サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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キトサンによる抗肥満作用 [2008年09月30日(火)]
コクラン共同計画によるレビューに、キトサンの抗肥満作用を解析した論文が発表されていました。
Cochrane Database Syst Rev. 2008 Jul 16;(3):CD003892.)


(前回(2005年)のレビューに比べて、今回は臨床試験の数が1報、増えており、対象となる被験者の総数も多くなっています。)


このレビューでは、肥満あるいは過体重の成人を対象に、キトサンを4週間以上投与したランダム化比較試験を抽出し、メタ分析が行われています。


合計1,219名を対象にした15報のメタ分析の結果、偽薬群に比べて、キトサン投与による次の作用が認められました。

@体重の有意な減少
  (weighted mean difference -1.7 kg; 95% CI -2.1 to -1.3 kg; P < 0.00001)

A総コレステロール値の有意な低下
  (-0.2 mmol/L; 95% CI -0.3 to -0.1; P < 0.00001)

B収縮期血圧の有意な低下

  拡張期血圧の有意な低下



なお、有害事象の頻度および脂肪排泄量に関して、両群間での有意差は認められていません。

また、臨床試験の質が十分とはいえないので、さらに検討が必要とされています。



これらの臨床研究で示されたキトサンの有効性と安全性を考慮すると、体重のコントロールにおいてキトサンのサプリメントが選択肢の一つになると思われます。



DHCでは、キトサンキノコキトサン(キトグルカン)といったキトサン含有サプリメントを製品化しています。
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ピクノジェノールによる認知機能の改善 [2008年09月29日(月)]
精神薬理学の専門誌に、ピクノジェノールによる高齢者の認知機能改善作用を示した臨床研究が、オーストラリアのグループから報告されていました。
(J Psychopharmacol. 2008 Jul;22(5):553-62.)



ピクノジェノールは、フランス海岸松の樹皮抽出物です。

多くのフラボノイド類を含み抗酸化作用を示すことからアンチエイジングサプリメントとして広く利用されています。



今回の研究では、健康な高齢者において、ピクノジェノールの抗酸化作用が認知機能にどのような働きを及ぼすか検討されました。


60歳から85歳の高齢者101名を対象に、1日あたり150mgのピクノジェノールを3ヶ月間投与し、投与前、1ヵ月、2ヵ月、3ヵ月の時点で、認知機能(記憶力や注意力の指標)が測定されました(二重盲検偽薬対照試験)。

(ピクノジェノール投与群と対照群では、年齢や性別、BMI、摂取栄養素量などを一致させています。)


各種の認知機能が測定された結果、ピクノジェノール投与によって、酸化ストレスマーカー(F2-イソプロスタン)の有意な減少、ワーキングメモリーの改善といった作用が認められたということです。


酸化ストレスマーカーのF2-イソプロスタンは、神経細胞膜などに含まれる不飽和脂肪酸が酸化されることで生じます。

ピクノジェノールの摂取によって、神経細胞膜における酸化が抑制され、記憶力などの認知機能の維持・改善をもたらすことが示唆されます。
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ビタミンKサプリメントによる糖代謝の改善 [2008年09月28日(日)]
糖尿病の専門誌(オンライン版)に、ビタミンKサプリメントのインスリン感受性に対する作用を検討したヒト臨床研究が、米国のグループから発表されていました。
(Diabetes Care. 2008)


これまでの研究にて、ビタミンKは、インスリン抵抗性に対する好影響が示唆されていますが、ヒト臨床研究での検討は十分ではありません。


そこで、今回の研究では、非糖尿病の高齢者355名(60歳から80歳、60%が女性)を対象に、1日あたり500マイクログラムのビタミンK(フィロキノン、ビタミンK1)サプリメントを3年間投与し、インスリン抵抗性に対する影響が解析されました。
(試験は、ビタミンKの骨代謝への作用を検討したランダム化偽薬対象二重盲検法。)

