サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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腎不全におけるビタミンD不足と心血管イベント [2008年06月30日(月)]
今日の夕方、都内のある大学に講義に行ってきました。

薬学部大学院生を対象とした臨床薬剤学特論の一環です。


薬剤師の業務の一つに、患者の持参薬の確認があります。

これまで持参薬というと医療用医薬品とOTC医薬品が中心でしたが、現在ではサプリメント・健康食品の確認も重要となっています。


そこで、今日の講義では、サプリメントの適正使用における課題について、解説させていただきました。



さて、今月の栄養学の専門誌に、人工透析中の腎不全患者では、血中ビタミンD値が低いと心血管疾患が多いという相関を示した研究が報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 87: 1631-1638.)


慢性腎臓病患者では、ビタミンD不足が生じやすいことが知られています。

今回の研究では、腹膜透析中の患者230名を対象に、血中ビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD、25(OH)D)値を測定し、3年間のフォローアップ中の臨床アウトカムとの相関が検討されています。

その結果、87%の患者において、血中ビタミンDの不足(75 nmol/l未満)が認められました。

臨床データで補正後の解析では、血中ビタミンDの増加と心血管イベントの低下との間に有意な相関が示されました。

また、血中ビタミンDが45.7 nmol/Lより多い場合、45.7 nmol/L未満のときに比べて、心血管イベントの発症リスクが有意に低いことも示されています。



以上のデータから、多くの透析患者ではビタミンD不足があり、心血管疾患のリスク増大に関係していることが示唆されます。

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からだのしくみ増刷 [2008年06月29日(日)]
先日、増刷になった「からだのしくみ」(日本実業出版社)の見本が届いていました。





今回は、改訂ではなく増刷(5刷)ですが、少し手直しをしております。
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ココアによる血管機能の改善作用 [2008年06月28日(土)]
今月の循環器病学の専門誌に、フラバノールを含むココアの摂取によって糖尿病患者の血管機能が改善したというヒト臨床研究が、ドイツのグループから報告されていました。
(J Am Coll Cardiol. 2008 Jun 3;51(22):2141-9.)


ココアにはポリフェノール類が存在し、抗酸化作用等を介した健康保持作用が知られています。
フラバノールは、ココアポリフェノールにも含まれるフラボノイド系ファイトケミカル類の1種です。
フラバノールの摂取が多いと、心血管リスクが低下することが疫学研究で示されてきました。


今回の研究では、治療薬を服用中の糖尿病患者において、フラバノールを含むココアが血管機能に影響を与えるかどうか、検討されています。

まず、妥当性検討のために、糖尿病患者10名を対象に、75mg、371mg、963mgのフラバノールを含むココアを各用量で単回投与し、血管機能として上腕動脈のFMD(血流依存性血管拡張反応、flow-mediated dilation)が測定されました。

次に、有効性検討のために、1回321mgのフラバノール含有ココアを1日3回、30日間投与されました。(対照群は、1回25mgのフラバノールを含み、栄養学的に等価な食事を摂取。ランダム化二重盲検偽薬対照法。)


その結果、単回のフラバノール含有ココア摂取群では、用量依存的な血中フラバノール値およびFMDの有意な増加が認められました。

また、30日間の投与試験では、FMDが前値に比べて30%増加(p < 0.0001)し、フラバノール含有ココア摂取による血管機能の有意な改善作用が示されています。


なお、血圧や心拍数、血糖値、内皮細胞非依存性反応などには影響は認められていません。


以上のデータから、フラバノールの摂取は、糖尿病患者における血管機能保持に有用であることが示唆されます。
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ビタミンD不足と心筋梗塞のリスク [2008年06月27日(金)]
今月(6月9日号)の内科学の専門誌に、男性におけるビタミンD不足が心筋梗塞のリスクと相関するという調査研究が、米国のグループから発表されていました。
Arch Intern Med. 2008 Jun 9;168(11):1174-80.)


