サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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DHAの低用量摂取が拡張期血圧を低下 [2007年04月05日(木)]
今月号の栄養学の専門ジャーナルに、DHAを比較的低用量で摂取すると、中年期の男性において拡張期血圧が低下した、という研究が報告されています。
(J. Nutr. 2007 137: 973-978.)


DHAは、オメガ3系多価不飽和必須脂肪酸の1種で、青魚に豊富に含まれます。

魚の摂取が多いと、心臓病が少ない、うつ病が少ない、といった疫学データが示されており、欧米ではオメガ3系必須脂肪酸の健康保持機能や疾病予防効果が注目されています。


さて、今回の研究では、1日あたり1グラム以下のDHAを摂取したときに、血圧や血管機能にどのような効果をもたらすか、検討されました。

健康な男女38名(40-65歳)を対象に、1日あたり0.7グラムのDHA、あるいは、偽薬が3ヶ月間、ランダム化二重盲検クロスオーバー偽薬対照法にて投与されました(wash-outは4ヶ月間)。

DHAサプリメント投与の結果、偽薬群に比べて、赤血球の脂質におけるDHAの割合が58%増加しました。

拡張期血圧は、偽薬群に比べてDHA投与群において、3.3mmHg低下しています(P = 0.01)。

心拍数は、DHA投与群のほうが2.1拍/分少ないというデータです(有意差なし)。

なお、動脈コンプライアンス、血漿CRP値、thrombomodulin、E-selectin、von Willebrand factor antigenといった指標には変化は認められていません。


以上のデータから、DHAの摂取は、拡張期血圧を低下させる効果があると示唆されました。



posted at 23:47 | この記事のURL
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αリノレン酸の抗炎症作用 [2007年02月25日(日)]
食事由来のαリノレン酸(ALA)による抗炎症作用が米国の研究グループから報告されました。
Am J Clin Nutr 2007 85: 385-391)


動脈硬化症は、慢性炎症性疾患の一つととらえられています。

これまでの研究によって、高コレステロール血症患者を対象にした研究において、食事に由来するALAの摂取量が多いと、脂質代謝を改善し、炎症性心血管リスクを低減することが示唆されています。

ALAは、DHAやEPAと同じオメガ3系必須脂肪酸の1種です。

しそ油や亜麻仁油、ごま油などがALAを多く含んでいます。




さて、今回の研究では、試験食を摂取した被験者の培養末梢単核球を用い、高ALA食による抗炎症性サイトカイン濃度への影響が検討されました。


高コレステロール血症23名を対象に、ランダム化クロスオーバー法にて、3種類(高ALA食、高リノール酸食、平均的な米国食)の試験食が6週間投与されました。


その結果、高リノール酸食や平均的な米国食に比べて、高ALA食摂取群では、IL-6, IL-1およびTNF-αの産生が有意に低下し、TNF-αの血中濃度が有意に低下していました。


このデータから、ALAの多い食事を摂取すると、いくつかのサイトカイン類の産生が抑制され、その結果、抗炎症効果が得られると考えられます。
posted at 23:21 | この記事のURL
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オメガ3系脂肪酸がアルツハイマー病の進行を遅らせる [2006年10月11日(水)]
軽度のアルツハイマー病患者に、オメガ3系脂肪酸のサプリメントを投与したところ、症状の進行が抑制されたという臨床試験が報告されました。


試験で利用されたオメガ3系脂肪酸サプリメントの成分は、DHAとEPAです。


今回の臨床試験は、さまざまな程度の症状を示す204名のアルツハイマー病患者を対象に行われました。

対象者には、1日あたり
@1.7グラムのDHAと0.6グラムのEPA、
あるいは
A偽薬
が6ヶ月間投与されました。

その後、全員がオメガ3系脂肪酸を6ヶ月以上投与されています。

174名が試験を完了しました。


その結果、患者群全体で平均してみるとき、オメガ3系脂肪酸サプリメントによる効果は明確ではありませんでした。

しかし、患者のサブグループ解析によると、軽症のアルツハイマー病患者(MMSE>27ポイント)において有意な効果(つまり症状進行の抑制作用)が示されています。



オメガ3系脂肪酸がアルツハイマー病に効果を示すメカニズムはよくわかっていません。
仮説として、例えば、抗炎症作用による働きも考えられます。


今回の試験で、軽症患者にのみ有意な効果を認め、より進行した患者には効果が示されなかった理由として、進行した患者では(食事性因子に由来するサプリメントのみでは)『すでに手遅れ』ということかもしれません。


アルツハイマー病に対するオメガ3系脂肪酸サプリメントの有効性について、さらに臨床試験が必要と考えられます。
posted at 23:05 | この記事のURL
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魚の値段(2) [2006年10月07日(土)]
昨日のブログでは、魚の需要と供給について、欧米での健康志向の高まりとの関連を推測してみました。


オメガ3系脂肪酸(DHAEPA)を主体とする魚油の機能性については、たくさんの臨床試験で多彩な効果が示されています。


これまでの臨床試験では、下記のような疾患や病態での検証が報告されています。

心臓病(虚血性心疾患)、高血圧、動脈硬化、高脂血症(高中性脂肪血症)、うつ病、双極性障害、白内障、月経不順、その他。



最近では、さまざまな疾患と炎症との関係がわかっており、オメガ3系脂肪酸の抗炎症作用に注目が集まっています。







私事ですが、海外から東京を訪問中の研究者を案内して、築地市場にも足を運んでいます。


posted at 23:59 | この記事のURL
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魚の値段 [2006年10月06日(金)]
90年代の後半、ニューヨークに住んでいたとき、近所に行きつけのすし屋がありました。

いい寿司ネタが入ると、顔見知りになった日本人のオーナーシェフがメニューにはない寿司を出してくれました。

その頃、既にニューヨークには、比較的いい魚介類の食材が入ってきていたようです。

ただ、そのシェフが、

「本当に特上の寿司ネタは、やっぱり東京にいってしまいます」

といったことがあります。

そのときは、そんなものなのかな、と思いました。



さて、最近、マグロなど魚介類の値段が上がっているというニュースを見聞きする頻度が増えたように感じられます。

近年の魚介類の値段上昇について、マスコミでは、いろいろな理由が推測されているようです。

例えば、漁業資源の減少による需要と供給の不均衡、原油価格の上昇による調達コストの上昇、海外での日本食ブームなどがあります。

その他、重要な理由の一つに、機能性食材としての魚介類の認知度が高まったことがあげられます。

つまり、魚に含まれるオメガ3系脂肪酸などの機能性が明らかになるにつれ、海外における健康志向の高い消費者による摂取量が増え、需要が拡大していると考えられます。


かつて、魚介類に関しては、日本が唯一の消費大国であり、商社などが大量にかつ比較的安価に買いつけることができたのだと思います。


ところが、欧米での魚介類の消費量の増大、BRICs諸国の中産階級による購買力の増大といった影響が需要と供給の不均衡を生じているようです。

この10年ほどの間に、臨床研究が行われ、うつ病、高脂血症、心臓病などさまざまな疾患に対する効果が報告されています。

そして、欧米のマスメディアでは、魚油(オメガ3系脂肪酸、DHA、EPA)が健康にいい影響を与えるというデータが報道されてきました。

その結果、欧米などの海外諸国で、魚介類の需要が大きく伸びる一因となったと推測されます。
posted at 23:46 | この記事のURL
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