インスリン抵抗性(HOMA-IR)、空腹時インスリン値、血糖値等について測定が行われた結果、男性では偽薬群に比べてビタミンK投与群においてインスリン抵抗性の有意な改善が認められたということです。

一方、女性では特に有意な変化は示されていません。


以上のデータから、ビタミンKサプリメントは、高齢男性において糖尿病のリスクを低下させることが示唆されます。



ただし、この研究で投与されたビタミンKは、食事摂取基準と比べると比較的高用量になっています。
したがって、臨床的意義についてはさらに検討が必要と考えられます。
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人気のハーブ@豪州 [2008年09月27日(土)]
今月の専門ジャーナルに、豪州におけるハーブサプリメントの利用調査がRMIT大学から発表されていました。
(Pharmacoepidemiol Drug Saf. 2008 Sep 25;17(10):1006-1013.)


今回の調査研究は、2007年に豪州ビクトリア州において2526名を対象に実施されました。

その結果、22.6%が過去1年間に1種類以上のハーブを摂取したというデータが示されています。


アロエベラ、ガーリック(ニンニク)、緑茶がもっとも利用度の高いハーブサプリメントであり、それぞれ10%の回答者が利用していました。

ハーブサプリメントを利用する理由として、69.6%が健康増進をあげており、最多であった一方、特定の疾患や病態の改善を上げた人も比較的多かったということです。


90%以上の回答者が、ハーブサプリメントが、非常に、あるいは、ある程度、有用である、としています。

46.6%が、ハーブサプリメントに伴う潜在的な有害事象のリスクを認識していると回答しています。


また、回答者の大多数が、ハーブサプリメントを利用するかどうかについて、医療従事者のアドバイスを受け入れるという姿勢を示したというデータも報告されています。



豪州は移民によって構成されるため、各種のCAM(補完代替医療)やTM(伝統医療)に対して比較的寛容な制度を持っています。(州によっても異なりますが。)


CAMの利用状況調査では、各国の背景が反映されて興味深いのですが、一方で、国際的なCAM分類が統一されていないため、国際比較が容易ではないという研究上の問題もあります。
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カロリー制限による減量と骨代謝 [2008年09月26日(金)]
内科学の専門誌に、カロリー制限による骨代謝への影響を検討したヒト臨床試験が、米国のグループから発表されていました。
(Arch Intern Med. 2008 Sep 22;168(17):1859-66.)


これまでの研究では、カロリー制限(CR:摂取カロリーの制限)が長寿(寿命の延長)をもたらすことが動物実験を中心に報告されています。

(もちろん、CRによる長寿の検証はヒトでは困難ですし、臨床研究での代用アウトカムを用いたデータについては議論があります。)

一方、カロリー制限(CR)では骨代謝にネガティブな影響を与えるのではないかという考え方があります。



そこで、今回の研究では、46名を対象に、次の4群に分けて6ヶ月間の試験が行われました。

1.標準食(対照群)

2.CR群(必要エネルギー量から25%制限)

3.CR+運動併用群(必要エネルギー量から25%制限)

4.低カロリー群(1日あたり890キロカロリー摂取。15%の減量を目標)


6ヶ月後の体重の変化は、対照群では-1.0%、CR群では-10.4%、CR+運動群では-10.0%、低カロリー群では-13.9%でした。


骨密度、骨代謝マーカー(骨特異性ALP、オステオカルシン、T型コラーゲン関連指標等)が試験の前後で比較された結果、まず骨密度について、4群とも特に有意な相違は認められていません。

また、骨形成に関連して、ALPはCR群にて減少しましたが、CR+運動群や低カロリー群、対照群の3群では有意な変化は認められませんでした。

骨吸収について、T型コラーゲン関連指標では、介入の3群とも増加しています。



以上のデータから、論文著者らは、中等度のカロリー制限であれば、運動の有無にかかわらず有意な骨喪失を生じることなく、体重減少効果が得られる、と考察しています。

(今回の研究の被験者は、比較的若年でした。)



一般に、カロリー制限が長期にわたる場合は、カルシウムなど栄養素の充足度を考慮したプログラムが必要と考えられます。

(自己流の食事制限によるダイエットや、単一の食材を中心に摂取することによるダイエットでは、必須栄養素の不足を生じるリスクがあります。)
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小児がんと代替医療 [2008年09月25日(木)]
欧州のがん研究専門誌(オンライン版)に、小児がん患者における補完代替医療の利用状況調査が、ドイツのグループから発表されていました。
(Eur J Cancer. 2008 Sep 20.)


