの一つです。
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ラブラドルティの働き [2007年04月21日(土)]
北米の先住民が利用してきたラブラドルティ(Labrador tea、学名Ledum groenlandicum)というハーブがあります。

伝統医療では、炎症性疾患に対して用いられてきたということです。


また、ラブラドルティは、アロマセラピーで使われる精油(エッセンシャルオイル)の一つとしても知られています。


今月の生薬学のジャーナルに、ラブラドルティ(葉および小枝)のメタノール抽出物の働きを調べた基礎研究において、抗酸化作用、抗炎症作用、抗がん作用を認めたというデータが報告されていました。
(J Ethnopharmacol. 2007;111:22-28)

ただし、これらは実験室でのデータですので、今後、臨床研究による検証が期待されます。
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アンドログラフィスによる肝臓保護作用 [2007年04月20日(金)]
アンドログラフィス(学名andrographis paniculata、和名:穿心蓮 センシンレン)というハーブがあります。

南アジアを中心に伝統医療で利用されてきた薬用植物です。


生薬学のジャーナルの今月号に、アンドログラフィスによる肝臓保護作用を示した基礎研究が発表されていました。
(J Ethnopharmacol. 2007;111:13-21.)


研究では、マウスに対して、アンドログラフィス由来の成分(andrographolideとarabinogalactan)を腹腔内に7日間投与し、続いてエタノールが同様に腹腔内に投与されました。

対照として、マリアアザミの有効成分であるシリマリンが利用されています。


アウトカムとして各種の肝逸脱酵素が測定された結果、アンドログラフィスの投与(500 mg/kg)によって、シリマリンと同等の肝臓保護作用が示されたということです。


このデータは基礎研究としては重要ですが、非経口投与であるため、臨床的意義は不明です。

経口摂取で利用される生薬についての研究なのに、なぜ、実験プロトコールが非経口投与になっているのか、不思議です。

(といっても、実験方法が実際の利用法を反映していないといったことはよくあります。
一般論ですが、生薬成分が含まれていると動物が摂食しない、という問題が生じることもあります。)


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メタボ@健康日本21中間評価報告書 [2007年04月19日(木)]
健康日本21の中間評価報告書では、2000年の策定時にはなかった項目が新たに追加になっています。

具体的には、「メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)」に関連した項目で目標値が設定されました。


それによると、
「メタボリック・シンドローム(内臓脂肪症候群)を認知している国民の割合の増加」
という項目が追加され、全国平均(20歳以上)を対象として
「80%以上」
という目標値が設定されています。



最近では、「メタボ」というだけで何となく意味が通じるようになっているように思います。

すでに、メタボ対策の医薬品やサプリメント、健康器具を販売するメーカーの宣伝によって、メタボリック・シンドロームについては比較的認知されているのではないでしょうか。


「生活習慣病」に続く、新しい疾患概念を国が啓蒙することは、製薬メーカーも含めて、メタボ対策関連商品を持つ民間企業にとっては利益につながるのかもしれません。

ただし、国が施策として、名前の認知度に関する目標値を設定するほどの必要性はあまりないようにも思います。

(もちろん、メタボの人が、それに気づくことで、行動変容を介して、生活習慣病を予防できるというメリットもあるとは思いますが。)


その他、「メタボリック・シンドロームの該当者・予備軍の減少」(対H20年比でH24/27年に10/25%減少)や「メタボリック・シンドロームの概念を導入した健診・保健指導の受診者数の向上」といった項目に関して、数値目標が設定されています。
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休養・こころの健康づくり@健康日本21中間評価報告書 [2007年04月18日(水)]
「健康日本21」では「休養・こころの健康づくり」という分野があり、目標項目と目標値が設定されています。

具体的には、「ストレス」や「睡眠」についての項目です。


今回の中間評価報告書では、改善した項目と悪化したものと、両方が混在していました。


まず、「ストレスを感じた人の減少」という項目では、開始時の54.6%に対して、中間実績値では62.2%と逆に増加(悪化)しています。

(ちなみに目標値は、49%以下です。)


一方、「睡眠による休養を十分にとれていない人の減少」では、開始時の23.1%が、中間実績値では21.2%と減少(改善)しました。

(目標値は21%以下。)


