サプリ研究の第一人者、蒲原先生の公式ブログです。

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小児肥満に対するベジタリアン食の効果 [2010年03月31日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,ベジタリアン食による小児肥満の予防効果を示した総説が,米国のグループ(Loma Linda University)から報告されていました。
(Am J Clin Nutr. 2010 Mar 17.)



これまでの疫学研究によると,成人および小児のいずれでも,ベジタリアン食は,低いBMIや肥満の割合と相関が認められています。


ベジタリアン食を摂る成人を対象にしたメタ分析では,体重差は,男性で7.6kg,女性で3.3kgであり,これはBMI(kg/m2)の2に相当するということです。



同様に,ベジタリアン食を摂る小児は,非ベジタリアン食を摂る小児に比べて,肥満の問題は少なく,青年期以降において両者のBMIの差は大きくなる,とされています。



健康維持において肥満のリスクは明らかであり,食習慣への介入は有効な手段の一つです


植物性食品を中心としたベジタリアン食は,小児における肥満予防としても有用であると考えられます。



論文著者らは,植物性食品を中心とした食生活は,至適な健康のためだけではなく,環境保護にも有用であると考察しています。

(これは,タンパク質の供給源としては,植物性タンパク質のほうが動物性タンパク質よりも環境負荷が少ないという理由です。)



なお,肥満予防ということでは,炭水化物の種類と摂取量に注意が必要です。


かつては,脂肪が肥満の大敵のように理解されていましたが,現在では,単純炭水化物の過剰摂取が問題になっています。


パスタにチーズをかけて,という食事は,欧米式のラクトオボベジタリアン食になりえますが,肥満予防という効能は期待しにくいかもしれません。



また,論文では,食品や食生活における政策も議論されています。


一般に,エネルギーあたり(カロリーあたり)の単価(消費者にとっての価格)は,いわゆるジャンクフードが割安であり,高品質な植物性食品は高価格になりがちです。


一方,外食産業では,高エネルギー食を安価に大量に,という傾向が見られます。
(高品質高価格というマーケットは限定されてしまいますので,企業活動としてはやむを得ないでしょう。)


そこで,健康保持増進や疾病予防に効果的な食品の消費促進,あるいはジャンクフードに対する抑制といった施策導入の議論があります。

例えば,先日,米国NYでソーダ税導入をめぐる話題がニュースになっていました。


ジャンクフード税,体脂肪税,高脂肪食税,高単純炭水化物税といった徴税もありえますし,逆に,健康食品/サプリメントの購入費やスポーツジムの会費といった健康増進に関連した自己負担について免税枠を設けるといった方法も可能性はあります。



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アルツハイマー病とセレンの関係 [2010年03月30日(火)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,アルツハイマー病とセレンの関係を調べた研究が,ブラジルのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):803-6.)



これまでの研究によって,さまざまな抗酸化物質が,加齢に伴う変性疾患の低下に相関することから,疾病の病因として酸化ストレスの関与が考えられています。


今回の研究では,アルツハイマー病患者におけるセレンの状態が調べられています。


セレンは微量必須ミネラルの1つであり,抗酸化作用を有することから,サプリメント成分としても利用されています。



具体的には,アルツハイマー病患者28名と,正常対照者(健常者)29名を対象に,3日間の食事記録にてセレンの摂取状況が調べられました。

(症例対照研究。両群とも被験者は60歳から89歳。)


血中,赤血球中,爪のセレン値が解析された結果,アルツハイマー病患者ではセレン摂取不足が顕著であることが見出されました。


また,アルツハイマー病患者では,血中セレン濃度,赤血球中セレン濃度,爪のセレン値がいずれも正常対照群と比べて有意に低値でした。


(アルツハイマー病:32.59μg/l, 43.74μg /l and 0.302μg /g
vs.
正常対照群:50.99μg /l, 79.16μg /l and 0.400μg /g)



以上のデータから,アルツハイマー病患者では,セレンの摂取不足が病態の一因として関与していることが示唆されます。



セレンは,「マルチミネラル」に含まれている機能性食品素材です。


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レジスタントスターチと摂取エネルギー [2010年03月29日(月)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,レジスタントスターチによる摂取エネルギーの低下作用を示した臨床研究が,イギリスのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):917-22.)



