葉酸は、高ホモシステイン血症を改善し、動脈硬化性疾患の予防や脳萎縮抑制により、脳卒中や認知症を予防するエビデンスが確立しています。
具体的には、食品への強制添加や葉酸サプリメントの摂取により、脳卒中の死亡率が減少することがメタ解析で確立しています。
一方、
ネット記事なのでは、葉酸の摂取が大腸ポリープや大腸腺腫のリスクを高めるのでは?、といった記述をみることがあります。
これまでの多くの検証の結果、葉酸の摂取が大腸ポリープのリスクに影響を与えることはないこと、
むしろ、葉酸により大腸がんリスクが減少することが示されています。
葉酸の摂取と、大腸ポリープの関連については、いくつかのメタ解析やレビューが報告されています。
例えば、がん研究の専門ジャーナルに、米国のグループ(University of Southern California)からレビューが報告されています。
(Int J Cancer. 2011 Jul 1;129(1):192-203.)
まず、先行する観察研究では、
葉酸が不足していると、大腸腺腫や大腸がんのリスクを高めることが報告されてきました。
(PMID:12163691、15499620、19661077)
一方、
疫学研究や動物実験では、
葉酸サプリメントや血中葉酸値と、大腸がんリスクとの相関も示唆されてきました。
(PMID:19541855)
そこで、
今回のレビュー論文では、
エビデンスレベルの高い検証法として、
大腸腫瘍リスクに対するサプリメントの介入試験が調べられています。
5報のランダム化比較試験が対象となりました。
これらのRCTでは、
大腸腺腫の既往歴があり、
大腸腺腫のリスクが高い群に対する葉酸サプリメントの再発予防効果が検証されています。
2報では、予防効果が見出されました。
(PMID:18680228、 7995171)
一方、他の2報では、有意な予防効果は見出されませんでした。
(PMID: 17551129(AFPPS研究)、PMID:18022173(ukCAP研究))
例えば、Aspirin/Folate Polyp Prevention Study (AFPPS)という研究では、1mgの葉酸サプリメントが3年間、投与されましたが、大腸腺腫のリスクについて、偽薬投与群との間に有意差は認められませんでした。
(PMID: 17551129(AFPPS研究))
AFPPS研究の結果は、次のように報告されています。
3年間の試験期間中、
987名(96.7%)の被験者が大腸内視鏡検査でフォローアップされ、
少なくとも1つの大腸腺腫が見出された被験者は、
葉酸群では44.1% (n = 221)、
偽薬群では42.4% (n = 206)でした。
(有意差ナシ: RR, 1.04; 95% CI, 0.90-1.20; P = .58)
次に、
進行病変(advanced lesion;2p以上の腺腫や粘膜内がん、繊毛状腺腫、粘膜下層への浸潤がん)が1つ以上、見出された被験者の割合は、
葉酸摂取群では11.4% (n = 57)
偽薬摂取群では8.6% (n = 42)
であり、両群間に有意差は認められませんでした。
(RR, 1.32; 95% CI, 0.90-1.92; P = .15)
続いて、
607名 (59.5%)が2次フォローアップを受けており、
1つ以上の大腸腺腫が見つかった割合は、
葉酸群では41.9% (n = 127)、
偽薬群では 37.2%(n = 113)
であり、両群間に有意差ナシ
(RR, 1.13; 95% CI, 0.93-1.37; P = .23)
さらに、
1つ以上の進行病変(advanced lesion)が見つかった割合は、
葉酸群の11.6% (n = 35)、
偽薬群の6.9% (n = 21)
でした。
(両群間に有意差あり。 RR, 1.67; 95% CI, 1.00-2.80; P = .05)
この2次フォローアップのところで、有意差があるということで、この研究のこの部分だけが、一人歩きして、葉酸サプリメントのネガティブキャンペーンによく引用されています。)
なお、論文の結論では、
「葉酸1mgは、大腸腺腫リスクを低減しなかった」
と述べられています。
他の研究者の報告では、大腸腺腫の既往歴を有する被験者では、
1mgの高用量の投与による影響があるのかもしれない、と考察されています。
また、
United Kingdom Colorectal Adenoma Prevention (ukCAP) trialでは、
葉酸0.5mgが投与されましたが、偽薬投与群と有意差は見出されませんでした。
(PMID:18022173(ukCAP研究))
なお、
「Nurses’ Health Study/Health Professionals Follow-up Study (NHS/HPFS)」では、
全体の解析では、葉酸によるリスク低減効果は見出されませんでしたが、
層別解析では、
アルコールの摂取用が多い群や、葉酸値が低い群では、リスク低下作用が検出されました。
この論文では、葉酸が大腸がんや大腸腺腫のリスクを上げることはない、と結論付けられています。
(PMID: 19864409)
葉酸サプリメントが大腸ポリープのリスクを上げる、というネットの情報は、このAFPPS研究での1000mgの投与試験の2次フォローアップのデータからの引用です。
しかし、アメリカでは、葉酸の強制添加後に大腸がん抑制効果が示されています。
そこで、今回の南カリフォルニア大学の研究では、
改めて、これらの5報の介入試験がメタ解析されています。
具体的には、
大腸腺腫の既往歴のある男女2,632名を対象に、
1日あたり0.5mgあるいは1.0mgの葉酸サプリメント
あるいは
偽薬が投与され、
6ヶ月から42ヶ月間(平均30.6ヶ月間)のフォローアップが行われました。
解析の結果、
葉酸投与群と偽薬投与群との間で、
大腸腺腫のリスクに有意差はなく、
(RR 0.98, 95% CI = 0.82-1.17)
進行病変についても有意差は認められませんでした。
(RR;1.06、95% CI = 0.81-1.39)
次に、
葉酸は、
血中葉酸値が4分位で最低群(≤ 11 nmol/L)の被験者において、
大腸腺腫のリスク低減傾向(有意差なし)が認められました。
一方、
血中葉酸値が4分位で最高群では有意な変化は認められませんでした。
(> 29 nmol/L, p for trend = 0.17)
また、
アルコールの摂取が多くなるにしたがって、
葉酸サプリメントの摂取により、
大腸腺腫リスク減少傾向が認められました。
また、フォローアップの初期の結果では、
葉酸摂取群よりも、
偽薬摂取群のほうで、
有意に高い死亡率が示されています。
(1.7% vs. 0.5%, p = 0.002)
以上のデータから、
大腸腺腫リスクの高い(既往歴のある)被験者において、
3.5年間、
葉酸を500㎍、あるいは1000㎍投与した結果、
腺腫リスクが症状することはない、といえます。
アメリカでは、1998年の葉酸強制添加以降、大腸がんが減少したという研究データが報告されています。
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