ビタミンDの不足は、動脈硬化の促進に関与すると考えられています。

今回の研究では、血中ビタミンD(25-ヒドロキシビタミンD、25(OH)D)値と心臓病(冠状動脈疾患)リスクとの関係を検討するために、40歳から75歳の男性18,225名を対象に解析が行われています。
(The Health Professionals Follow-up Study)

10年間のフォローアップ中に454名が心筋梗塞を発症しました。

喫煙歴を一致させた対照群との比較の結果、25(OH)Dが低値(15 ng/mL以下)である群では、25(OH)Dが充足している群(30 ng/mL以上)に比べて、心筋梗塞の相対リスクが有意に増加するという相関が認められています。
(RR 2.42, 95%C:1.53-3.84)


心筋梗塞の家族歴、糖尿病の既往歴、アルコール摂取量、BMI、身体活動といった指標で補正した後でも、ビタミンD低値と心筋梗塞リスクとの関係は有意となっています。
(RR, 2.09; 95% CI, 1.24-3.54)


以上のデータから、ビタミンDが低値であると心筋梗塞のリスクとなることが示唆されます。



ビタミンDは必須栄養素であり、欠乏症を防ぐために一日あたりの摂取量の目安が定められています。

一方、近年の研究によって、ビタミンDの多彩な効果が示されており、健康保持・予防医学におけるビタミンD摂取の重要性が再認識されつつあります。
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朝も夜も会議でした [2008年06月26日(木)]
今日は、朝7時から学会の認定システムについての打ち合わせがありました。

当初、日曜日の夜に計画されていましたが、参加予定者の都合が合わず、平日の朝、診療開始前にということになった次第です。

新規制度の立ち上げについて議論し、草案を持ち帰って仕上げるということになりました。



夜は、厚労省の科研費による研究班の会議がありました。

こちらは今年度が最終年度になるので、IM/CAMに関するガイドラインのようなものを発表できないか、考えています。
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コーヒー/紅茶の摂取が脳梗塞リスクを抑制 [2008年06月25日(水)]
今月の脳血管疾患研究の専門ジャーナルに、コーヒーや紅茶の摂取量が多いと喫煙男性において脳梗塞のリスクを減少させるという調査が、スウェーデンのカロリンスカ研究所のグループから報告されていました。
(Stroke. 2008 Jun;39(6):1681-7.)


これまでの研究によると、コーヒーや紅茶は、抗酸化作用を介して動脈硬化性疾患を抑制することが示唆されてきました。

また、コーヒーでは、インスリン感受性の改善作用も示唆されています。


そこで、今回の研究では、コーヒーおよび紅茶の摂取と脳梗塞のリスクとの関連を検証するために、脳梗塞の既往歴のない50歳から69歳までの喫煙男性(フィンランド人)26,556名を対象にデータの解析が行われました。

(コホート研究;Alpha-Tocopherol, Beta-Carotene Cancer Prevention Studyのデータを利用。)


1985年から2004年まで平均13.6年間のフォローアップ中、2,702例の脳梗塞、383例の脳内出血、196例のくも膜下出血が確認されました。


年齢や冠危険因子で補正後、コーヒーおよび紅茶の消費量と脳梗塞のリスクとの間に、有意な負の相関関係が認められました。

一方、脳内出血やくも膜下出血では、有意な関係は示されていません。



コーヒーの消費量が最も多い群(1日あたり8カップ以上)では、最も少ない群(2カップ未満/日)に比べて、脳梗塞の相対リスクが0.77(95% CI, 0.66 to 0.90; P for trend <0.001)と有意に低くなっています。


また、紅茶の消費量が最も多い群(2カップ以上/日)では、最も少ない群(非摂取群)に比べて、脳梗塞の相対リスクが0.79(95% CI, 0.68 to 0.92; P for trend=0.002)と有意に低下しています。




以上のデータから、喫煙男性では、(冠危険因子とは独立した要因として)コーヒーあるいは紅茶の摂取量が多いほど、脳梗塞のリスクが低下すると示唆されます。

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BMIによる差別 [2008年06月24日(火)]
今月の肥満研究の専門ジャーナルに、米国における体重による差別について調査した研究が掲載されていました。
(Int J Obes (Lond). 2008 Jun;32(6):992-1000.)