ただし、「睡眠の確保のために睡眠補助品やアルコールを使うことのある人の減少」では、開始時には14.1%だったのが、中間実績値では17.6%へと増加しています。

(目標値は13%以下)


睡眠の質については、改善の余地があることを示唆するデータです。
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コンドロイチンの総説 [2007年04月17日(火)]
内科学の専門ジャーナルにコンドロイチンに関する総説が掲載されていました。
(Ann Intern Med 146:580-)


これまでに報告された臨床研究をメタ分析という方法で検討した総説です。

結論として、明確な効果は認められないとなっています。

(比較的規模の大きい臨床試験では効果が認められず、少数の被験者を対象にした研究では効果が示されており、それらを平均したメタ分析では、有意差が認められなかった、という結論です。)



では、「コンドロイチンは関節症の痛みに効果がないのか」、「摂取しても意味がないのか」という疑問が生じると思います。


この内科学の専門ジャーナルには、この論文についての論説が掲載されています。

それによると、論説の執筆者は、コンドロイチン・サプリメントの摂取をやめるように助言することには賛成していません。

逆に、「コンドロイチンが効いているというのであれば、その効果が得られる限り、患者がコンドロイチンの服用を続けることに何も害はない」
といっています。(D. Felson)



一般的なアドバイスとして、

「コンドロイチンとグルコサミンの併用投与によって、十分な効果が期待できる」

と考えています。




さて、今回の論文について、本文および図表をよく見ると、コンドロイチンの効果を示唆するデータが比較的多いように思います。

(用法・用量、投与期間、エフェクトサイズといった条件が異なるこれらの臨床試験を加重平均したメタ分析の結果、効果についての有意差はない、というのが論文の抄録です。しかし、図表を丁寧に見ると、必ずしも的確な要約とはいえないと感じました。)

(今回の論文では、研究の規模、実施時期などいろいろな視点から、解析結果が分類されています。そのため、コンドロイチンの有効性と安全性について、臨床研究の傾向を判断する際の参考になります。)



この総説の限界として、質やサイズの異なる臨床研究を集めたという点が考えられます。
(これについては、著者自身も指摘しています。)


一般に、医薬品成分と比べて、介入効果の大きくない健康食品素材の有効性を評価する際、方法の異なる臨床試験をまとめたメタ分析の手法が適切かどうか、慎重に検討する必要があります。

言い換えれば、臨床研究におけるヒエラルヒーを再検証することが求められます。


今後、コンドロイチンの有効性の検証についても、新しい評価指標/バイオマーカーによる質の高い臨床試験が必要と考えられます。

その上で、どのような病態に対して、どのようなタイミングで、どの用法用量にて投与すれば、最大の効果が得られるのか、わかるようになると思います。
posted at 23:43 | この記事のURL
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健康日本21中間評価報告書 [2007年04月16日(月)]
先日(4/10)、「健康日本21」の中間評価報告書が公表されました。

「健康日本21」とは、「21世紀における国民健康づくり運動」のことで、2000年に策定されました。

健康日本21の目的は健康寿命の延伸等です。

栄養や食生活、身体活動、各種疾病等について、2010年度を目途とした具体的な数値目標が掲げられています。

最終評価は2010年度になりますが、先日、中間評価報告書が公表されました。


分野別の数値をみると、目標に近づきつつあるもの、つまり改善しつつあるものもありますが、逆に悪化している点もあります。

例えば、栄養・食生活、身体活動・運動の分野での目標値と達成状況は、次のようになっています。


まず、脂肪エネルギー比率の減少という項目では、20-40歳代にした目標値が25%以下と設定されています。開始時には27.1%でしたが、今回の中間実績値では26.7%と改善傾向にあります。

食塩摂取の減少という項目でも、成人を対象にした1日あたりの摂取量の目標値が10グラム未満に対して、開始時が13.5グラム、中間実績値が11.2グラムと改善傾向が認められています。