これまでに、補完代替医療の利用状況に関して、比較的多くの調査研究が報告されてきました。

ただ、それらの多くは、一般消費者や様々な疾患に罹患した成人を対象にした調査であり、小児がん領域における調査はあまり知られていません。


そこで、今回の研究では、ドイツの小児がん患者を対象に、補完代替医療の利用状況調査が実施されました。


2001年に小児がんとして登録された患者1595名を対象にアンケート調査を実施し、1063名(67%)から回答が得られました。

調査の結果、回答者のうちの35%が代替医療を使っており、具体的にホメオパシーやサプリメント、人智学(anthroposophic medicine)などがあげられています。


代替医療の利用目的としては、

・身体の安定化、

・免疫機能の賦活化、

・治癒の確率を上げる、

が高頻度に示されました。



代替医療の利用に相関する要因として、

・過去に利用したことがある、

・疾患(小児がん)の予後が良くない

・社会的地位が高い

といった点が認められたということです。



また、代替医療の効果をポジティブに感じている利用者が多く、89%の利用者は、他の人にも勧める、と回答しています。


一方、代替医療の情報源は、多くの場合、医師ではなく、71%の利用者は代替医療の利用を医師に相談していないという問題点も指摘されています。




今回の調査では、具体例として人智学があがるところがドイツの状況を反映していると思われます。

なお、この調査では、ヤドリギ抽出物の利用(mistletoe therapy)も人智学に含めています。

ヤドリギ抽出物は免疫調節作用を有するとされ、人智学としてのがん治療に利用されることがあります。


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共役リノール酸とカルシウムによる骨代謝の改善作用 [2008年09月24日(水)]
昨日に続いて、共役リノール酸(CLA)による骨量増加作用の研究データです。


今月の食物科学の専門誌に、骨代謝における共役リノール酸の作用に関して、カルシウムとのシナジーを示した基礎研究が、米国のグループから発表されていました。
(J Food Sci. 2008 Sep;73(7):C556-60.)


これまでの研究によって、共役リノール酸は、抗肥満作用、抗糖尿病作用、動脈硬化抑制作用、免疫調節作用、抗がん作用といった多彩な働きを持つことが示されています。

共役リノール酸は、体脂肪量の減少効果と除脂肪体重の維持という働きに加えて、骨量に対する作用も認められています。



今回の研究では、マウスを用いて、0.5%CLA含有食を投与し、通常のカルシウム含有食(0.5%)投与群あるいはカルシウム強化食(0.66%)投与群との間で、骨代謝への影響が検討されました。

その結果、カルシウム強化食群では、CLA投与による骨量増加作用の亢進が認められました。

この作用は、特に雄マウスで顕著であったということです(p=0.0194)。


以上のデータから、CLAによる骨代謝への好影響が示唆されます。


今後、臨床研究による検証が期待される分野です。
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共役リノール酸による骨量の増加 [2008年09月23日(火)]
運動時に共役リノール酸(CLA)を摂取することで骨量が増加するという基礎研究データが、米国のグループから発表されていました。
(J Bone Miner Metab. 2008;26(5):436-45.)