体重や体型による社会的な差別の実態についてのデータは、医学分野での研究としては限られています。


そこで、今回の研究は、差別の存在の有無や実態を明らかにするために、1995年から96年にかけて、25歳から74歳までの2290名を対象に、身長と体重に関連する差別の経験について調査されました。
(データ:National Survey of Midlife Development in the United States)


その結果、体重/身長による差別は、男性では5%、女性では10%に認められたということです。


ただし、この数値は平均であるため、体重の大きい(つまり肥満の)人、具体的にはBMIが35以上の重症肥満者では、差別経験の割合が多いと考えられます。

また、若年の肥満者は、人種や教育に関わりなく、差別のリスクにさらされていることが示されました。

さらに、女性は、男性よりも体重/身長による被差別リスクが高く、BMIが30〜35の女性では同程度の体重の男性に比べて3倍のリスクが認められています。

特に女性では、人種による差別と同程度の割合であると考えられています。

具体的な事例として、組織による差別では雇用関係、対人関係では呼び名があげられており、これらは人種や性による被差別リスクよりも大きいということです。


このデータから、体重/身長/BMIによる差別が米国社会に広まっている実態が示唆されます。


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関節リウマチとヴィーガン食 [2008年06月23日(月)]
リウマチ治療の専門誌に、グルテンフリー(無グルテン)のヴィーガン食による関節リウマチへの効果を示したヒト臨床研究が、スウェーデンのグループから報告されていました。
(Arthritis Res Ther. 2008;10(2):R34.)


グルテンglutenとは、小麦などに含まれるタンパク質です。

ヴィーガン食とは、動物性食品を一切含まないベジタリアンの1種で、完全菜食ともいわれます。


一般に、関節リウマチ患者では、動脈硬化および心血管疾患のリスクが増加します。

この一因として、脂質代謝異常が考えられています。


今回の研究では、関節リウマチ患者66名を対象に、グルテンフリー(グルテンの含まれていない)ヴィーガン食(n=38、平均年齢50.0歳)、あるいはバランスのとれた非ヴィーガン食(n=28、平均年齢50.8歳)を1年間摂取させ、脂質代謝およびanti-PCs(natural atheroprotective antibodies against phosphorylcholine、抗ホスホリルコリン抗体価)が測定されています。

抗ホスホリルコリン抗体は、動脈硬化抑制の指標となります。

その結果、グルテンフリーのヴィーガン食摂取群では、対照食摂取群に比べて、BMIとLDLコレステロール値の低下、anti-PC IgMの増加が認められました。

なお、HDL、anti-PC IgG、中性脂肪には有意な変化は示されていません。


ヴィーガン食摂取群をレスポンダーとノンレスポンダーに分けた場合、酸化LDLとanti-PC IgAに対する効果がレスポンダー群に認められています。


以上のデータから、グルテンフリー・ヴィーガン食による関節リウマチでの抗炎症作用・動脈硬化抑制作用が示唆されます。


なお、このような治療食・食事療法では、コンプライアンスが問題になります。

例えば、減塩食が高血圧改善にいいことがわかっていても、食事療法を継続できないことがあります。
(病院食を摂取している間は改善し、退院後は元に戻ってしまうという例です。)

食事療法を継続するためにはレシピの工夫が大切でしょう。

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キトサンによる脂溶性ビタミン吸収への影響 [2008年06月22日(日)]
キトサン・サプリメントの安全性を検証した臨床研究がフィンランドの研究グループから発表されていました。
(J Am Coll Nutr 2008. 27: 22-30.)