レジスタントスターチ(resistant starch)とは,難消化性澱粉(でんぷん)のことです。
(直訳すれば,耐性でんぷんです。)


でんぷんは,ブドウ糖(グルコース)が結合した化学構造を有しています。

レジスタントスターチと総称されるでんぷんは,消化酵素による分解を受けにくく,低GI(グリセミック指数)食品であるため,糖尿病や肥満,メタボリック症候群といった病態における働きが注目されています。



さて,今回の研究では,レジスタントスターチの単回投与によるエネルギー代謝への影響が検証されました。


具体的には,健康な男性被験者20名を対象に,48グラムのレジスタントスターチ投与群,あるいは等量の炭水化物投与群の2群について,食欲や24時間のエネルギー摂取量,食後血糖値やインスリン値などが測定されています。

(一重盲検クロスオーバー法。レジスタントスターチあるいは対照食は単回投与。)



介入試験の結果,レジスタントスターチ投与群では,偽薬投与群に比べて,エネルギー摂取量が有意に低値でした。

(試験食摂取時:5241 ± 313 vs. 5606 ± 345 kJ, P = 0.033)

(24時間の観察期間:12 603 ± 519 vs. 13 949 ± 755 kJ, P = 0.044)



また,食後インスリン値は,レジスタントスターチ投与群において有意な低下が見出されています(P = 0.029)。


このとき,主観的な食欲には有意な変化は認められず,食後血糖値にも両群間で有意差は示されませんでした。


なお,Cペプチド値は,両群間での有意差はありませんでしたが,Cペプチド/インスリン比は,偽薬群に比べてレジスタントスターチ群では有意に高値となっています(P = 0.059)。



以上のデータから,レジスタントスターチは,摂取エネルギーや糖代謝を調節して,肥満や糖尿病の予防効果を示すことが推察されます。



今回の研究の被験者は健常者ですので,今後,有病者を対象にした臨床データの集積が期待されます。


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アジア統合医学会議 [2010年03月28日(日)]
今日は朝から会議(congress)でした。


アジア統合医学会議として,東アジアから東南アジア,豪州,インド,サウジアラビアの各国から伝統医療や代替医療,統合医療の医師,研究者が集まり各国の現状についての発表と討議が行われました。


私は午後の最初のセッションで,co-chair/座長の担当でしたが,朝到着すると,プレゼンの順番変更の希望がサウジ側からよせられたので,関係する発表者を一人ずつ回って調整するハメになってしまいました。



お昼過ぎに,事務局の人が方位(方角)を確認していました。

(開催場所は昨日と同じく東大理学部の小柴記念ホールです。)

なんでも,イスラム諸国からの参加者のために,事務局側は食事などについての対応は準備していたようですが,お祈りのために,方位の確認も必要だったようです。



さて,午後の最初のセッションでは,各国のプレゼンについてco-chairの私が座長をさせていただき,最後の討議についてはchairpersonにわたしました。


(会議全体の時間がおしていたので,持ち時間を超過した発表者を急かしたり,ディスカッションの内容が袋小路にならないように調整したり,といったことくらいが努めでした。)




会議の最後は,宣言文に各国の代表者が同意してお開きとなり,成功裡に終了できました。
(この日もホテル近くで懇親会云々,ということらしかったのですが,昨日に続いて/いつもどおり欠席して帰宅しました。)




今回のアジア統合医療会議では,各国の現状,制度,伝統医療に対する取り組みに関する情報共有が中心でした。


やはり,「統合医療」ということについて,欧米とアジアでは,かなりの違いがあることを実感しました。




アジア各国では,伝統医療が主流医学として存在してきた歴史的背景があります。



そこで,アジア諸国における統合医療というのは,まず,自国の伝統医療のエビデンスを構築しつつ,その伝統医療と近代西洋医学を組み合わせたものが統合医療である,という理解が多いようでした。


(もちろん,欧米の学会や研究会に参加している医師や研究者は,欧米における統合医療の理念や考え方は知っています。

一方,自国で統合医療について理解を得て,それを推進するとなると,戦略的には,自国の伝統医療と,西洋医学との組み合わせ,という表面的なことにならざるを得ないかもしれません。

WHOの調査では,世界の人口の7割程度は,近代西洋医学の恩恵を受けておらず,伝統医療や民間療法に頼っているということです。

したがって,アジア諸国でも,いわば,「発展途上国型の統合医療」,という選択になるのでしょう。)




ところで,午後のコーヒーブレークのとき,O先生からワイル先生のPIMを修了した日本人のMDが10名に達したということを知りました。

(O先生ご自身も昨年12月修了です。)



日本におけるIMの推進ということでは,IMの理念や医療哲学を共有するMDのグループが構成されつつあるようで,今後の活躍に大きな期待が持てます。

(現状では,単にIMの名前を利用するために参加するCAM関係者が少なくないため,玉石混淆であることが問題ですので。)




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ホメオパシーに対する規制の仕方 [2010年03月27日(土)]
今日は会合が3つありました。