一方、野菜の摂取量の増加という項目(対象:成人)では、1日あたり350グラム以上の摂取という目標に対して、開始時が292グラム、中間実績値が267グラムでした。

その他、「カルシウムに富む食品の摂取量の増加(成人)」でも、開始時と比べて中間実績値では十分な成果が示されていません。


中間評価における改善点として、脂肪エネルギー比率や女性の肥満者の増加に歯止めがかかり、脳卒中や虚血性心疾患では死亡率の改善傾向がみられています。

一方、中高年の男性では、高血圧や糖尿病といった生活習慣病の問題がより深刻になっているようです。


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イブプロフェンとSJW [2007年04月15日(日)]
セントジョーンズワート(SJW)は、軽症から中等症のうつ病に対して十分な効果が示されているハーブです。

単独で利用する場合には高い許容性を示されており、適切な用法・用量での利用時には安全性が確認されています。


一方、SJWは薬物代謝酵素であるチトクロームP450やP糖タンパク質の誘導作用により様々な医薬品との相互作用が報告されてきました。
そのため、医薬品との併用には注意が必要です。



先日発表された臨床研究では、SJWによるイブプロフェンへの影響が検討されています。
(Ann Pharmacother. 2007;41:229-34.)

イブプロフェンは、代表的な非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAID)の一つです。

イブプロフェンの代謝には、P450のうちCYP2C9が関与します。
SJWは、CYP2C9活性に影響することが知られています。


今回の臨床試験では、健康な男性8名に対して、SJWが3週間経口投与され、その後、イブプロフェンが単回投与されました。

(SJWの用法用量は900mg(分3)/日、イブプロフェンは400mg単回。)

試験の結果、SJW投与によって、イブプロフェンのAUCやCmaxでの有意な変化は認められていません。

この研究から判断すると、SJWの摂取が、イブプロフェンの単回服用時に臨床的な影響を与えることはなさそうです。


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オセルタミビル vs エキナセア [2007年04月14日(土)]
抗インフルエンザウイルス剤(リン酸オセルタミビル)の効果は、発症初期に投与することで罹病期間を1日短縮するというものです。


用法および用量は、

1. 治療に用いる場合  

通常、成人及び体重37.5kg以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日2回、5日間経口投与する。 

2. 予防に用いる場合  

通常、成人及び13歳以上の小児にはオセルタミビルとして1回75mgを1日1回、7〜10日間経口投与する。 

となっています(添付文書参照)。




治療に用いる場合の注意点として、

治療に用いる場合には、インフルエンザ様症状の発現から2日以内に投与を開始すること

(症状発現から48時間経過後に投与を開始した患者における有効性を裏付けるデータは得られていない)。 

とあります。



添付文書には、日本人を対象にしたランダム化比較試験のデータが記載されています。

それによると、各群5日間の投与によるインフルエンザ罹病期間は、

リン酸オセルタミビル投与群122例)では70.0時間、

偽薬群(130例)では93.3時間

でした。



臨床試験データからは有効性はありそうですが、特効薬というほどではなさそうです。

また、24時間(1日)の罹病期間短縮効果については、臨床的意義やリスクベネフィット(危険性と便益)の考慮といった判断が利用者に求められると思います。



ところで、サプリメントでは、風邪症候群やインフルエンザに利用されるものとして、エキナセアがあります。

エキナセアの臨床試験データをみると、オセルタミビルと同等の効果(罹病期間を1日程度短縮する効果)が期待でき、かつ副作用が少ない(エキナセアでは重篤な有害事象は知られていません)と思われます。


エキナセアも、症状発現の初期に摂取を開始することがポイントです。

(臨床試験における摂取期間は、1週間程度が一般的。)



費用対効果およびリスクベネフィットといった視点からは、オセルタミビルよりもエキナセアのほうが好ましいと思います。
(現時点での科学的根拠を俯瞰した上での私見です。)



もちろん、ハーブや処方箋薬を使わずに安静にして経過を見るという選択肢もあります。

(ただし、基礎疾患がある場合や合併症の所見が現れる場合には、早急かつ適切な処置が必要になることもありえます。)
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研究と利害の衝突についてのルール作成 [2007年04月13日(金)]
昨日のブログで紹介しましたように、10年前に米国の主流医学ジャーナルにおいて、研究における利害の衝突が科学的な中立性に影響を与えたというデータが報告されています。