キトサンは、肥満・メタボリック症候群対策のサプリメントに利用される成分です。

動物実験では脂質吸収抑制作用が示されていますが、ヒト臨床研究では明確ではなく、別の作用機序の存在が示唆されます。


キトサンに関する臨床試験をまとめたレビュー論文では、抗肥満・血圧改善・脂質異常症改善が示唆されていますが、臨床的意義については、さらに検討が必要とされています。



さて、今回の臨床研究では、キトサン摂取による脂溶性ビタミン値への影響を検討するために、2種類の用量にて検討が行われました。

(キトサンは、理論的に脂溶性ビタミンの吸収を抑制することが推定されるため、キトサンの安全性を確認するために計画された研究です。)


男女65名を対象に、1日あたり0、4.5、6.75グラムのキトサン錠、あるいは6.75グラムのグルコマンナンを8週間投与した偽薬対照並行群間比較試験です。


その結果、血中ビタミンA、ビタミンE、ビタミンD(25-hydroxyvitamin D)、αカロテン、βカロテンに関して、両群間に有意差は認められませんでした。


したがって、キトサンが脂溶性ビタミン類の吸収に有意な影響を与えることはないと考えられます。
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ダイエットの成功の秘訣は? [2008年06月21日(土)]
今月の肥満研究の専門誌に、減量に成功するのはダイエット法にかかわらず、その食事療法を遵守することであるというデータが、米国のグループから発表されていました。
(Int J Obes 2008;32(June):985-991)


食事療法の成功の鍵となるのが、それぞれのダイエット法・食事療法を厳守することです。

医学・栄養学的には効果的であるとされても、長期間、その食事療法を継続できない場合には治療効果が期待できません。

(もちろん、通常の食生活からかけ離れた、極端な内容の食事法であることは問題です。
継続を前提に、妥当性のある内容の食事が推奨されるべきです。)


しかし、ダイエット法・食事療法を厳守することと、減量の成功率との関係を検証した研究は少ないのが現状です。



そこで、今回の研究では、1年間のランダム化比較試験に参加した肥満女性181名(平均年齢43歳、BMI 31)を対象に、各自に割り当てられた食事療法と実際の食事との比較を行い、減量の成功率との関係が検討されました。


被験者は、A TO Zスタディとして、アトキンスAtkins、ゾーンZone、オーニッシュOrnishのいずれかをダイエット法に関する1年間の臨床試験に参加した人々です。

(A TO Z スタディについては以前にブログで紹介しています。)


各ダイエット法について、最も遵守したグループと、逆に遵守できなかったグループを比較検討した結果、アトキンス、ゾーン、オーニッシュのいずれにおいても、12ヶ月間の体重の変化と遵守の程度に相関が認められたということです。



ちなみに、体重の変化は、下記のようになっています。(遵守 vs. 非遵守)

アトキンス:- 8.3 ± 5.6 kg vs - 1.9 ± 5.8 kg, P=0.0006

ゾーン:- 3.7 ± 6.3 kg vs - 0.4 ± 6.8 kg, P=0.12

オーニッシュ:- 6.5 ± 6.8 kg vs - 1.7 ± 7.9 kg, P=0.06




医学研究では、アトキンス(超低炭水化物/高タンパク/高脂肪)、ゾーン(低炭水化物)、オーニッシュ(低脂肪)のいずれが有効か、といった検証が行われてきました。


今回の研究データから、いずれのダイエット法であっても、きちんと遵守することが減量成功の秘訣、という結論になります。
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JAMAのバイアス [2008年06月20日(金)]
私見ですが、JAMA(米国医師会ジャーナル)は、サプリメントに関する臨床研究のうち、ネガティブデータを好んで掲載する印象があります。


例えば、昨日のブログで紹介したデータもネガティブであり、SJWの単独投与ではADHDに効果が認められなかったというものです。

SJWは比較的認知されているハーブサプリメントであり、JAMAに掲載されたネガティブデータであるため、メディア等でも報道されています。

ただし、ADHDに使うとすれば、サプリメントであれば、やはりオメガ3系脂肪酸のように思います。



これまでも、JAMAは、セントジョーンズワート(SJW)についてのネガティブデータを報道してきました。
数年前にも、重症うつ病にSJWを投与した、ネガティブな結果の臨床試験を発表しています。

