今月の生薬学の専門ジャーナル(電子版)に,ニガウリの糖代謝への作用メカニズムを検討した基礎研究が,インドのグループから報告されていました。
(
J Ethnopharmacol. 2009 Sep 7. PMID: 19744549)
ニガウリ(苦瓜,学名
Momordica charantia)は,インドなど各地の伝統医療において,血糖コントロールを改善する目的で,糖尿病の治療に利用されてきました。
一般的な利用部位は果実であり,果汁や抽出物もしくは粉末が投与されます。
(つまり,通常の食用部位と同じです。)
有効成分として,インスリン様ポリペプチドであるポリペプチド-P(polypeptide-P)が知られています。
これは,植物インスリン(plant insulin)あるいはP-インスリンと呼ばれることもあります。
基礎研究では,抗糖尿病作用の他,抗潰瘍作用,抗HIV作用,抗菌作用,抗がん作用なども示されています。
さて,今回の研究では,ニガウリ果実抽出物による糖代謝への作用メカニズムについて検証されました。
具体的には,培養細胞(L-6)系を用いて,グルコース取り込みへの作用,糖輸送タンパク質・Glut4やPPARγ,PI3Kなど糖代謝に関与する細胞内分子の発現について調べられています。
その結果,ニガウリ果実抽出物は6マイクログラム/mLの濃度において,Glut4,PPARγ,PI3Kの各遺伝子(mRNA)の発現をそれぞれ3.6, 2.8,3.8倍に増加させたということです。
また,グルコース取り込み作用は約2倍に亢進し,これは,インスリンやロシグリタゾン(糖尿病治療薬)の作用と同等とされています。
以上のデータから,ニガウリによる糖代謝改善作用の分子メカニズムが示唆されます。
今後,臨床的意義の検討が期待される分野です。
なお,ニガウリによる血糖降下作用・食後過血糖抑制作用については,2型糖尿病患者を対象にした予備的な臨床試験でも効果が示されています。
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