共役リノール酸は、体脂肪減少作用があり、ダイエット用サプリメントとして知られています。


体脂肪や体重の減少時には骨量の減少を伴うことがあります。
(例えば、運動せずに食事制限のみで減量する場合など。)

一方、これまでの研究によって、共役リノール酸は骨代謝の改善をもたらすことが示唆されています。
また、適度な運動は、減量作用および骨量喪失予防作用を生じることが知られています。


そこで、今回の研究では、運動時の共役リノール酸の骨代謝に対する作用が調べられました。

マウスを用いて、1.対照群(コーンオイル投与+運動無し)、2.対照群(コーンオイル投与+運動あり)、3.CLA(0.5%)投与+運動無し群、4.CLAと運動の併用群の4群で10週間、比較検討が行われています。


その結果、CLAを投与した両群(運動無し群と運動併用群の両群)とも、体重の有意な減少と除脂肪体重の増加を示しました。

また、CLA投与群では、骨量の有意な増加が示され、この作用は運動との併用群において顕著であったということです。


以上のデータより、CLAは、体脂肪減少作用に加えて、骨量を増加させる作用があり、運動との併用によってより大きな効果が期待できると考えられます。
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がん生存者とサプリメント利用 [2008年09月22日(月)]
今月のがん専門誌に、がん生存者(cancer survivors)の間におけるサプリメントの利用状況が、米国のグループから発表されていました。
(J Cancer Surviv. 2008 Sep;2(3):138-48.)


今回の研究では、65歳以上で、5年間以上のがん生存者753名(乳がん、前立腺がん、大腸がんの生存者)を対象として、サプリメントの利用状況が調査されています。

サプリメントの利用状況に加えて、各種の栄養素の摂取状況、Healthy Eating Index (HEI)などの指標が調べられました。


その結果、がん生存者の74%がサプリメントを利用しており、その内訳はマルチビタミンが60%、カルシウム・ビタミンDが37%、抗酸化物質30%などでした。

サプリメントの利用者は、HEIにおいて有意に好ましい状況であったということです。


サプリメント利用と、70歳以上の高齢者(オッズ比1.70)、女性(オッズ比1.49)が正の相関にあり、喫煙者(オッズ比0.40)が負の相関にありました。

また、果物や全粒穀類の摂取との相関も認められています。

その他、教育水準の高い群においてサプリメントの利用が有意に高いことが示されています。



以上のデータから、サプリメントの利用によって栄養素の不足リスクを軽減でき、各種の健康指標の改善も期待できると考えられます。


ただし、がん生存者におけるサプリメント利用に際しては、医療従事者との十分なコミュニケーションが大切です。
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ビタミンDの供給源としてのシイタケ [2008年09月21日(日)]
今月の家庭医学・一般診療医学の専門誌に、ビタミンD不足の状態が紫外線照射シイタケの摂取で改善したという症例が報告されていました。
(Br J Gen Pract. 2008 Sep;58(554):644-5.)


一般に、緯度の高い国に居住する白人の場合、紫外線暴露が少なくビタミンD不足状態になることがあります。

通常、ビタミンD不足の予防や治療には、ビタミンDおよびカルシウムのサプリメント(あるいは医薬品)が用いられます。



今回の論文は、ビタミンDの投与ではなくて、紫外線照射シイタケの自己摂取により、ビタミンD不足の改善が認められたという症例の報告でした。

(病院で推奨された治療というのではなく、患者の選択によるという説明です。)


ビタミンDには、一部の動物性食品に存在するビタミンD3と、シイタケなどキノコ類に豊富に含まれるビタミンD2があります。

キノコ類にはエルゴステロールという成分が含まれ、紫外線照射によってビタミンD2に転換されることが知られています。

一般家庭でも、乾燥シイタケに太陽光線を30分から1時間程度あてることでビタミンDの含有量を増やすことができます。


ただし、手間やコスト、継続的な実行可能性といったバランスを考慮すると、ビタミンD不足の予防や改善には、マルチビタミン複合サプリなどサプリメントの利用が手軽で確実と考えられます。
カルシウム・マグネシウムの併用も大切です。


(もちろん、シイタケにはビタミンD2以外にも多くの機能性成分が含まれていますので、健康にいい食材としての利用が推奨されます。)
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CoQ10による自律神経と脂質代謝への影響 [2008年09月20日(土)]
CoQ10(コエンザイムQ10)による自律神経と脂質代謝への影響を検討した予備的なヒト臨床研究が報告されていました。
(J Nutr Sci Vitaminol. 2008;54:286-90.)