重症うつ病は難治性であり、その試験の被験者データをみると、どんな医薬品でも効果が期待できないような重症例の集まりでした。


一方、コクランレビューでは、SJWは、軽症から中等症のうつ病に効果があると結論づけられています。


重症うつ病に対しては、効果的な治療法は確立されておらず、JAMAのRCTでも、アクティブ治療群がない設定でした。

効果がないということではSJWもSSRIも同じというデータでしたが、メディアの見出しは、「SJWはうつ病に効果がない」、というものした。


(重症うつ病はもともと難治性です。
一方、SJWは軽症から中等度のうつ病には効果が期待でき、一定の安全性も確立されています。
ネガティブな試験結果が発表された当時、メディアの見出しだけを読んだ消費者が混乱したことで、非常に問題になりました。)



ネガティブデータは、publication biasを是正する上では重要です。
(ネガティブデータが未発表であると、メタ分析で効果が過大評価されてしまうので。)

しかし、一般的な適用ではない方法(SJWとADHD、SJWと重症うつ病)を検証すること自体、妥当性が疑問です。


さらに、JAMAでは、プロトコールではそうなっていないのに、「ランダム化偽薬対照二重盲検試験」として、イチョウ葉エキスのネガティブデータを掲載したことがあります。

また、不適切なプロトコール(RCT)で実施されたガルシニアのネガティブデータも知られています。


その他、JAMAが査読を依頼したという生薬学の大御所の教授が、実際には査読を依頼されたことはなかったとか…。


サプリメントに関するJAMAの論文は、(編集者・査読者によりますが)、一般に要注意です。
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ADHDとセントジョーンズワート [2008年06月19日(木)]
米国医師会ジャーナル(JAMA)の6月11日号に、セントジョーンズワート(SJW)をADHD患者に投与した臨床研究が、米国のグループから報告されていました。
(JAMA. 2008 Jun 11;299(22):2633-41.)


近年、児童や青少年の間で、ADHD(注意欠陥多動性障害)という病態が注目されています。
ADHDに対しては薬物療法や行動療法の他、サプリメントなどの補完代替医療が併用されることがあります。


さて、今回の研究では、ADHDに対するセントジョーンズワート(SJW)の有効性と安全性を検証する目的で、5歳から17歳までの患者54名に、1日あたり900mg(分3)のSJW(0.3% hypericin)(n=27)あるいは偽薬(n=27)が8週間投与されました。
(試験期間中、他の医薬品の摂取は行われていません。)

その結果、ADHDの指標であるADHD Rating Scale &#8211;IV scores(主アウトカム)について、両群間に有意差はなく、SJW投与による効果は明らかではありませんでした。

(なお、安全性については、偽薬群にて有害事象が1例報告されたのみであり、両群間での有意差は認められていません。)


論文著者らは、本研究では、SJW投与によるADHD症状改善作用は認められなかった、と結論しています。



ただし、このネガティブデータについては、投与されたSJW製品に対する疑問が指摘されています。

試験で用いられたSJW製品のヒペリシン hypericinとヒペルフォリン(ヒペリフォリン)hyperforin について、試験終了時に実際に測定したところ、含有量が非常に低かったという点です。
(特にヒペルフォリンが極端に低値になっています。)


その他、この論文については、fundingに関連して、論文の公正さについての問題を投げかける意見もあります。


(そもそも、なぜ、ADHDに対するSJWの作用を検証するRCTを思いついたのかが疑問です。米国ではそのような目的で利用する消費者もいる、という話くらいしか理由がなく、医学的な根拠/仮説に乏しいRCTのように感じます。)



ADHDの病態は複雑であり、治療には食事療法や行動療法、薬物療法が併用されます。

今回の試験によると、SJWの単独投与では効果が明確ではありません。

今後、補完療法として他の治療法に併用する場合の臨床的意義に関する検討が必要でしょう。


一般に、ADHDに対するサプリメント療法では、DHAやEPAなどのオメガ3系脂肪酸を含むフィッシュオイル(魚油)サプリメントが用いられることが多いと思います。
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コレステロール低下作用を持つ植物性食品による血圧への影響 [2008年06月18日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、コレステロール低下作用を有する植物性食品の、血圧に対する影響を検討したヒト臨床研究が報告されていました。
(Eur J Clin Nutr. 2008 Jun;62(6):781-788.)