まず,午前中は,がんへの統合医療的アプローチについて,

2つめは11時から13時までCAM関係者の会議,

続いて,翌日に開かれる国際会議の出席者のミーティングでした。



(3つとも東大理学部の小柴記念ホールで開催されたので,移動の負担がないのは助かりました。)



最初のがんと統合医療では,ホメオパシーに関するプレゼンがあり,日本の現状として,英国基準の専門医が数名しかいない一方,無資格でも訴求できるために深刻な健康被害が生じているという問題が指摘されました。


かといって,公的な資格の設置で解決するというのは政治的に大変なので,比較的現実的な方法はホメオパシーのレメディを医薬品として規制する,ということのようです。


(ホメオパシーについては誤解が多く,最近刊行された訳書でも批判的に書かれています。)

(この本は,英国の歴史的な背景や現状,著者の立場を知らないと,誤解してしまうので,日本の一般向けの書籍としてはあまり役に立たない内容です。)




また,いつも議論になるビタミンCの必要量について,米国や日本の食事摂取基準では欠乏症(壊血病)にならないための推奨量が設定されている一方(例えば1mg/kg/日が目安),ビタミンCを体内で産生できる動物では病気の時に産生量が増加し,ある動物では体重あたりの量をヒトに換算すると600mg〜1500mg/日に相当するというプレゼンがありました(農務省のデータ)。


ビタミンCを産生する動物では,正常なとき(健康なとき)に比べて,病気の時では体内のビタミンCの産生量が格段に多くなる,というデータです。


化学療法としての(酸化物質としての)高濃度ビタミンC療法についての文脈ですが,経口摂取のビタミンCサプリメントに関しても,1日あたり1,000mg前後の摂取を支持する傍証の一つになるかもしれません。



午後は,明日の会議の参加者が一堂に介してのブリーフィングでした。


東アジアやオセアニアからの参加者はこれまでの学会でもみてきたメンバーでしたが,今回の南アジアやイスラム圏からの参加者には個人的に馴染みがなく,名前の読み方/発音もよくわかりませんでした。


夜は海外からの参加者の宿泊先のホテルでレセプションを開催するということでしたが,出席者は十分な人数になっているようでしたので,私はいつもどおり欠席として帰宅しました。



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ダークチョコレートの血圧と血糖値改善作用 [2010年03月26日(金)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,ポリフェノールの豊富なダークチョコレートによる血圧と糖代謝の改善作用を示した臨床研究が,イギリスのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):842-50.)



これまでの多くの研究によって,ダークチョコレートによる健康保持や疾病予防作用が知られています。



作用メカニズムとして,カカオポリフェノールによる抗酸化作用などが考えられます。



さて,今回の研究では,ポリフェノールを豊富に含むダークチョコレートによる空腹時血糖値,総コレステロール値,血圧への影響が検討されています。


具体的には,肥満あるいは過体重の被験者14名を対象に,500mgのポリフェノールを含むダークチョコレートを20g投与した群,あるいは,1000mgのポリフェノールを含むダークチョコレートを20g投与した群での比較が行われました。

(ランダム化クロスオーバー法。2週間ずつの介入。1週間のwash-out。)



介入試験の結果,両群とも空腹時血糖値,収縮期血圧,拡張期血圧の低下が認められています。


また,各検査値の低下(改善)の割合は,両群とも同程度であったことから,今回の被験者では500mgのポリフェノール投与で機能面ではプラトーに達したと推察されます。



その他,尿中遊離コーチゾン値の低下傾向が認められています(有意差なし)。



カカオポリフェノールについては,高血圧改善作用を示した臨床研究が多いようです。



今回は,肥満者を対象に糖代謝の改善作用も示されていますが,一般的なチョコレートの摂取では,ポリフェノールの効果がチョコレートに含まれる糖質などの影響で相殺されてしまうことも考えられますので,注意が必要です。



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ベジタリアン食の心臓病予防効果 [2010年03月25日(木)]
今月の看護学の専門ジャーナルに,ベジタリアン食による心臓病予防効果を示したレビューが,米国のグループ(University of Tennessee at Chattanooga)から報告されていました。
(J Am Acad Nurse Pract. 2010 Mar;22(3):134-9.)



これまでの研究では,栄養学的に適切に準備されたベジタリアン食は,生活習慣病の予防や改善に有用であり,あらゆる年齢層の人に適応できることが示されています。


既に,米国とカナダの栄養士会は,ベジタリアン食による食事摂取ガイドラインを作成しています。


また,日本人向けの研究も報告されています。
A new Japanese vegetarian food guide.)



