今月のリウマチ学の専門ジャーナル(電子版)に,繊維筋痛症に対する補完代替医療の系統的レビューが,ドイツのグループから報告されていました。
(
Rheumatol Int. 2009 Aug 12. PMID: 19672601)
繊維筋痛症は,全身性の疼痛を特徴とする原因不明の難病です。
今回の研究では,1990年から2007年7月までに発表された,繊維筋痛症に対する補完代替医療のランダム化比較試験を対象に解析が行われています。
具体的には,23報のランダム化比較試験が対象となり,補完代替医療の種類として,鍼, 温泉療法, 温熱療法, 磁気療法, ホメオパシー, 徒手療法, マインドボディメディシン, 食事療法,音楽療法があげられています。
解析の結果,RCTの方法論としては,平均的に質が高いとはいえないという問題が見いだされました。
最良のエビデンスが見出されたのは,温泉療法・鉱泉療法・ハイドロセラピーです。
また,ホメオパシーと一部の温熱療法でも有効性が示唆されています。
さらに,Mindfulness Meditationでも有効性が示されています。
一方,鍼では,結果は一定ではないものの,有効性が示唆される傾向がありました。
その他,徒手療法や磁気療法では,ある程度の効果が示唆されていますが,十分ではなく,気功やバイオフィードバックでの有効性は示されていないということです。
以上のレビューからすると,繊維筋痛症に対して推奨できる,確立された補完代替医療はないように思われます。
しかし,補完代替医療の評価方法は確立されていないことが多く,さらに,今回の研究では難病を対象疾患としていますので,評価方法に改善の余地があるとも考えられます。
「(有効性を示す)エビデンスがないこと」は,必ずしも「効果がないこと」をさすのではなく,適切な評価方法がないために,効果を正しく検出できてない場合もあります。
(特に,効果が緩やかである場合,個人差が大きい場合,効果の指標が確立されていない場合などは,検出力不足によるネガティブなデータになる傾向があります。)
西洋医学による標準治療が確立されていない難病に対しては,補完代替医療も含めた全人的アプローチが望まれます。
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