植物性食品の一部には、脂質異常症(高脂血症)を改善する働きのある機能性成分が含まれています。

今回の研究では、高コレステロール血症患者66名を対象に、植物ステロール(1.0 g/1000 kcal)、大豆タンパク質(22.5 g/1000 kcal)、食物繊維(viscous fibers、10 g/1000 kcal)、アーモンド(22.5 g/1000 kcal)を含む食事が1年間投与され、50名が試験を完了しています。

(なお、対照群は設定されていません。)


血圧に対する影響を検討した結果、投与前に比べて1年後では、収縮期血圧が4.2 ± 1.3 mmHg(P=0.002)、拡張期血圧が2.3 ± 0.7 mmHg(P=0.001)、それぞれ有意に低下していました。

また、血圧の低下(改善)は、試験開始2週間以内に認められたということです。



以上のデータから、脂質異常症を改善する植物性食品の摂取は、高血圧の改善にも効果が期待できると考えられます。
(適切な食事療法であることが前提ですが。)
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コーヒーによる全死亡率と心血管死の低下 [2008年06月17日(火)]
一昨日に続いて、コーヒーの摂取と死亡率に関するデータです。

今週(6/17付)の内科学の専門誌に、コーヒーの消費量と全死亡率との間に負の相関関係があるという調査研究が報告されていました。
(Ann Int Med 2008 Jun 17;148(12):904-914)


今回の研究では、コーヒーの消費と、心血管疾患による死亡、がんによる死亡、全死亡率との関係について検証する目的で、男性(41,736名)は18年間、女性(86,214名)は24年間のフォローアップが行われています。

(前向きコホート研究(Health Professionals Follow-up Study and Nurses' Health Study)です。
被験者は、研究エントリー時には心血管疾患およびがんを有していません。)


コーヒーの消費量については、1986年に男性、1980年の女性において最初に調査され、2から4年ごとに2004年まで調べられています。

フォローアップ中に、男性では6,888名、女性では1,1095名の死亡が確認されました。


年齢や喫煙歴などの因子で補正した後に比較した結果、コーヒーの消費量が増えると、全死亡率が低下する傾向が認められています。

全死亡率
男性:
1杯未満/月:1.0
1杯/月〜4杯/週:1.07 (95% CI, 0.99 to 1.16)
5〜7杯/週:1.02 (CI, 0.95 to 1.11)
2〜3杯/日:0.97 (CI, 0.89 to 1.05)
4〜5杯/日:0.93 (CI, 0.81 to 1.07)
6杯以上/日:0.80 (CI, 0.62 to 1.04)
(P for trend = 0.008)

女性:
1杯未満/月:1.0
1杯/月〜4杯/週:0.98 (CI, 0.91 to 1.05)
5〜7杯/週:0.93 (CI, 0.87 to 0.98)
2〜3杯/日:0.82 (CI, 0.77 to 0.87)
4〜5杯/日:0.74 (CI, 0.68 to 0.81)
6杯以上/日:0.83 (CI, 0.73 to 0.95)
(P for trend < 0.001)


コーヒーの消費量が増えると全死亡率が低下するという相関では、主に心血管疾患による死亡の減少が影響していたということです。

このとき、カフェインの摂取量との関連は認められていません。

また、コーヒーの消費量とがん死亡のリスクとの間には相関は示されませんでした。


以上のデータから、コーヒーの消費による全死亡率の低下および心血管疾患による死亡の低下が示唆されます。


ただし、介入による臨床試験ではなく調査研究ですので、コーヒーの消費量はセルフレポートであるなど、研究の限界もあります。


(一昨日と同じになりますが、)
DHCでは、「オーガニックブレンドコーヒー」や「カナディアン・メープルコーヒー」を取り扱っております。
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アルコールの消費量と死亡率の関係 [2008年06月16日(月)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、アルコールの消費量と死亡率との関係を示した調査研究がデンマークのグループから報告されていました。
(Eur J Clin Nutr. 2008 Jun;62(6):817-822.)


