先日、ある女性誌の取材で、肥満遺伝子についての質問を受けました。
遺伝子のタイプで適切なダイエット法を示すという方法は、科学的に適切なのかといった内容の質問です。
結論としては、
「現時点のサイエンスは、太りやすさの原因や適切なダイエット法を、遺伝子で簡単に判定できるほどには到達していない」
ということになります。
臨床医学の見地から、太りやすい体質や痩せの大食いの体質があるのは明らかです。
そして、これらの体質は、その人の持っている遺伝子によって規定されています。
ただし、肥満遺伝子という一つの遺伝子があるわけではなく、肥満ややせという体質に関連する複数の遺伝子変異が存在するという説明が科学的に適切でしょう。
単一の遺伝子異常が原因で極端な肥満症を生じるケースもありますが、非常にまれです。
一般に、肥満という表現型は、(未知のものも含めて)複数の遺伝子変異と、生活習慣などの環境要因があわさった際に生じる、と考えられます。
肥満に関連する遺伝子変異については、日本人でよく研究されているものも確かに存在します。
ただし、まだまだ研究途上であり、病院の専門外来でも、肥満について遺伝子を調べて適切な食事療法や運動療法をオーダーメイドで実施するというレベルには達していません。
理化学研究所の遺伝子多型研究センターには、肥満関連遺伝子研究チームがあり、数年前から、文科省の予算で研究が進められています。
現在、日本人を対象にした研究が国の予算で進行している状況ですので、例えば遺伝子型ダイエットといったものは、単なるはやりのダイエットの一つであることがおわかりいただけると思います。
ちなみに3月に、肥満関連遺伝子研究チームから専門ジャーナルに論文が発表されています。(
J Clin Endocrinol Metab. 2007;92:1145-54.)
(私も少しだけですが関与していますので、論文著者の一人になっています。)