天然型ミネラルサプリメント摂取によって膝関節症の症状が軽減したという臨床研究が、アメリカのグループから報告されていました。
(PMID: 18279523, Nutr J. 2008;7:9.)
この研究は、海藻類に由来する天然型のマルチミネラルサプリメントの投与が、膝関節症患者の歩行距離に及ぼす影響を検討した予備的な臨床試験です。
中等度から重症の膝関節症患者70名を対象に、1.グルコサミン硫酸塩1500mg/日、2.海藻由来ミネラル2400mg/日、3.両剤の併用、4.偽薬の4種類が、二重盲検ランダム化法にて12週間投与されました。
主アウトカムとして、WOMACスコアと6分間の歩行距離(6 MWD)が測定され、50名の被験者が試験を完了しています。
その結果、1と2の各群で、WOMACのスコア(painやstiffness)に、有意な変化(改善)が認められたということです(それぞれp = 0.0039、p = 0.013、ANOVA)。
なお、WOMACの疼痛(pain)スコアについては、各群での有意差が認められていますが、前値も異なるため、解釈には注意が必要です。
グルコサミンあるいは海藻抽出物の投与群において、試験期間を通じた有意な症状の改善効果が認められています。
(一方、両群併用では偽薬と有意差がありません。両群併用群では、前値のスコアが最も高いことによる影響があるとも考えられます。)
また、歩行距離についても、海藻ミネラル投与群およびグルコサミン投与群にて、それぞれ延長(改善)が示されました。
許容性は高く、いずれの群においても有意な有害事象は示されていません。
以上のデータから、論文著者らは、海藻由来のマルチミネラルによる膝関節症に対する効果が示唆されると考察しています。
一般に、膝関節症に対しては、グルコサミンやコンドロイチンの効果が知られており、サプリメントでは第一選択になる成分です。
一方、マルチミネラルは、ベーシックなサプリメントですので、関節症に対する特異的な作用があるとは考えにくいと思います。
ただ、潜在的な摂取不足がある場合などでは、何らかの作用が期待できるのかもしれません。
(例えば、今回の試験の併用群にて効果が認められなかった理由として、2種類の製剤におけるpHの相違による相互作用なども可能性としてあります。
また、海藻抽出物の効果の理由として、抗炎症作用や抗酸化作用による作用機序が考えられます。) |