一般に、適度なアルコールの摂取は、健康保持や疾病予防に効果があるとされています。
ただし、その効果には性差による相違が想定されており、女性ではメリットが少ないという考えもあります。


そこで、今回の研究は、女性において、飲酒が死亡率に与える影響に関して、平日と週末の消費を区別して検証しています。


被験者はデンマーク看護協会の女性看護師17,772名で、1993年の時点でアルコールの摂取量その他の生活習慣が調査されました。

その結果、1週間あたりの飲酒量が1〜3杯のときに、死亡リスクが最も低いという相関が得られています。

一方、週末(金曜日から日曜日)の飲酒量が6杯を超えている場合、全死亡率は、週末の消費が1杯増える毎に3%増加するということです。
(週末あたり3杯の換算では9%増加に相当します。)

これに対して、平日(月から木)の飲酒量では、1日あたり1杯増える毎に4%増加するというデータでした。


酒は百薬の長といわれますが、過剰摂取は禁物です。


posted at 23:52 | この記事のURL
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コーヒーによる死亡率の低下@フィンランド [2008年06月15日(日)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、コーヒーの消費と死亡率との関係を示した調査研究が、フィンランドのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Jun;99(6):1354-61.)


対象者は、1920年以前に出生し、フィンランド北部で生活してきた男女817名です。

コーヒーの消費およびその他の変数について1991年から92年にかけて調査が行われ、2005年までに死亡例が追跡調査された結果、623名の死亡が確認されました。
(6960 person-years of follow-up。)

このとき、一日あたりのコーヒー消費量(カップ数、1カップ平均125ml)が増えるほど、全死亡率が低くなるという相関関係が認められています。

性別、婚姻歴、学歴、職歴、BMI、喫煙、糖尿病、心筋梗塞、認知能といった因子で補正した後、1日あたりのコーヒー1カップ摂取毎に全死亡率が4%低下する、ということです。


これまでも、各種の疫学調査によってコーヒーの消費と死亡率の低下や疾病リスクの低下が報告されています。



DHCでは、「オーガニックブレンドコーヒー」や「カナディアン・メープルコーヒー」を取り扱っております。
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IMJ編集会議 [2008年06月14日(土)]
今日の夕方、学会誌の編集会議がありました。

学会誌をリニューアルするとのことで、新しい作業手順の確認が中心です。

学際的な領域を含む学会誌なので、投稿論文の専門分野が多岐にわたるため、論文の査読者の選択が課題となる印象でした。
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亜麻仁リグナンによる脂質代謝改善作用 [2008年06月13日(金)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、亜麻仁に由来するリグナンの脂質代謝作用を示した臨床研究が報告されていました。
(Br J Nutr. 2008 Jun;99(6):1301-9.)


亜麻仁(flaxseed、フラックスシード)は、アルファリノレン酸や亜麻仁リグナンを豊富に含むことから機能性食品素材として注目されています。


今回の研究は、高コレステロール血症患者55名を対象に、ランダム化二重盲検偽薬対照試験として実施されました。

具体的には、1日あたり300mgあるいは600mgの亜麻仁リグナン(secoisolariciresinol diglucoside、SDG)あるいは偽薬が8週間投与され、脂質代謝および糖代謝に関連する指標が測定されました。


その結果、前値に比べて、総コレステロール値、LDLコレステロール値、空腹時血糖値のいずれも有意な低下(改善)が認められたということです。

6週および8週の時点において、600mgのSDG投与群では総コレステロールとLDLの低下率はそれぞれ22.0%および24.38%であり、偽薬投与群に比べて有意差が示されています。
また、空腹時血糖値も、前値および偽薬に比べて有意に低下していました。

