今月の栄養学の専門誌に、透析患者を対象にしてブドウ果汁の抗酸化作用を示した臨床研究が、スペインのグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 87: 1053-1061.)
動脈硬化性心血管疾患は、透析患者における重大なリスクです。
原因として、酸化ストレスや慢性炎症の関与が指摘されています。
今回の研究では、透析患者32名を対象に、RGJ(濃縮赤ブドウ果汁;concentrated red grape juice)をポリフェノール源とした単独投与、あるいはビタミンEとの併用投与による抗酸化作用が測定されました。
(抗酸化能の指標として、好中球のNADPH oxidase活性が用いられています。)
RGJ、ビタミンEのそれぞれ単独投与、あるいは併用投与が行われ、7日後および14日後の血漿検体が解析された結果、まず、RGJ投与では総コレステロール値、アポリポプロテインBが低下、HDLコレステロールが増加しました。
(この作用はビタミンE群では認められていません。)
次に、酸化LDLおよび抗酸化能は、RGJおよびビタミンEの両群において低下が認められ、併用投与では作用の増強効果が示されました。
その他、炎症マーカーの低下も認められています。
以上のデータから、RGJによる抗酸化作用および脂質代謝改善作用が示唆されます。
ただし、透析患者では適切な栄養指導・食事療法が重要ですので、一律にブドウ果汁の摂取が推奨できるというものではありません。
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