今月の栄養学の専門ジャーナルに,バージンオリーブオイルと地中海食の併用による動脈硬化性疾患リスク低下の機序について,脂質代謝の視点から検証した臨床研究が,スペインのグループから報告されていました。
(
J Nutr Biochem. 2009 Dec 3.)
これまでの多くの研究によって,地中海食による心臓病・動脈硬化抑制作用が広く知られています。
地中海食の特徴として,オリーブオイルの利用が多いことがあげられます。
オリーブオイルは,単価不飽和脂肪酸というだけではなく,最近の研究では,
エクストラヴァージン(バージン)オリーブオイルに含まれるファイトケミカル・ポリフェノールによる抗酸化作用の有効性も示されています。
さて,今回の報告にはランダム化比較試験の先行研究(PREDIMED)があり,
地中海食にバージンオリーブオイルあるいはナッツを加えた食事を3ヶ月間投与した結果,
収縮期血圧の低下,血中コレステロールと中性脂肪の低下,HDLコレステロールの低下が示されています。
(対照食である低脂肪食との比較。)
(PREDIMED:PREvencion con Dieta MEDiterranea)
血中中性脂肪値は,心血管疾患リスクであり,VLDLコレステロールによる影響が知られています。
そこで,今回の研究では,3ヶ月間の地中海食(+バージンオリーブオイル,あるいは+ナッツ)を摂った被験者5名を対象に,VLDL組成が検証されました。
解析の結果,地中海食+ナッツ摂取群では,総コレステロールおよびLDLコレステロール値が低下していました。
また,地中海食+バージンオリーブオイル摂取群では,HDL(善玉)コレステロールの増加が認められました。
(低脂肪食を対照群としての比較です。)
血中の中性脂肪値は,両群(地中海食+バージンオリーブオイルあるいはナッツ)のいずれにおいても,対照群(低脂肪食群)と比べて有意な低下を示しています。
一方,心臓病・動脈硬化性疾患のリスクに大きく関与するVLDL-コレステロールとVLDL-中性脂肪を減少させるのは,地中海食+バージンオリーブオイル摂取群のみであったということです。
(VLDLにおけるTG/アポリポタンパクB比も低下させています。)
VLDLにおける脂肪酸組成の違いに関して,ナッツ摂取群ではオメガ6系であるリノール酸(18:2, n-6)の割合が多いのに対して,バージンオリーブオイル摂取群では,オメガ9系のオレイン酸の割合が多くなっています。
以上のデータから,地中海食の摂取後に認められる血中の中性脂肪値の低下は,VLDLにおける変化によると推察されます。
動脈硬化性疾患の予防という目的では,地中海食+バージンオリーブオイルの組み合わせが推奨できます。
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