昨日のブログで紹介しましたように、10年前に米国の主流医学ジャーナルにおいて、研究における利害の衝突が科学的な中立性に影響を与えたというデータが報告されています。
その後、米国では、
「利害の衝突に関する情報公開」
のルール作成が行われてきました。
その結果、例えば専門ジャーナルに研究を投稿する場合や学会発表の際、研究費の内訳や保有株券の有無などを記載する必要があります。
つまり、「利害の衝突」の指針は、
「企業から研究費等を供与されてはいけない」のではなく、
「研究費をもらっているなら明記せよ」という趣旨
です。
(いま、話題になっている抗インフルエンザウイルス剤のケースでは、研究者の一部は、製薬企業から研究費を受け取ることの是非について、あらかじめ厚労省に確認をとっています。
この点では、厚労省の対応のまずさが問題かもしれません。)
現実的には、基礎研究でも臨床研究でも、あるいは有害事象の調査であっても、ある特定の研究分野に詳しい専門家を選ぶ結果、同じ医師や研究者が選ばれる可能性が高いと思います。
(逆に、利害関係が生じるリスクを避けるのであれば、まったく専門分野の違う大学の先生や研究者に研究を依頼すればいいことになります。
ただし、専門外の人に依頼した場合、研究の高い水準が保てるのか、専門的な知識をふまえた上で適切な議論できるのか、疑問が残ります。)
例えば、ドイツのコミッションEを英訳したことで知られる、アメリカのハーブの専門家は、たくさんの製薬企業から研究協力を得ています。
優れた研究者であれば、それだけ、依頼も多いと思います。
(私は、彼のプレゼンを何度も聞いたことがありますが、利害の衝突による中立性への影響があるとは感じられませんでした。)
(一方、日本で、サプリメント・健康食品について、メディアでコメントしたり、一般向けの本を監修したりしている医師や研究者、NPO関係者の中には、とても専門家とはいえない人たちが少なからずいます。
私は、それらの人たちを欧米の関連学会で見かけたことはないですし、彼らの発言内容も勉強不足であると感じることが多々あります。)
なお、当然ですが、研究費という利害関係とは無関係に、科学的公平さに基づいた研究論文や総説はたくさん存在します。
現在のルールでは、
研究者は研究発表時や論文執筆時に研究資金源を明らかにし、読者(他の研究者)は、それを知った上で論文の内容を判断する
と、私は理解しています。
欧米の専門ジャーナルに研究発表する場合、このルールは厳密に適応されていると思います。
ただし、日本国内ではあまり厳密ではないようです。
さらに、サプリメント・健康食品については、まだまだ情報公開が不足していると思います。
(私個人は、肩書きをすべて公開しています。しかし、そうではない人たちも少なくないようです。)
日本でも、欧米のように、利害関係についての情報公開を行いつつ、産学(産官学)共同研究を推進するべきと考えています。
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