一方、300mgのSDG投与群では、総コレステロールとLDLについて、投与前値との比較での有意な低下となっています。



亜麻仁リグナン投与群では、血中のsecoisolariciresinol (SECO)、enterodiol (ED)、enterolactoneがいずれも有意に増加していました。

コレステロール低下作用は、SECOおよびEDとの有意な相関が認められています。



以上のデータから、亜麻仁リグナン類による脂質代謝および糖代謝改善作用が示唆されます。

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ローフードダイエットとカロテノイド類 [2008年06月12日(木)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、ローフードダイエット(raw food diet)と血中カロテノイドの関係を示した調査研究が報告されていました。
Br J Nutr. 2008 Jun;99(6): 1293-1300)


ローフードダイエットとは、植物性食品を中心とした食生活で、食べ物をできるだけ加熱せずに摂取する食事方法です。

植物性食品に含まれるカロテノイド類は、動脈硬化を抑制し、心臓病を防ぐと考えられます。

一般に、ローフードダイエットでは、食材に含まれるカロテノイド類は多いと想定されますが、加熱しないことから、臨床的な妥当性については議論があります。


そこで、今回の研究では、ドイツでのローフードダイエット実施者198名(男性92名、女性106名)を対象に、食事由来のビタミンAとカロテノイドの摂取量、血漿レチノールとカロテノイドが調べられました。

被験者は、全食事量のうち平均95%(重量比)をローフードで摂取していました(1日あたり約1,800グラム)。

1日あたり摂取量は、1301レチノール活性および16.7mgのカロテノイド類でした。
血漿ビタミンAは、被験者の82%が正常です(1.05 micromol/l以上)。
また、ベータカロテンも、63%の被験者で心臓病の予防効果が期待できる値であったということです。

一方、被験者の77%では、リコピン値が健常者の平均値を下回る値となっています(0.45 micromol/l未満)。


このとき、野菜や果物、ナッツ類に含まれる脂質が、血中カロテノイド値の決定要素として有意に作用していることが見出されています。


以上のデータから、(今回の研究の被験者による)ローフードダイエットでは、ビタミンAやベータカロテンの血中濃度には問題がなさそうですが、リコピン値は平均よりも低くなっています。
ローフードダイエットでのカロテノイドの利用には、脂質の摂取が重要であることが示唆されます。


今回の研究は、カロテノイド類についての検証ですが、一般に、ローフードダイエットではさまざまな栄養成分の利用効率に関して、長期的な研究データが十分ではなく、臨床的な妥当性や安全性が担保されているとはいえないと思います。
posted at 23:56 | この記事のURL
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カリウムによる血圧の低下作用 [2008年06月11日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、カリウムによる血圧への影響を検証したヒト臨床研究が、イギリスのグループから報告されていました。
Br J Nutr. 2008 Jun;99(6): 1284-1292)


食事由来のカリウムが高血圧の改善に有用であることが知られています。


多くの臨床試験では、塩化カリウムが用いられてきましたが、今回の研究では、塩化カリウムとクエン酸カリウムの比較が行われています。


血圧が正常なボランティアを対象に6週間の試験が行われた結果、偽薬投与群(n=31)に比べて、30 mmol/日のクエン酸カリウム投与群(n=28)では、平均5.22 mmHgの動脈圧低下が認められました。

(ただし、塩化カリウム投与群(n=26)でも4.70 mmHgの低下が示されており、塩化カリウムとクエン酸カリウムとの間に有意差は認められていません。)


クエン酸カリウム投与群では、収縮期血圧は6.69 mmHgの低下、拡張期血圧は4.26 mmHgの低下が認められています。

(塩化カリウム投与群では、それぞれ5.24 mmHg、4.30 mmHgの低下。)



カリウムによる血圧の低下作用は、収縮期血圧が高いほど大きかったということです。



カリウムは、通常の食品の一部に多く含まれています。

日本では、リンゴの摂取量が多い青森県では、塩分の摂取量が多いにもかかわらず、高血圧の割合が比較的に少ないとされています。

(リンゴは、カリウムの含有量が多い果物の一つです。)
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