今月の骨粗鬆専門ジャーナル(電子版)に,ビタミンD摂取量に関するレビューが,スイスのグループから報告されていました。
(
Osteoporos Int. 2009 Dec 3.)
一般的な食事ガイドラインによるビタミンDの摂取推奨量は,1日あたり200から600 IU程度です。
これは,ビタミンD欠乏症の予防を想定していた量であり,近年の研究によって示されてきた,ビタミンDの保健効果(健康保持や疾病予防といった効果)を得るためには不十分と考えられます。
そこで,今回のレビューでは,高用量のビタミンD摂取および高25ヒドロキシビタミンD値のベネフィット(便益)とリスクが検証されました。
二重盲検ランダム化比較試験を対象にした結果,転倒に関する研究8報(n = 2426),骨折(non-vertebral)に関する研究12報(n = 42,279)が対象となりました。
これらの解析の結果,高用量のビタミンDおよび25(OH)Dの高値と,転倒あるいは骨折予防との間に用量依存的な有意な相関が認められています。
至適なベネフィットは,1日あたり700から1000 IUのビタミンDの摂取,あるいは,25(OH)D値で75から110nmol/L(30-44 ng/ml)にて得られたということです。
前向きコホート研究では,心血管疾患の予防および大腸がんの予防に関して,25(OH)D値が最高値の群(75から110nmol/L)にて効果が示されています。
なお,ランダム化比較試験25報の解析では,血中カルシウム濃度の平均値は,ビタミンDの経口摂取量や,25(OH)D値とは相関していません。
(ビタミンDは100,000 IU/日,25(OH)Dは643 nmol/Lまで検討)
多くのRCTでは,75から110nmol/Lの25(OH)D値は,1日あたり1,800 から 4,000 IUのビタミンD摂取にて得られており,このとき,特に有害事象は認められていません。
以上のデータから,血中25(OH)Dの至適な値は約75から110nmol/Lであり,その達成には,1日あたり1,800 から 4,000 IUのビタミンDをサプリメントで摂取することが推奨されると考えられます。
なお,日本人の食事摂取基準2010年版によると,ビタミンDの目安量は,成人男女で5.5マイクログラム/日です。
(1μg=40 IUで換算して,220IU/日。)
この目安量を摂取するには,通常のマルチビタミンを食事と併用することで十分です。
一方,今回のレビューにて示された高用量の摂取には,高用量のマルチビタミン製品を利用することになります。
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