生薬学の専門ジャーナルに,トンカットアリによる精子機能改善作用を示した基礎研究が,マレーシアのグループから報告されていました。
(
Nat Prod Commun. 2009 Oct;4(10):1331-6.)
トンカットアリ(学名
Eurycoma longifolia)は,東南アジア原産のハーブで,マレーシアの民間療法では強壮・催淫薬として用いられてきました。
近年,マレーシアを中心に,トンカットアリに関する研究が進められています。
さて,今回の研究では,正常および不妊症モデルラットを用いて,トンカットアリ標準抽出物による精子機能への働きが検証されました。
トンカットアリ標準抽出物(メタノール抽出物)には,主な成分のクワシノイド(quassinoid,変形テルペノイド)として,
-- eurycomanone(ユーリコマノン)
--13alpha(21)-epoxyeurycomanone
--13alpha,21-dihydroeurycomanone
-- eurycomanol
が含まれています。
この標準抽出物を, 50, 100, 200 mg/kgで投与した正常ラット群,および,実験的に不妊症を誘導しトンカットアリ標準抽出物を投与したラット群に関して解析が行われています。
48日間連続投与の結果,トンカットアリ標準抽出物を投与された正常ラット群では,対照群に比べて,精子数の有意な増加が認められました(p < 0.01)。
(50, 100, 200 mg/kgの各群で,それぞれ78.9, 94.3, 99.2%増加。)
また,不妊症誘導モデルラットで示された精子の異常(精子数の低下,運動能の低下,形態学的な異常)は,トンカットアリ標準抽出物の投与によって,有意な改善が示されたということです(p < 0.001)。
血中テストステロン値は,トンカットアリ200mg/kg投与正常群において,対照群および不妊症モデル群に比べて,有意に増加しています(p < 0.01)。
ラット精巣のHPLCおよびLC/MSによる解析では,eurycomanone(ユーリコマノン)が見出されており,精子の質の改善に関与している成分であることが推察されています。
以上のデータから,トンカットアリによる精子機能改善作用・不妊症改善作用が示唆されます。
今後,臨床的意義の検討が期待される分野です。
不妊症に対するハーブ,強壮作用のあるハーブとしては,
マカが知られており,予備的な臨床試験によるデータも集積されつつあります。
マカについてはペルーのグループが中心となり,研究を進めています。
一方,トンカットアリは,マレーシアのグループが研究を推進しており,科学誌natureにもニュース記事が掲載されたことがあります。
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