今回の研究では,心臓病のリスク低減効果と安全性について,ベジタリアン食の作用が検証されています。

(CINAHL, PubMed, Ovid databasesを用いたレビューです。)




解析の結果,適切に準備されたベジタリアン食であれば,心臓病の一次予防に効果的であるという結論が得られています。


また,費用対効果,食の安全性といった点も満たしているということです。



慢性疾患の予防や改善には豊富な食生活の選択肢が必要であり,ベジタリアン食については消費者向け及び専門家向けの食事ガイドラインが設定されていることから,一般に応用しやすい食事法であると考えられます。



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カフェインとインスリン感受性 [2010年03月24日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,炭水化物負荷時において,カフェインによるインスリン感受性への影響を調べた研究が,カナダのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):833-41.)



これまでの研究により,カフェインおよびカフェイン入りコーヒーは,炭水化物負荷前に摂取することで,インスリン感受性低下を生じることが示されています。



今回の研究では,高炭水化物負荷時のカフェインおよびカフェイン入りコーヒーの摂取が,耐糖能およびインスリン感受性に及ぼす作用,続く2回目の炭水化物負荷時における食後血糖値への作用が調べられました。


具体的には,健常男性10名を対象に,カフェイン入りコーヒー(5mgカフェイン/kg体重)あるいはカフェイン抜きコーヒー,あるいは等量の水のいずれかが,高グリセミック指数のシリアルと一緒に投与され,3時間後に75g経口ブドウ糖負荷試験が実施されています。

(ランダム化クロスオーバー法)




初回の食事後では,インスリンのAUCおよびインスリン感受性インデックスは,各群間での差を認めませんでした。


一方,血糖値のAUCは,

カフェイン入りコーヒー摂取群では107 ± 18 mmol/l × 3 h,

カフェイン抜きコーヒー摂取群では74 ± 15 mmol/l × 3 hであり,

対照群( &#8722; 0.2 ± 29 mmol/l × 3 h, P < 0.05)よりも有意に高値でした。




また,2回目の炭水化物負荷後では,カフェイン入りコーヒー群のインスリンAUCは,カフェイン抜きコーヒー摂取群および対照群のインスリンAUCよりも有意に高値となっています(P < 0.01)。



このとき,血糖値のAUCは,カフェイン入りコーヒー群において,他の2群よりも有意に高くなっており,インスリン感受性インデックスは2回目の負荷時に低下を示しました(他の2群に比べて有意に低下)。



以上のデータから,カフェイン入りコーヒーを高炭水化物食と一緒に摂取すると,インスリン感受性を低下させ,その影響は次の高炭水化物食摂取時まで及ぶことが示唆されます。



したがって,耐糖能やインスリン感受性が問題になる病態では,カフェイン入り飲料の摂取にも注意が必要と考えられます。


(例えば,糖尿病やその予備軍の人は,食後に甘いデザート/単純炭水化物とカフェイン入りコーヒーを一緒に摂ることは好ましくないかもしれない,ということになります。)


(もちろんカフェインを気にする前に,高炭水化物の摂取を見直すことのほうが,現実的でメリットの大きな食事介入法だと思います。)


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炎症性腸疾患におけるクルクミンの意義 [2010年03月23日(火)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,炎症性腸疾患におけるクルクミンの作用を調べた予備的な研究が,英国のグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):824-32.)



慢性炎症を病態とする炎症性腸疾患として,クローン病や潰瘍性大腸炎が知られています。


機能性食品素材の中には,抗炎症作用を有するものがあり,これらの炎症性腸疾患に対する意義が示唆されています。


例えば,ウコンの成分であるクルクミンでは,これまでの多くの研究によって抗炎症作用や抗酸化作用が示されており,予備的な臨床研究では炎症性腸疾患に対する改善作用も示唆されています。


今回の研究では,炎症性腸疾患におけるクルクミンの作用メカニズムの検証が行われました。



具体的には,炎症性腸疾患患者(小児および成人)の腸管におけるMAPK(p38 mitogen-activated protein kinase),IL-18,IL-10,MMP-3(マトリックスメタロプロテアーゼ3)といった分子への影響が測定されています。


生検によって採取された腸管粘膜をクルクミン下で(ex vivo)培養した結果,p38 MAPK活性化の抑制,IL-10活性の亢進,IL-1β活性の抑制が見出されました。


また,クルクミンによるMMP-3の用量依存的な抑制も示されました。



以上のデータから,炎症性腸疾患に対するクルクミンの抗炎症作用に関して,関与する分子メカニズムが示唆されます。


今後,臨床的意義の検討が期待される分野です。


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ブロッコリーの心臓保護作用 [2010年03月22日(月)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,ブロッコリーの抗酸化作用を介した心臓保護作用を示した基礎研究が,米国とインドのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):815-23.)



