循環器学の専門ジャーナル(電子版)に,オメガ3系必須脂肪酸の効果は遺伝子多型によって異なるという臨床研究が,アイルランドのグループから報告されていました。
(
Atherosclerosis. 2010 Mar 27.)
EPAやDHAなどのオメガ3系必須脂肪酸は,慢性炎症の抑制や脂質代謝の改善を介して動脈硬化性疾患のリスクを低減する作用が知られています。
一方,臨床栄養学の分野では,機能性食品素材に関して,遺伝子多型(遺伝素因)の個人差による効果の違いが報告されるようになりました。
今回の研究では,一酸化窒素合成酵素(NOS)の遺伝子多型と,オメガ3系必須脂肪酸の効果との関係が検証されています。
(一酸化窒素(NO)は,生体のホメオスターシスにおいて重要な役割を果たしています。
NOは,NOS(一酸化窒素合成酵素)によって産生されます。
NOSにはアイソフォームがあり,神経型(nNOS, NOS1),誘導型(iNOS,NOS2),血管内皮型(eNOS,NOS3)が知られています。)
具体的には,メタボリック症候群患者450名を対象に,12週間のオメガ3系必須脂肪酸介入による脂質代謝の変化と,eNOSの一塩基多型(SNPs)との関連が調べられました。
(LIPGENEコホート研究の一環として行われています。)
(eNOSのSNPsは,rs11771443, rs1800783, rs1800779, rs1799983, rs3918227, rs743507。)
解析の結果,炎症や脂質異常症に関連するマーカーについて,遺伝子多型の各群間で有意な相違が見出されました。
まず,遺伝子-栄養素の相互作用として,eNOSのrs1799983 SNPと,血中オメガ3系必須脂肪酸の値による血中中性脂肪値との間に有意な相関が認められたということです。
AC+AAキャリアにおいて,血中TG値とオメガ3系脂肪酸が負の相関(つまり,TGの高値とオメガ3の低値,あるいはTGの低値とオメガ3の高値が相関)を示し,
CCキャリアでは,相関は見出されていません。
次に,オメガ3系必須脂肪酸の投与後では,
rs1799983のCCキャリアに比べて,AC+AAキャリアにおいて,オメガ3系必須脂肪酸投与によるTG値の変化が示されています。
以上のデータから,血管内皮型一酸化窒素合成酵素の遺伝子多型は,オメガ3系必須脂肪酸による血中中性脂肪値の変化に関与することが示唆されます。
遺伝子と栄養素の相互作用に関する研究や疾患にかかりやすい遺伝子多型の研究が集積され,科学的根拠が構築されることで,テイラーメイドのサプリメント療法の推進が期待されます。
(なお,DHCでは,これまでの研究によってコンセンサスが得られた疾患感受性遺伝子多型について,
検査キットを製品化しています。)
------------------------------------------------------------------
医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
------------------------------------------------------------------