今月の神経病学の専門ジャーナル(電子版)に、多発性硬化症における酸化ストレス障害に対するコエンザイムQ10の作用を示した臨床研究が報告されていました。
(
Int J Neurosci. 2013 May 10.)
多発性硬化症は、中枢性脱髄疾患の一つで、
さまざまな神経症状が生じ、再発と寛解を繰り返す難治性疾患です。
慢性炎症を示し、酸化ストレスの亢進が存在します。
コエンザイムQ10は、体内で産生される成分ですが、加齢により減少します。
抗酸化作用とATP産生作用を介した生活習慣病予防効果が知られており、アンチエイジング分野では基本となるサプリメントです。
また、いくつかの慢性疾患や生活習慣病でも、内在性コエンザイムQ10の低下が認められます。
コエンザイムQ10は、細胞内のミトコンドリア呼吸鎖で作用する抗酸化成分です。
そこで、今回の研究では、コエンザイムQ10による多発性硬化症(MS, Multiple Sclerosis)での酸化ストレスへの作用が検証されました。
具体的には、
ランダム化二重盲検偽薬対照試験として、
再発と寛解を繰り返す多発性硬化症(MS)患者を対象に、
・コエンザイムQ10サプリメント(500 mg/day, n = 24)投与群、
・対照群(n = 24)
の2群について、12週間の介入が行われ、
投与前後で、酸化ストレス障害の指標(MDA, 総抗酸化能TAC、抗酸化酵素活性など)が測定されました。
45名が試験を完了しました。
解析の結果、
12週間後の時点において、
対照群に比べて、
CoQ10投与群では、
SOD活性の有意な増加(P = 0.013)、
MDA値の有意な低下(P = 0.003)
が認められました。
その他の指標では両群間に有意差は示されていません。
以上のデータから、
1日あたり500mgのコエンザイムQ10サプリメント投与によって、
再発と寛解を繰り返す多発性硬化症患者における酸化ストレス状態の改善効果が示唆されます。
今後、さらに臨床的意義の検証が期待される分野です。
コエンザイムQ10には、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)と還元型(=ユビキノール,ubiquinol)があります。
還元型CoQ10のほうが、酸化型CoQ10よりも体内で利用されやすいと考えられます。
(酸化型CoQ10は、体内に吸収された後、いったん還元されてから、利用されます。)
コエンザイムQ10に関するこれまでの研究の多くは、酸化型(=ユビキノン,ubiquinone)を用いています。
したがって、一般的には、生活習慣病の予防やアンチエイジング目的に関して、
酸化型CoQ10のユビキノンの摂取で十分な効果が期待できます。
一方、特定の疾患に対して用いる場合、あるいは、体内の生理機能が低下している高齢者の場合には、
還元型CoQ10の利用が推奨されます。
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