ブロッコリーは,アブラナ科の野菜であり,ファイトケミカルが豊富に含まれることから,健康増進や疾病予防といった機能性が期待されています。


例えば,かつて,米国の研究機関がまとめた「がんを防ぐ食べ物」リストでは,ピラミッドの上位をアブラナ科の野菜が占めていました。



最近の研究によると,ブロッコリーのファイトケミカルであるスルフォラフェン(sulphoraphane)は,レッドクスシグナルを介して,心筋梗塞再灌流モデルにおける心筋保護作用を示します。


一方,野菜に含まれるグルコシレートは,一般に,調理によって失われやすいことが知られており,ブロッコリーのスルフォラフェンも同様の性質が考えられます。


そこで,今回の研究では,新鮮なブロッコリーと調理したブロッコリーについて,機能性の比較が行われました。



具体的には,ラットを用い,新鮮な(蒸した)ブロッコリー投与群,あるいは調理したブロッコリー投与群の2群に分けて30日間の介入(投与)が行われ,その後,心筋虚血再灌流負荷試験(30分間の虚血と2時間後の再灌流)が実施されています。


その結果,ブロッコリーを投与した2群とも,対照群に比べて,心筋虚血後の心室機能における有意な改善作用,心筋梗塞巣の減少,心筋細胞のアポトーシス減少が認められました。


このとき,新鮮な(蒸した)ブロッコリー投与群のほうが,調理したブロッコリー投与群よりも有意な心筋保護作用を示したということです。


細胞内情報伝達に関与する分子の解析では,

Bcl2, Akt, extracellular signal-regulated kinase 1/2, haemoxygenase-1, NFE2 related factor 2, superoxide dismutase (SOD1) SOD2といったタンパク質分子の誘導,

および

アポトーシスに関与する分子(例えば,Bax, c-Jun N-terminal kinase, p38 mitogen-activated protein kinaseなど)の発現抑制

が見出されています。



また,チオレドキシン(thioredoxin)スーパーファミリー(Trx1,Trx2等)の発現は,新鮮な(蒸した)ブロッコリーにおいてのみ有意に亢進していました。



以上のデータから,酸化還元反応への影響を介したブロッコリー由来スルフォラフェンによる心筋保護作用が示唆されます。



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赤ワインの血管への作用 [2010年03月21日(日)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,赤ワインによる血管内皮細胞への作用を示した基礎研究が,イタリアのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(6):807-14.)



赤ワインにはポリフェノールが豊富に含まれており,抗酸化作用や抗炎症作用を介して,動脈硬化性疾患を予防します。


今回の研究では,赤ワイン摂取後にヒトの血清を採取し,TNFα依存性の転写因子活性化(NF-κB, activator protein-1 (AP-1), cAMP response element-binding proteins)に対する作用,および,ヒト臍帯静脈内皮細胞における細胞接着因子や繊維化に関与する遺伝子発現に対する作用が調べられました。



具体的には,5 ml/kg体重の用量にて赤ワインを摂取し40分後に採取された血清では,転写因子であるNF-κBとAP-1の誘導が見出されました。

(転写因子は,遺伝子発現を調節するタンパク質です。)


一方,TNFαは,赤ワインによる転写因子の誘導を遅延させたということです。


また,赤ワイン摂取血清では,c-junとplasminogen activator cAMP responsive elementとの結合が刺激され,いくつかの遺伝子発現が調整されることも見出されました。



これらのデータから,赤ワイン摂取後の代謝産物は,血管内皮細胞において,炎症に関係する転写因子の発現を調節すると考えられます。



今後,臨床的意義の検証が期待される分野です。



DHCでは,ワインも取り扱っています。


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ブドウ果汁による認知機能改善作用 [2010年03月20日(土)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,ブドウ果汁による認知機能改善作用を示した臨床研究が,米国のグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(5):730-4.)



