今月の栄養学の専門ジャーナルに,ベジタリアン食による小児肥満の予防効果を示した総説が,米国のグループ(Loma Linda University)から報告されていました。
(
Am J Clin Nutr. 2010 Mar 17.)
これまでの疫学研究によると,成人および小児のいずれでも,ベジタリアン食は,低いBMIや肥満の割合と相関が認められています。
ベジタリアン食を摂る成人を対象にしたメタ分析では,体重差は,男性で7.6kg,女性で3.3kgであり,これはBMI(kg/m2)の2に相当するということです。
同様に,ベジタリアン食を摂る小児は,非ベジタリアン食を摂る小児に比べて,肥満の問題は少なく,青年期以降において両者のBMIの差は大きくなる,とされています。
健康維持において肥満のリスクは明らかであり,食習慣への介入は有効な手段の一つです
植物性食品を中心としたベジタリアン食は,小児における肥満予防としても有用であると考えられます。
論文著者らは,植物性食品を中心とした食生活は,至適な健康のためだけではなく,環境保護にも有用であると考察しています。
(これは,タンパク質の供給源としては,植物性タンパク質のほうが動物性タンパク質よりも環境負荷が少ないという理由です。)
なお,肥満予防ということでは,炭水化物の種類と摂取量に注意が必要です。
かつては,脂肪が肥満の大敵のように理解されていましたが,現在では,単純炭水化物の過剰摂取が問題になっています。
パスタにチーズをかけて,という食事は,欧米式のラクトオボベジタリアン食になりえますが,肥満予防という効能は期待しにくいかもしれません。
また,論文では,食品や食生活における政策も議論されています。
一般に,エネルギーあたり(カロリーあたり)の単価(消費者にとっての価格)は,いわゆるジャンクフードが割安であり,高品質な植物性食品は高価格になりがちです。
一方,外食産業では,高エネルギー食を安価に大量に,という傾向が見られます。
(高品質高価格というマーケットは限定されてしまいますので,企業活動としてはやむを得ないでしょう。)
そこで,健康保持増進や疾病予防に効果的な食品の消費促進,あるいはジャンクフードに対する抑制といった施策導入の議論があります。
例えば,先日,米国NYでソーダ税導入をめぐる話題がニュースになっていました。
ジャンクフード税,体脂肪税,高脂肪食税,高単純炭水化物税といった徴税もありえますし,逆に,健康食品/サプリメントの購入費やスポーツジムの会費といった健康増進に関連した自己負担について免税枠を設けるといった方法も可能性はあります。
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