CoQ10は、抗酸化作用やATP産生作用による効果が期待される成分です。

疾病予防やヘルシーエイジングのためのサプリメントとして、広く利用されるようになりました。


今回の研究では、自律神経系およびエネルギー代謝に対する作用を検討する目的で、健常な男性11名を対象に、運動の前後においてCoQ10あるいは偽薬が投与されています。
(ランダム化二重盲検偽薬対照試験)

運動時の自律神経系やガス交換の指標が測定された結果、CoQ10投与による自律神経系への影響や脂質酸化の亢進が示されたということです。

これは特に低強度の運動時に有意な作用となっています。


今回のデータから、CoQ10の多彩な作用が示唆されます。
今後の研究の進展が期待される分野です。
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女性の尿失禁と体重の関係 [2008年09月19日(金)]
今月の肥満研究の専門誌に、肥満と女性の尿失禁リスクとの関連を示したデータが、イギリスのグループから発表されていました。
(Int J Obes (Lond). 2008 Sep;32(9):1415-22.)


今回の研究では、尿失禁に伴う症状と、肥満の発症および期間との関係が調べられています。

対象は1946年生まれの女性1,201名です。

BMIについては、20歳、26歳、36歳、43歳の時のデータが収集され、尿失禁の症状については、48歳から54歳までの7年間、毎年調査されました。


その結果、48〜54歳の期間、ほぼ半数(46-49%)の被験者において腹圧性尿失禁の症状が認められ、切迫性尿失禁の割合は22%から25%へ、重症尿失禁は8%から11%へと増加しました。

また、20、26、36、43歳の時のBMIは、その後の腹圧性尿失禁および重症尿失禁と正の相関を示したということです。


20歳の時に肥満/過体重であった女性は、BMIが25未満の女性あるいは43歳の時に肥満/過体重になった女性に比べて、重症尿失禁を生じるリスクが有意に高いという相関が認められました。
(オッズ比は、それぞれ2.30と1.85)

なお、切迫性尿失禁とBMIとの相関は認められていません。



以上のデータから、肥満/過体重の状態が長期にわたると、尿失禁(特に腹圧性尿失禁と重症尿失禁)のリスクが有意に増加することが示唆されます。
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緑茶カテキンの抗肥満作用 [2008年09月18日(木)]
今月の栄養学の専門誌に、緑茶カテキンによる抗肥満作用を示した基礎研究が、米国のグループから発表されていました。
(J. Nutr. 2008 138: 1677-1683.)


緑茶に含まれるフラボノイド系ファイトケミカルの1種、カテキン類には、抗肥満作用があり、注目を集めています。


今回の研究では、緑茶カテキンの1つであるEGCG(エピガロカテキンガレート)による、高脂肪食誘導性肥満および付随するメタボリック症候群に対する作用が検討されました。


EGCGを3.2g/kgの割合で含む高脂肪食(60%脂質)がマウスに16週間投与された結果、EGCGを含まない高脂肪食投与群に比べて、体重増加の抑制、体脂肪および内臓脂肪増加の抑制が認められたということです。

また、インスリン抵抗性の改善、脂質代謝の改善、肝機能の改善といった働きも示されています。

その他、EGCGの4週間投与による実験も行われ、抗肥満作用やメタボリック症候群改善作用などが認められています。



これまでに、緑茶カテキンの抗肥満作用は、多くの基礎研究やヒト臨床研究で示されています。

カテキンは、サプリメントとしても製品化されていますので、適切なライフスタイルを補完するように利用することで効果が期待できます。

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2030年の肥満人口 [2008年09月17日(水)]
今月の肥満研究の専門誌に、2030年の肥満人口の推計についての研究が、米国のグループから発表されていました。
(Int J Obes (Lond). 2008 Sep;32(9):1431-7.)