ブドウ果汁には,ポリフェノール類が豊富に存在し,抗炎症作用や抗酸化作用を介した疾病予防効果,細胞内情報伝達シグナルに対する作用などが知られています。



例えば,赤ワインによる心臓病予防効果はよく知られていますし,近年では,レスベラトロールによる長寿関連遺伝子活性化作用が話題になっています。


また,これまでの研究では,フラボノイド類の豊富な食事と,認知症リスク低下との関連が報告されています。


そこで,今回の研究では,高齢者における認知機能に対するブドウ果汁の作用が検証されました。


具体的には,記憶力低下を有する(ただし認知症ではない)高齢者12名を対象に,コンコード種ブドウ果汁が,二重盲検法にて12週間投与され,認知機能関連指標が測定されています。


その結果,言語学習の有意な改善,言語想起と空間想起の改善傾向が認められたということです。



なお,ブドウ果汁摂取群では空腹時インスリン値の軽度な上昇が認められていますが,体重やウエスト周囲径には影響は認められていません。



以上のデータから,コンコード種ブドウ果汁の摂取は,高齢者における認知機能改善作用をもたらすことが示唆されます。



今後,さらに質の高い研究によって,有効性に関する追試や作用機序に関する検証が期待される分野です。


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国際統合医療会議 [2010年03月19日(金)]
今日の夕方,学士会館にて国際統合医療会議の関係者打ち合わせがありました。


来週末に東京大学の小柴記念ホールで開催される国際会議です。

(International Symposium on Integrative Medicine. March 27-28, 2010. Koshiba Memorial Hall, The University of Tokyo, Tokyo.)



アジアオセアニア地域から中東アラブ地域を中心に,医師や研究者が参加する予定です。


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書籍プレゼントキャンペーンのお知らせ [2010年03月18日(木)]
本日,拙著「サプリメント事典」(平凡社)の見本が届きました。


刊行(書店への配本)は,来週になると思います。


3年ぶりの改訂で,今回は第3版です。

前回の第2版から,既存の成分についてはデータを更新し,新しい機能性成分も追加しました。


4月から用いられる日本人の食事摂取基準2010年に対応しています。



書店での発売に先立ちまして, DHCサプリメント研究所の登録会員(医療従事者の方)を対象に,プレゼント企画を実施しています。


(DHCサプリメント研究所のトップページからログインして応募できます。3月24日締め切りです。)




なお,「アマゾン なか見!検索」の同意書を出版社に送りましたので,刊行後は,アマゾンのサイトで,目次などが確認できると思います。



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プレバイオティクスとしてのアラビノキシランオリゴ糖 [2010年03月17日(水)]
今月の栄養学の専門ジャーナルに,アラビノキシランオリゴ糖によるプレバイオティクス作用を示した臨床研究が,ベルギーのグループから報告されていました。
(Br J Nutr. 2010 Mar;103(5):703-13.)



アラビノキシランオリゴ糖(AXOS)は,小麦ふすまから得られるアラビノキシラン繊維の酵素分解産物です。



今回の研究では,アラビノキシランオリゴ糖のプレバイオティクスとしての作用がヒトを対象に検証されています。


(プレバイオティクスは食物繊維やオリゴ糖など,乳酸菌の栄養になるものです。
乳酸菌はプロバイオティクスとして整腸作用や免疫調節作用,抗炎症作用を有します。プロバイオティクスとプレバイオティクスの両方の摂取が健康維持に重要です。)




具体的には,健常者20名を対象に,1日あたり10gのAXOSあるいは偽薬が3週間投与され,各種の生化学検査および消化器系症状が調べられました。

(偽薬対照クロスオーバー法。4週間のwash-out)



解析の結果,AXOS投与群では,ビフィズス菌の有意な増加,(タンパク発酵の指標である)尿中p-クレゾール排泄の有意な低下が認められました。


いくつかの血中指標に有意な変化も認められましたが,いずれも正常範囲内の変動でした。
また,血中脂質では有意な変化は示されていません。



以上のデータから,アラビノキシランオリゴ糖によるプレバイオティクス効果が示唆されます。



なお,今回は健常者が対象ですので,いくつかの指標では有意差が認められていません。

対象が有病者であれば,有意差が検出されやすいと推測されます。



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コタラヒムブツによる脂肪蓄積の抑制作用 [2010年03月16日(火)]
今月の生薬学の専門ジャーナル(電子版)に,コタラヒムブツによる脂肪蓄積抑制作用を示した基礎研究が,武蔵野大学のグループから報告されていました。
(J Nat Med. 2010 Mar 12.)