その後、米国では、

「利害の衝突に関する情報公開」

のルール作成が行われてきました。


その結果、例えば専門ジャーナルに研究を投稿する場合や学会発表の際、研究費の内訳や保有株券の有無などを記載する必要があります。



つまり、「利害の衝突」の指針は、

「企業から研究費等を供与されてはいけない」のではなく、

「研究費をもらっているなら明記せよ」という趣旨

です。



(いま、話題になっている抗インフルエンザウイルス剤のケースでは、研究者の一部は、製薬企業から研究費を受け取ることの是非について、あらかじめ厚労省に確認をとっています。
この点では、厚労省の対応のまずさが問題かもしれません。)




現実的には、基礎研究でも臨床研究でも、あるいは有害事象の調査であっても、ある特定の研究分野に詳しい専門家を選ぶ結果、同じ医師や研究者が選ばれる可能性が高いと思います。



(逆に、利害関係が生じるリスクを避けるのであれば、まったく専門分野の違う大学の先生や研究者に研究を依頼すればいいことになります。

ただし、専門外の人に依頼した場合、研究の高い水準が保てるのか、専門的な知識をふまえた上で適切な議論できるのか、疑問が残ります。)



例えば、ドイツのコミッションEを英訳したことで知られる、アメリカのハーブの専門家は、たくさんの製薬企業から研究協力を得ています。

優れた研究者であれば、それだけ、依頼も多いと思います。

(私は、彼のプレゼンを何度も聞いたことがありますが、利害の衝突による中立性への影響があるとは感じられませんでした。)



(一方、日本で、サプリメント・健康食品について、メディアでコメントしたり、一般向けの本を監修したりしている医師や研究者、NPO関係者の中には、とても専門家とはいえない人たちが少なからずいます。
私は、それらの人たちを欧米の関連学会で見かけたことはないですし、彼らの発言内容も勉強不足であると感じることが多々あります。)



なお、当然ですが、研究費という利害関係とは無関係に、科学的公平さに基づいた研究論文や総説はたくさん存在します。



現在のルールでは、

研究者は研究発表時や論文執筆時に研究資金源を明らかにし、読者(他の研究者)は、それを知った上で論文の内容を判断する

と、私は理解しています。




欧米の専門ジャーナルに研究発表する場合、このルールは厳密に適応されていると思います。

ただし、日本国内ではあまり厳密ではないようです。

さらに、サプリメント・健康食品については、まだまだ情報公開が不足していると思います。

(私個人は、肩書きをすべて公開しています。しかし、そうではない人たちも少なくないようです。)

日本でも、欧米のように、利害関係についての情報公開を行いつつ、産学(産官学)共同研究を推進するべきと考えています。
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研究と利害の衝突@抗インフルエンザウイルス剤 [2007年04月12日(木)]
先日、抗インフルエンザウイルス剤による有害事象(異常行動)の調査に関連して、薬の副作用を調査する研究班の大学教授が、製薬会社から寄付金を受け取っていたことが問題になりました。

製造販売を行う製薬会社から寄付金を受け取っている場合、調査研究の公正さに疑念が起きるという理由です。

(なお、担当の教授は、「寄付が研究結果に影響することはない」というコメントを発表しています。)

(一般に、このような研究では複数の分担研究者がおり、データが客観的に処理され、公表される場合、恣意的な判断が入り込む余地はあまりないとも考えられます。)


抗インフルエンザウイルス剤と異常行動との因果関係については、今後の研究により明らかになると思います。


今回の件について、寄付の有無が研究結果に影響を与えたのかどうか、現時点では不明です。


ただし、誤解を生じる行為がないように、研究者側も留意するべきでしょう。



さて、現在、医学・医療の世界では、2種類の事象が起こっており、その変化に見合った指針やルールの作成が求められているようです。

2種類の事象とは、「研究における利害の衝突」と「産学(産官学)共同研究の推進」です。


まず、「研究における利害の衝突」についてです。

過去の事例として、「研究の中立性」・「科学的公正さ」に「利害の衝突」が影響を与えたらしいことが報告されています。

例えば、高血圧の治療に広く用いられているカルシウム拮抗薬の安全性についての研究があります。

1998年にニューイングランドジャーナルオブメディシンに報告された研究によると、

--カルシウム拮抗薬の安全性に関する70編の論文を検討。
--製薬企業と研究論文の著者との利害関係を調査。
--その結果
   同薬の使用に:       賛成  中立   反対
製薬企業との利害関係のある割合  96%  60%  37%
                (p<0.001)
となっています。
(Stelfox 1998 NEJM)