今回の研究では、106カ国からサンプル調査のデータが収集され、全人口の88%をカバーする推計となっています。


まず、2005年の時点での推計では、世界の成人人口の23.2%(男性は24.0%、女性は22.4%) が過体重(BMI25以上、日本の基準では「肥満」)、9.8%(男性は7.7%、女性は11.9%)が肥満(BMIが30以上)でした。

人口換算では、9億3700万人が過体重、3億9600万人が肥満となります。


これを2030年の時点の人口に当てはめると、過体重の人は13億5000万人、肥満者は5億7300万人になると予想されています。



次に、現在の傾向が継続すると仮定した場合、過体重の人は21億6000万人、肥満者は11億2000万人にも達するということです。


肥満は高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、がんといった生活習慣病の一因となることから、肥満対策は世界的な急務と考えられます。
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サプリメントについての研修医の知識 [2008年09月16日(火)]
「レジデント(研修医)はサプリメントについての知識が十分とはいえない」という研究結果が、米国ジョンズホプキンス大学のグループから発表されていました。
South Med J. 2008 Sep 9.)


これまでに、多くの調査研究によって、消費者の間でさまざまなサプリメントや各種の補完代替医療が広く利用されていることが報告されてきました。


今回の研究では、現在の医学教育を修了したレジデント(研修医)を対象に、サプリメントについての基本的な知識が調査されています。

米国の15の研修プログラムに参加した335名の医師を対象に、2006年3月から6月の間に調査が行われました。

その結果、サプリメントについての基本的な知識が十分ではない、というデータが得られています。
(調査では結果が数値化されており、59.7%というスコアでした。)



例えば、一般に広く利用されているハーブサプリメントについての知識では、3分の1以上の研修医が、ノコギリヤシやブラックコホシュの摂取目的を知らないと回答しています。


また、安全性や医薬品との相互作用についての基本的な知識も十分ではなく、例えば、セントジョーンズワート(抗うつ作用のあるハーブ)がシクロスポリン(免疫抑制剤)の血中濃度を低下させることを知っているのは15%しかいなかった、ということです。

その他、魚油やカバに対する知識も不足しているというデータになっています。



この研究では、サプリメントの知識を伝えるためのプログラムも提供しており、そのプログラム終了後には、基本的な知識の習得が認められた、と報告されています。


論文著者らは、レジデント/研修医のサプリメントに関する知識は十分ではなく、卒後教育プログラムにサプリメントの情報提供を取り入れることで、患者・医師関係におけるコミュニケーションの向上に有用であると結論づけています。


日本の医学教育でも、(必須カリキュラムに該当する科目がないために)サプリメント/健康食品についての教育は行われておらず、医師国家試験にも出題されません。

(ドイツではハーブサプリメント成分について、医師国家試験に出題されます。)


そのため、日本でも医師や研修医の間では、サプリメント/健康食品に関する知識が十分ではないことが推測されます。


各分野の専門知識は日々、膨大になりつつあるので、サプリメントの情報を必須カリキュラムに組み入れることは容易ではありません。


しかし、少なくとも卒後研修プログラムやプライマリーケア領域では、サプリメントの適正使用についての情報提供が行われる必要性があると考えられます。
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ダークチョコレートによる糖尿病と高血圧の改善作用 [2008年09月15日(月)]
今月の栄養学の専門誌に、ダークチョコレートの高血圧改善作用およびインスリン感受性亢進作用を示したヒト臨床研究が、イタリアと米国のグループから発表されていました。
J. Nutr. 2008 138: 1671-1676)



チョコレートには、カカオポリフェノール/フラボノール類が豊富に含まれており、血管内皮細胞の機能を正常に維持し、心血管疾患のリスクを低下させると考えられています。

これまでの臨床研究では、カカオポリフェノールによる高血圧改善作用が報告されてきました。



今回の研究では、耐糖能異常を示す高血圧患者19名(男性11名、女性8名、平均年齢44.8歳)を対象に、フラボノールの豊富なダークチョコレートを、1日あたり100グラムの用量で15日間投与し、血管内皮細胞の機能、インスリン感受性、β細胞機能、血圧に対する影響が測定されました。
(フラボノールを含まないホワイトチョコレートを対照としたクロスオーバー法。)