コタラヒムブツ(学名Salacia reticulate)は,インドの伝統医学・アーユルヴェーダにおいて,肥満症や糖尿病に対して用いられてきたハーブです。




今回の研究では,コタラヒムブツの抗肥満作用と安全性が検証されています。



具体的には,肥満糖尿病(2型糖尿病)モデルマウスおよび非肥満マウス(対照)を用いて,通常食投与群,コタラヒムブツ混合(0.3%あるいは1.0%)餌投与群にて2ヶ月間の介入試験が行われました。


その結果,対照群に比べて,肥満糖尿病モデルマウスでは,脂質蓄積および代謝異常が認められています。



このとき,コタラヒムブツを投与された肥満糖尿病モデルマウス群では,

--体重増加と脂肪蓄積の抑制,

--脂質代謝異常と耐糖能異常の抑制,

--肝脂肪蓄積の抑制

が認められました。



また,脂肪前駆細胞である3T3-L1細胞系を用いたin vitro系でも,コタラヒムブツによる脂肪蓄積抑制作用が見出されています。



以上のデータから,コタラヒムブツによる抗肥満作用および代謝異常改善作用が示唆されます。


今後,臨床的意義の検証が期待される分野です。


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アルツハイマー病に対する抗酸化剤による補完療法 [2010年03月15日(月)]
今月の神経病学の専門ジャーナルに,アルツハイマー病に対して医薬品と抗酸化剤を併用した臨床研究が,米国のグループから報告されていました。
(Neurodegener Dis. 2010 Mar 12;7(1-3):193-202)



アルツハイマー病に対しては治療法が確立しておらず,一般には,病気の進行を遅らせる医薬品が広く利用されています。


一方,機能性食品素材の分野では,イチョウ葉エキスなどについての予備的な臨床研究データが知られています。


今回の研究では,医薬品のドネペジル(商品名アリセプト)を服用中のアルツハイマー病患者に,抗酸化剤(複合サプリメント剤)を併用した補完療法についての効果が検証されました。


投与された抗酸化剤の構成成分は,

・カルノシン,コエンザイムQ10,ビタミンE,ビタミンC,βカロテン,セレン,L-システイン,イチョウ葉エキス:抗酸化作用(タンパク質,脂質,核酸等を酸化障害から防ぐため)

・ビタミンB6,B9,B12(血中ホモシステイン値を下げるため)

・ビタミンB1,B2,B3(ペントースリン酸回路の維持)

となっています。



中等度のアルツハイマー病に罹患(NINCDS-ARDA およびNINCS-AIRENを指標)し,ドネペジル(5mg/日を2ヵ月以上)投与中の患者52名(男性21名,女性31名)を対象に,抗酸化複合サプリメント投与群あるいは偽薬投与群の2群(各群26名)に分けて,6ヶ月間の投与試験が行われました(ランダム化二重盲検法)。


48名の患者が試験を完了しています。


投与の結果,血中ヒドロキシペルオキシダーゼを指標としたd-ROMsに基づく酸化障害および血中ホモシステイン値の有意な低下(改善)が認められたということです。

(ただし,赤血球中のグルタチオンが増加した群において。)



また,認知機能の指標であるMMSE IIスコアは,ドネペジル+偽薬投与群では投与前後に変化は認められなかったのに対して,ドネペジル+抗酸化複合サプリメント投与群では有意な改善が見出されています。



今後,さらに質の高い臨床研究による検証が期待される分野です。


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ブラックコホシュの安全性 [2010年03月14日(日)]
今月の婦人科学の専門ジャーナルに,ブラックコホシュと肝毒性リスクについて検証した研究が,ドイツのグループから報告されていました
(Menopause. 2010 Mar;17(2):426-40.)



近年,欧米では,ブラックコホシュ含有製品の摂取と,肝障害発生との関連を示す症例報告が知られています。


ただし,必ずしも因果関係は明確ではなく,ブラックコホシュと肝毒性については議論があります。


たとえば,因果関係が示唆されるとしても,ブラックコホシュというハーブ全体の問題なのか,あるいは特定の製造法による個別のブラックコホシュ製品の問題なのか,さらには,特定の体質を有する個人にだけ生じうることなのか,という検証も必要です。



そこで,今回の研究では,ブラックコホシュに肝毒性が本当に存在するのかどうかについて,69症例が解析されました。



具体的には,症例報告11例,関係機関への報告58例について,ブラックコホシュとの因果関係,データの質や一貫性,交絡因子などについて調べられています。


解析の結果,ブラックコホシュの摂取と肝障害との発生についての因果関係には非常に疑問がある,つまり,因果関係は疑わしいということです。


同じ患者に対するレポートに一貫性がない点や,ブラックコホシュ製品の同定が明確に行われていないといった点が問題点として見出されました。



また,症例報告では,同時に摂取した医薬品,アルコール摂取といった情報が取得されておらず,因果関係の評価としての対象を満たしていません。




今回の解析データからは,ブラックコホシュと肝毒性の因果関係は否定的であると考察されています。




サプリメントの有害事象報告では,ネガティブデータが一人歩きすることがよくあります。


サプリメントの利用に際しては便益とリスクのバランスを考慮することが必要です。

また,有害事象については,質的な評価を適切に実施することによって,特定の体質との因果関係を明らかにする研究が求められます。



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大豆イソフラボンと地中海食がインスリン抵抗性を改善 [2010年03月13日(土)]
今月の婦人科学の専門ジャーナルに,大豆イソフラボンと地中海食の摂取が,閉経後の女性におけるインスリン抵抗性を改善したという臨床研究が,スペインのグループから報告されていました。
(Menopause. 2010 Mar;17(2):372-8.)