つまり、

カルシウム拮抗薬の使用に賛成した医師(あるいは研究者)は、(研究費などの点において)製薬企業との利害関係を持っている確率が有意に高い、というデータです。


もう一つ、「利害の衝突」が「科学的公正さに影響」を及ぼした研究として、「受動喫煙の危険性」の例を紹介したいと思います。

この研究は、
「受動喫煙の健康への影響に関する総説の内容が異なるのは何故か」
という疑問について検証したものです。

--106編の論文を分析、そのうち39編(37%)は「受動喫煙は健康に有害ではない」という結論。
--39論文の著者のうち、29論文(74%)の著者がタバコ会社から研究費を受け取っていた。


--多変量解析の結果、「タバコ会社との利害関係がある」研究者が、有意に高い割合で「受動喫煙の危険性を否定する」論文を書いていた(オッズ比88.4)。

と報告されています。
(Barnes 1998 JAMA)


利害の衝突による公正さ・中立性への影響を指摘したいずれの論文も、医学ではメジャーな専門誌に発表され、注目されました。

ただし、これは10年ほど前の論文です。

現在では、研究の在り方について、さまざまなルールが整備され、中立性・公正さを保つようになりつつあります。


ところで、もう一つ、近年の日本の動向で、懸念を生じうる事項は、「産学(産官学)共同研究の推進」です。

現在、国立大学が独立行政法人化され、研究費の獲得も含めて、競争原理が働くようになっています。

民間企業との共同研究・産学共同研究の推進は、政府の施策の結果です。

そのため、利害の衝突が生じやすい環境が生まれています。

かといって、時代を逆戻りするというのは現実的ではないですし、日本の研究レベルをあげるという視点からも、産学協同・産官学共同による研究推進は必要と考えます。

(日本の場合、たいていの大学の研究費よりは、大企業の研究費のほうが明らかに多いという現実があります。)


では、研究の中立性や公正さに影響を与える(可能性のある)「利害の衝突」について、解決するには、どのような方法があるのでしょうか。

(続きは明日述べさせていただきます。)
posted at 23:56 | この記事のURL
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カカオの高血圧改善作用(総説) [2007年04月11日(水)]
今月の内科学専門ジャーナルに、カカオによる高血圧改善作用を示した総説が掲載されていました。
(Arch Intern Med. 2007;167:626-634.)


これまでの疫学研究によって、ポリフェノールの多いカカオ(ココアやチョコレート)あるいは緑茶の摂取が多いと、高血圧を改善することが示唆されています。


そこで、今回、ドイツのケルン大学のグループが、ランダム化比較試験によってカカオの高血圧改善作用を検討した論文を集めて解析を行いました(メタ分析というタイプの研究方法です)。


対象となったランダム化比較試験の条件は、被験者10名以上、投与期間7日間以上などです。


カカオを投与した研究として、5個の臨床試験が検出され、合計173名のデータが解析されました。

カカオ(ココアあるいはチョコレートなどのカカオ豆含有製品)の平均投与期間は2週間です。


その結果、非投与群に比べて、カカオ投与群では、収縮期血圧は4.7mmHg低下(P=0.002)、拡張期血圧は2.8mmHg低下(P =0.006)したということです。



このメタ分析からは、カカオの摂取が高血圧を改善するといえるでしょう。

(血圧の低下幅はあまり大きくないように感じられるかもしれませんが、心臓病や脳卒中といった高血圧に関連する疾患のリスクを有意に減少させるには十分ですので、臨床的な意義はあります。)



ただし、高血圧改善のために積極的にカカオを摂取しましょう、ということにはならないと思います。


一般に、カカオ製品は、甘味料が添加されており、高エネルギー食です。

そのため、チョコレートやココアといった製品を多量に摂取するのは好ましくないと考えられます。

(なお、南米の伝統的な摂取方法に従ってカカオ豆を摂取するのであれば、問題は少ないかもしれません)
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