その結果、ダークチョコレート摂取時において、インスリン抵抗性の有意な低下、インスリン感受性の亢進、収縮期血圧と拡張期血圧の有意な低下、血管機能の改善、総コレステロール値とLDL値の有意な低下といった作用が認められたということです。

(なお、これらの働きは、ホワイトチョコレート投与(対照)群では認められていません。)



以上のデータから、フラボノールが豊富で低エネルギーに調整されたダークチョコレートは、耐糖能を改善し、心血管リスクを低下させることが示唆されます。
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インスリン感受性と遺伝子の関係 [2008年09月14日(日)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに、アディポネクチン遺伝子の個人差が、摂取した食事によるインスリン感受性への影響に違いを生じるという研究が、米国とスペインのグループから発表されていました。
J. Nutr. 2008 138: 1609-1614.)


脂肪細胞から分泌されるホルモンの1種、アディポネクチンは、インスリン感受性の改善、動脈硬化抑制といった働きを示します。

脂肪細胞で産生されるホルモンの中で、善玉ホルモンの代表として知られています。


これまでの研究では、アディポネクチンの遺伝子に見出される個人差が、2型糖尿病のリスクやインスリン抵抗性と関連していることが報告されてきました。



今回の研究では、アディポネクチン遺伝子の個人差が、脂質摂取時のインスリン感受性に影響を与えるかどうかが検討されています。

健康な被験者59名(男性30名、女性29名)を対象に、3種類の食事がそれぞれ4週間投与され、アディポネクチン遺伝子の相違(-11391 G > A, -11377 C > G, 45 T > G, 276 G > T)によるインスリン感受性への影響が測定されました。

用いられた試験食は、飽和脂肪酸の豊富な食事(38%脂質、20%飽和脂肪酸)、炭水化物の豊富な食事(30%脂質、55%炭水化物)、単価不飽和脂肪酸の豊富な食事(38%脂質、22%単価不飽和脂肪酸)の3種類です。
(ランダム化クロスオーバー法。)


その結果、特定の遺伝子変異(-11377 C > G)を有する男性では、飽和脂肪酸食から単価不飽和脂肪酸食や炭水化物食に変更した際に、インスリン感受性の有意な変化が認められたということです。

なお、この変化は、女性では認められていません。

また、その他の遺伝子多型(-11426 A > G, 45T > G, 276 G > T)では、特に有意な変化は示されませんでした。



以上のデータから、脂質の種類や炭水化物の割合が異なる食事を摂取した際、アディポネクチンの遺伝子多型(個人差)によってインスリン感受性に違いが生じると考えられます。



今回の研究のような、摂取する食事や栄養素の影響が、遺伝子のタイプ(個人差)によって異なるという研究(遺伝子と栄養素の相互作用に関する研究)がさらに進展すれば、個人の体質に合わせた、より効率的な食事療法やサプリメントの使用が可能になり、テイラーメイドのサプリメント療法が実現すると思われます。


DHCでは、遺伝子検査キットを製品化しています。
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魚油の代替としての亜麻仁油 [2008年09月13日(土)]
今月の栄養学の専門誌に、オメガ3系脂肪酸の供給源としての亜麻仁油と魚油の比較を行った研究が、北米のグループから報告されていました。
(Am J Clin Nutr 2008 88: 801-809.)



