明日のプレゼン用に,ビタミンミネラルのデータをまとめていました。
少し前のデータですが,ビタミンミネラルサプリメントの投与による癌死亡率の低下効果を示した臨床試験を紹介したいと思います。
(専門家の間ではよく知られている基本的な研究です。)
最近では,いまさら「ビタミンミネラルは健康保持や病気の予防に効果があります」という論文が出ても,一般のメディアで取り上げられることはほぼないと思います。
逆に,因果関係が検証されていない,単なる調査研究であっても,ビタミンミネラルの摂取に関連して,ネガティブな結果を示唆するようなものであれば,メディアで取り上げられる印象です。
(医師や研究者は,研究の質や試験のプロトコールをみて,データの臨床的意義を判断しますが,一般メディアでは見出しと結果だけが一人歩きするため,誤解や混乱を生じることがあると思います。)
さて,2004年に内科学の専門ジャーナルに発表されたSU.VI.MAX研究では,ビタミンミネラルサプリメント投与による一次予防効果が検証されました。
(
Arch Intern Med. 2004 Nov 22;164(21):2335-42.)
この研究では,抗酸化作用を有するビタミンとミネラルを含むサプリメントを健常者に投与し,がん死亡率および全死亡率への影響が解析されています。
(Supplementation en Vitamines et Mineraux Antioxydants (SU.VI.MAX) studyという一次予防に関する研究です。)
具体的には,13017名のフランス人成人(45-60歳の男性5141名,35-60歳の女性7876名)を対象に,
(1)ビタミンC120mg,ビタミンE30mg,βカロテン6mg,セレン100μグラム,亜鉛20mgの複合サプリメントを1カプセル/日
(2)偽薬1カプセル/日
のいずれかが投与されています。
(ランダム化二重盲検偽薬対照試験。)
平均7.5年間の観察の結果,
全被験者の平均では,
全がん罹患率(介入群;267 [4.1%] vs. 偽薬群295 [4.5%])
虚血性心疾患(134 [2.1%] vs. 137[2.1%])
全死亡率(76 [1.2%] vs. 98 [1.5%])
でした。
全がん罹患率と全死亡率において,サプリメント投与群における低下傾向が示唆されています。(ただし,有意差なし)
次に,性別の解析では,
男性において,サプリメント投与群では,全がん罹患率が31%減少していました(RR 0.69 95%CI, 0.53-0.91])。
↑男性での全がん罹患率には顕著な差が認められます。
女性では,有意差は示されていません(1.04 95% CI, 0.85-1.29)。
全死亡率についても同様のデータとなっています。
(男性0.63 [95% CI, 0.42-0.93],女性1.03 [95% CI, 0.64-1.63])
サブ解析によると,βカロテンの低い男性群において,顕著ながん罹患率低減作用が示されています。
以上のデータから,標準的な抗酸化ビタミンミネラルサプリメントの投与は,男性において全がん罹患率と全死亡率を有意に低下させることが示されました。
なお,女性では有意差が認められなかった理由として,年齢層が更年期前後にかかっていることで,ホルモンバランスの変化といった影響が考えられます。
------------------------------------------------------------------
医療関係者のための健康食品情報サイト【DHCサプリメント研究所】
------------------------------------------------------------------