大豆イソフラボンは,女性ホルモン様作用を有するファイトケミカルであり,更年期障害や婦人科系疾患の予防/リスク低減を目的としたサプリメントに利用されています。


地中海食は,地中海地方の伝統食で,野菜や果物,全粒の穀類,種実類,オリーブオイルの利用が多いという特徴があります。



今回の研究では,更年期障害関連症状に対して用いられる大豆イソフラボンの一般的な投与量である40mgが,インスリン抵抗性に影響を与えるかどうか,検討されました。


具体的には,インスリン抵抗性を示す閉経後の女性116名を対象に,

地中海食と運動実施群(対照群)



地中海食,運動,大豆イソフラボン(40mg/日)の摂取群

の2群にて比較が行われています。



体組成や脂質代謝,糖代謝といった指標が,試験前,6,12,18,24ヵ月の時点で測定されました。


解析の結果,インスリン抵抗性(HOMA-IR)は,対照群では開始前と比べて変化が認められなかったのに対して,大豆イソフラボン併用群では,6ヵ月後の時点で有意な改善が示されました(P = 0.042)。



インスリン抵抗性は,試験開始時には2群間で差はありませんでしたが, 大豆イソフラボン投与群では,経時的に有意な低下(改善)が認められています。

(6ヵ月 (P = 0.009), 12ヵ月(P = 0.011), 18ヵ月(P = 0.018), 24ヵ月(P = 0.012))



また,インスリン抵抗性の変化(改善)は,BMI(体格指数) (P < 0.001),腹部周囲径(P < 0.001),治療(P = 0.044)と有意な相関が示されました。



以上のデータから,地中海食と運動習慣に,1日あたり40mgの大豆イソフラボン摂取を併用することで,更年期以降の女性におけるインスリン抵抗性を改善する作用が示唆されます。



ライフスタイルへの介入だけでは変化を認めなかったインスリン抵抗性について,大豆イソフラボンの投与を加えることで有意な改善効果を認めた点が興味深いデータです。


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オメガ3系脂肪酸による潰瘍性大腸炎のリスク低減作用 [2010年03月12日(金)]
今月の消化器病学の専門ジャーナル(電子版)に,オメガ3系脂肪酸の摂取と潰瘍性大腸炎リスクとの関係について検討した調査研究が,イギリスのグループから報告されていました。
(Eur J Gastroenterol Hepatol. 2010 Mar 4.)



潰瘍性大腸炎は,クローン病とともに炎症性腸疾患に分類されます。


潰瘍性大腸炎の病因については議論がありますが,オメガ3系脂肪酸摂取による予防作用が示唆されてきました。



そこで,今回の研究では,食事調査に基づき,オメガ3系脂肪酸の摂取と潰瘍性大腸炎のリスクとの関係が検証されています。



具体的には,英国在住の25,639名(45〜74歳,研究開始時の平均年齢59.2歳)を対象に,7日間の食事記録により,全オメガ3系脂肪酸の摂取量,エイコサペンタエン酸(EPA),ドコサヘキサエン酸(DHA)の摂取量と,潰瘍性大腸炎の発症率が調べられました。



平均4.2年間(1.8〜8.3年間)のフォローアップ期間中,22例の潰瘍性大腸炎が見出されています。


食事因子に関する予防作用について,年齢や性別,喫煙,摂取エネルギー,消費エネルギーなどの因子で補正した結果,

DHA摂取による有意な予防効果(オッズ比0.43, 95%CI=0.22-0.86, P = 0.02)

EPA摂取による予防傾向(OR = 0.53, 95% CI=0.27-1.03, P = 0.06)

オメガ3系脂肪酸の全量による傾向(OR = 0.56, 95% CI=0.28-1.13, P = 0.10)

が認められています。



以上のデータから,45歳以上ではオメガ3系脂肪酸,特にDHAの摂取が多いと,潰瘍性大腸炎の発症率が低くなるという関係が示唆されます。



今後,因果関係の検証を含めた作用機序の解明が期待される分野です。


(なお,一般には,オメガ3系脂肪酸による抗炎症作用の関与が推測されます。)



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