近年の研究によって、DHAやEPAといったオメガ3系脂肪酸が、動脈硬化抑制作用や抗うつ作用など多彩な働きを有することが示されています。

一般に、青魚がDHAやEPAの豊富な食材として知られており、オメガ3系脂肪酸の供給源として魚油サプリメントが利用されます。


一方、体内の代謝経路では、アルファリノレン酸がEPAおよびDHAの前駆体であることから、魚類の摂取が少ない場合の代替サプリメントとして、亜麻仁油(フラックスシードオイル)などが推奨されることがあります。

ただし、体内では、アルファリノレン酸からEPA,DHAへの転換効率が低いため、臨床的に有意な量が摂取できるかどうか、議論が続いています。



そこで、今回の研究では、被験者62名を6群に分け、亜麻仁油(1.2g、2.4g、3.6gの3種類の用量)、魚油(0.6g、1.2gの2種類)、サンフラワー油(対照群、1g)の3種類の脂質を12週間投与し、脂質代謝が検討されました。


赤血球中のDHAおよびオメガ3系脂肪酸を測定した結果、魚油摂取群では投与開始から迅速な増加が有意に認められています。

また、2.4gおよび3.6gの亜麻仁油摂取群では、EPA、DHAおよびオメガ3系脂肪酸の有意な増加が認められたということです。



以上のデータから、アルファリノレン酸を含むサプリメントの摂取によって、EPAおよびDHAの摂取時と同程度の脂質バランスを達成できることが示唆されます。


このときに必要なアルファリノレン酸の摂取量は、通常の食生活にサプリメントなどを併用することで十分に得られる量であることから、魚類を摂取しない場合でもDHAやEPAの効果を得ることができると考えられます。


(なお、EPAやDHAの前駆体であるという以外に、アルファリノレン酸には、独自の作用もあると考えられます。サプリメントの研究では、アルファリノレン酸としての投与による働きも報告されています。)
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ケルセチンの体内動態 [2008年09月12日(金)]
今月の栄養学の専門誌に、ケルセチンの体内動態に関する研究が、ドイツのグループから発表されていました。
(J. Nutr. 2008 138: 1615-1621.)


ケルセチンはフラボノイド系サプリメントの1種で、サプリメントにも利用されています。


今回の研究では、ケルセチンサプリメントを3種類の用量にて経口投与し、血中濃度の変化が検討されました。


健康な被験者35名を対象に、1日あたり50,100,150mgのいずれかの用量のケルセチンが2週間投与された結果、投与前値に比べて血中ケルセチン値が、178%、359%、570%それぞれ増加したということです。

ケルセチンAUCについても用量依存的な作用が示されました。


ただし、このときに測定された血中尿酸値やトコフェロール値、TNFα等の指標には有意な変化は認められていません。



以上のデータから、ケルセチン投与による用量依存的な血中濃度の変化が示唆されます。


今後、抗酸化作用に関する臨床的意義について、新規バイオマーカーによる検討が必要と考えられます。
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レスベラトロールの作用 [2008年09月11日(木)]
今月の栄養学の専門誌に、ワインのレスベラトロールによる作用についての研究が、イタリアのグループから発表されていました。
(J. Nutr. 2008 138: 1602-1608.)


これまでの研究にて、ワインの適度な消費が虚血性心疾患のリスクを低下させるという報告がありますが、メカニズムについては議論があります。

また、ブドウ抽出物あるいはワインに含まれるポリフェノールは、NO産生を増加させるというデータがありますが、ワインポリフェノールの1つであるレスベラトロールによる血小板のNO産生への影響に関する研究は知られていません。


そこで、今回の研究では、ワインの適度な摂取による血小板由来NO産生への影響が検討されました。


健康な被験者20名を対象に、白ワインあるいは赤ワイン(300mL/日)を15日間摂取させた結果、血中レスベラトロールおよび血小板由来NO産生が有意に増加したということです。


このときの血中レスベラトロール値に相当する濃度を用いて、in vitro系にてNO産生および情報伝達機序を検討したところ、レスベラトロールによるNO合成酵素活性、VASP(vasodilator-activated protein)リン酸化の促進作用等が認められました。

さらに、抗炎症作用を示唆する働きも認められています。



以上のデータから、ワインの適度な摂取により、レスベラトロールを介した心血管系疾患のリスク低減作用が期待されます。


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