本日から代替医療に関する研究会議がミュンヘンで始まりました。
ICCMR(International Congress on Complementary Medicine Research)という会議です。
今日はいくつかのセッションが平行して行われ、私は
Challenges in Whole System Herbal Research
というワークショップに出てきました。
これは、薬用植物・ハーブの研究について、方法論や評価方法を議論するためのワークショップです。
現在、メタ分析ではランダム化偽薬対照二重盲検臨床試験がゴールドスタンダードになっています。
近代西洋医学による疾患概念に合致する病態に対して、化学的に合成された単一の成分を有効成分とする医薬品を投与し、その有効性を評価する場合には、RCTをゴールドスタンダードとしていいと思います。
しかし、近代西洋医学とは異なる体系を持つ伝統医療を評価する場合や、オーダーメイドの生薬・ハーブの複合剤を評価する場合、RCTが適切な評価方法とは思われません。
RCTで得られた結果は、医師や研究者を説得しやすいのは確かです。
一方で、代替医療や統合医療に関わる医師や研究者の多くは、RCTによる評価の限界も認識しています。
そこで、質的評価方法の応用や新たなバイオマーカーの確立といったことが必要になっています。
今日のプレゼンの中に、イギリスのグループから、中国伝統医療の生薬による子宮内膜症への効果を検討しているという予備的な研究報告がありました。
偽薬群には、有意な作用がない(と思われる)植物の複合剤が用いられていました。
何でもこの偽薬の作成に際して、西洋ハーブのトップクラスの専門家に相談して、いろいろと工夫したそうです。
中国の生薬に似せた偽薬は、本物と同じように非常に苦くてまずく、偽薬群の被験者は自分が偽薬になっているとは思っていなかったようだ、ということでした。
この苦くてまずい偽薬の主要成分の一つが、昨日のブログで紹介したチコリでした。
ところで今回のコングレスの主催者は、4年前にロンドンで設立されたISCMRという組織です。
(私も創立メンバーの一人になっています。)
昨年5月にエドモントンで統合・代替医療の研究に関する北米の研究会議が開かれたとき、ISCMRの役員会議もありました。
そのとき、日本からはA先生が出席され、私はY先生の代わりにボードメンバーを引き継ぐようにと推薦されたのですが、多忙のために役員会議への参加は辞退しました。
(日本からのポストを維持するという意味では、辞退すべきではなかったのかもしれませんが。)